[インデックス 11565] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のコードレビューツールであるcodereview.py
において、hgpatch
コマンドが見つからない場合に表示されるエラーメッセージを改善するものです。ユーザーがhgpatch
をインストールする方法を具体的に案内することで、エラー発生時のユーザー体験を向上させています。
コミット
commit 7dca24ee7e5c0c5acba35a1a0b9a23f1761098e3
Author: Brad Fitzpatrick <bradfitz@golang.org>
Date: Thu Feb 2 11:53:28 2012 -0800
codereview: explain how to get hgpatch in error message
R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5623045
---
lib/codereview/codereview.py | 2 +--
1 file changed, 1 insertion(+), 1 deletion(-)
diff --git a/lib/codereview/codereview.py b/lib/codereview/codereview.py
index fd0b4b4aea..7e9f6ca728 100644
--- a/lib/codereview/codereview.py
+++ b/lib/codereview/codereview.py
@@ -1572,7 +1572,7 @@ def clpatch_or_undo(ui, repo, clname, opts, mode):
try:
cmd = subprocess.Popen(argv, shell=False, stdin=subprocess.PIPE, stdout=subprocess.PIPE, stderr=None, close_fds=sys.platform != "win32")
except:
- return "hgpatch: " + ExceptionDetail()
+ return "hgpatch: " + ExceptionDetail() + "\nInstall hgpatch with:\n$ go get code.google.com/p/go.codereview/cmd/hgpatch\n"
out, err = cmd.communicate(patch)
if cmd.returncode != 0 and not opts["ignore_hgpatch_failure"]:`
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/7dca24ee7e5c0c5acba35a1a0b9a23f1761098e3
元コミット内容
codereview: explain how to get hgpatch in error message
このコミットは、コードレビューツールにおいて、hgpatch
が見つからない場合のエラーメッセージに、hgpatch
のインストール方法を追加するものです。
変更の背景
Go言語の初期のコードレビュープロセスでは、Mercurial (hg) をベースとしたパッチ適用ツールであるhgpatch
が利用されていました。ユーザーがコードレビューを行う際に、このhgpatch
がシステムにインストールされていない場合、ツールはエラーを返していました。しかし、そのエラーメッセージは単に「hgpatch
が見つからない」という情報のみで、ユーザーがどのように問題を解決すれば良いのかが不明瞭でした。
このコミットの背景には、ユーザーがエラーに直面した際に、自力で解決できるような具体的なガイダンスを提供し、開発ワークフローの摩擦を減らすという目的があります。特に、Goのエコシステムではgo get
コマンドがパッケージの取得・インストールに広く使われていたため、そのコマンドを使ったインストール方法を提示することが、ユーザーにとって最も分かりやすい解決策と考えられました。
前提知識の解説
Go言語のコードレビュープロセスとGerrit
Go言語のプロジェクトでは、初期からGerritというコードレビューシステムが採用されていました。GerritはGitリポジトリと連携し、変更セット(チェンジリスト、CL)を単位としてコードレビューを行います。開発者は変更をGerritにアップロードし、レビューを経てマージされます。
codereview.py
codereview.py
は、Goプロジェクトの初期にGerritと連携してコードレビューを支援するために使われていたPythonスクリプトです。ローカルの変更をGerritにアップロードしたり、Gerrit上の変更をローカルに適用したりする機能を提供していました。このスクリプトは、Go言語の公式リポジトリの一部として提供されていました。
hgpatch
hgpatch
は、Mercurial (hg) のパッチを適用するためのツールです。Go言語の初期のコードレビューシステムでは、Gerritが生成するパッチをローカルに適用するために利用されていました。Goプロジェクトは後にGitに移行しましたが、このコミットが作成された時点ではまだMercurialが使われており、hgpatch
はそのワークフローの一部でした。hgpatch
自体はGo言語で書かれたコマンドラインツールで、code.google.com/p/go.codereview/cmd/hgpatch
というパスで提供されていました。
subprocess.Popen
(Python)
subprocess.Popen
はPythonの標準ライブラリsubprocess
モジュールの一部で、新しいプロセスを生成し、その入出力パイプに接続するためのクラスです。これにより、Pythonスクリプトから外部のコマンド(この場合はhgpatch
)を実行し、その標準入力、標準出力、標準エラーを制御することができます。
ExceptionDetail()
(Python)
ExceptionDetail()
は、このcodereview.py
スクリプト内で定義されていると思われるヘルパー関数で、現在の例外に関する詳細な情報(例えば、例外のタイプやメッセージ)を文字列として返すものです。これにより、エラー発生時に具体的なエラー内容をユーザーに伝えることができます。
go get
コマンド
go get
はGo言語のツールチェーンに含まれるコマンドで、Goのパッケージやコマンドをリモートリポジトリから取得し、ビルドしてインストールするために使用されます。例えば、go get example.com/path/to/package
と実行すると、指定されたパッケージのソースコードがダウンロードされ、コンパイルされて、実行可能ファイルが$GOPATH/bin
(またはGo 1.11以降では$GOBIN
)に配置されます。
技術的詳細
このコミットの技術的な変更は、lib/codereview/codereview.py
ファイル内のclpatch_or_undo
関数にあります。この関数は、Gerritから取得したパッチをローカルに適用する際にhgpatch
コマンドを呼び出しています。
元のコードでは、subprocess.Popen
を使ってhgpatch
コマンドを実行しようとした際に例外(例えば、hgpatch
コマンドが見つからないFileNotFoundError
など)が発生した場合、単に"hgpatch: " + ExceptionDetail()
というエラーメッセージを返していました。これは、hgpatch
が見つからないという事実を伝えるものの、ユーザーが次に何をすべきかについての情報が不足していました。
変更後のコードでは、このexcept
ブロック内で返されるエラーメッセージに、以下の文字列が追加されています。
"\nInstall hgpatch with:\n$ go get code.google.com/p/go.codereview/cmd/hgpatch\n"
これにより、エラーメッセージは以下のような形式になります。
hgpatch: [元の例外の詳細] Install hgpatch with: $ go get code.google.com/p/go.codereview/cmd/hgpatch
この変更により、ユーザーはhgpatch
が見つからないというエラーに直面した際に、すぐにgo get
コマンドを使ってhgpatch
をインストールできることが明確に示されます。これは、エラーメッセージの質を向上させ、ユーザーが問題を迅速に解決できるようにするための典型的な改善例です。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/lib/codereview/codereview.py
+++ b/lib/codereview/codereview.py
@@ -1572,7 +1572,7 @@ def clpatch_or_undo(ui, repo, clname, opts, mode):
try:
cmd = subprocess.Popen(argv, shell=False, stdin=subprocess.PIPE, stdout=subprocess.PIPE, stderr=None, close_fds=sys.platform != "win32")
except:
- return "hgpatch: " + ExceptionDetail()
+ return "hgpatch: " + ExceptionDetail() + "\nInstall hgpatch with:\n$ go get code.google.com/p/go.codereview/cmd/hgpatch\n"
out, err = cmd.communicate(patch)
if cmd.returncode != 0 and not opts["ignore_hgpatch_failure"]:`
コアとなるコードの解説
変更はlib/codereview/codereview.py
ファイルの1574行目で行われています。
-
変更前:
return "hgpatch: " + ExceptionDetail()
hgpatch
コマンドの実行に失敗した場合(subprocess.Popen
が例外を発生させた場合)、"hgpatch: "
というプレフィックスと、ExceptionDetail()
関数が返す例外の詳細を結合した文字列がエラーメッセージとして返されていました。 -
変更後:
return "hgpatch: " + ExceptionDetail() + "\nInstall hgpatch with:\n$ go get code.google.com/p/go.codereview/cmd/hgpatch\n"
変更後も同様に
"hgpatch: " + ExceptionDetail()
は含まれますが、その後に改行(\n
)と、hgpatch
のインストール方法を示す具体的な指示(Install hgpatch with:\n$ go get code.google.com/p/go.codereview/cmd/hgpatch\n
)が追加されています。
この変更により、ユーザーがhgpatch
が見つからないというエラーに遭遇した際に、エラーメッセージ自体が問題解決のための具体的なステップ(go get
コマンドの実行)を提示するようになり、ユーザーの利便性が大幅に向上しました。
関連リンク
- Go言語の公式コードレビューシステム (Gerrit): https://golang.org/cl/5623045 (このコミットがGerrit上でレビューされた際のチェンジリストへのリンク)
- Go言語の
go get
コマンドに関するドキュメント (現在のGoのドキュメント): https://pkg.go.dev/cmd/go#hdr-Download_and_install_packages_and_dependencies
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (go getコマンドの一般的な情報)
- Pythonの
subprocess
モジュールに関するドキュメント - Gerritコードレビューシステムに関する一般的な知識
- Mercurial (hg) およびパッチ適用に関する一般的な知識