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[インデックス 12279] ファイルの概要

このコミットは、src/pkg/runtime/pprof/pprof_test.go ファイルに対する変更です。具体的には、特定の環境下でCPUプロファイルのテストをスキップするための修正が加えられています。

コミット

  • コミットハッシュ: 357b257cd161f390554cee7c4d404be3f868e465
  • Author: Shenghou Ma minux.ma@gmail.com
  • Date: Thu Mar 1 03:11:37 2012 +0800
  • コミットメッセージ:
    runtime/pprof: skip test on 64-bit Mac OS X 10.6
    
    R=rsc, bsiegert
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5709060
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/357b257cd161f390554cee7c4d404be3f868e465

元コミット内容

runtime/pprof: skip test on 64-bit Mac OS X 10.6

このコミットは、64ビット版のMac OS X 10.6 (Snow Leopard) 環境において、runtime/pprof パッケージのテストをスキップするように変更を加えるものです。

変更の背景

この変更の背景には、当時のMac OS X 10.6 Snow Leopardの特定のカーネルバージョン(特に64ビット版)に存在した既知のバグがあります。このバグは、Go言語のruntime/pprofパッケージがCPUプロファイル情報を正確に収集するのを妨げ、テストが失敗したり、プロファイルデータが不正確になったりする原因となっていました。

具体的には、uname -aコマンドの出力に「Darwin Kernel Version 10.8.0」と「root:xnu-1504.15.3~1/RELEASE_X86_64」という文字列が含まれる環境、すなわち64ビット版のSnow Leopardでこの問題が発生していました。このカーネルバグはGo言語のコードで直接修正できるものではなく、OS側の問題であったため、テストをスキップすることでCI/CDパイプラインの安定性を確保し、開発者がこの特定の環境でのテスト失敗に悩まされることを避ける目的がありました。

前提知識の解説

Go言語の runtime/pprof パッケージ

runtime/pprofパッケージは、Goプログラムのプロファイリング機能を提供します。プロファイリングとは、プログラムの実行中にそのパフォーマンス特性(CPU使用率、メモリ割り当て、ゴルーチンスタックなど)を測定・分析することです。これにより、パフォーマンスのボトルネックを特定し、最適化を行うことができます。

  • CPUプロファイリング: プログラムがCPU時間をどこで消費しているかを測定します。pprofツールと連携して、CPU使用率の高い関数やコードパスを特定するのに役立ちます。
  • プロファイルデータの収集: runtime/pprofは、プログラムの実行中に定期的にサンプリングを行い、CPUがどの関数を実行しているかを記録します。このデータは、後で分析するためにファイルに書き出されます。

Mac OS X 10.6 (Snow Leopard)

Mac OS X 10.6、通称「Snow Leopard」は、Appleが2009年にリリースしたmacOSのバージョンです。このバージョンは、それまでのMac OS X Leopard (10.5) の改良版であり、主にパフォーマンスの向上、効率性の改善、バグ修正に重点が置かれました。特に、64ビットアプリケーションのサポートが強化された点が特徴です。

カーネルバグ

オペレーティングシステム(OS)のカーネルは、OSの最も中心的な部分であり、ハードウェアとソフトウェアの間の橋渡しをします。カーネルにバグが存在すると、システム全体の安定性や特定の機能の動作に深刻な影響を与える可能性があります。このコミットで言及されている「64-bit Snow Leopardの既知の壊れたカーネル」とは、runtime/pprofがCPUプロファイル情報を正確に取得するために必要なシステムコールやメカニズムに問題があったことを指します。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のテストフレームワークとOSのバージョン情報を利用して、特定の環境でのテスト実行を条件付きでスキップする実装です。

  1. OSの識別: runtime.GOOSは、Goプログラムが実行されているオペレーティングシステムを識別するための定数です。この場合、「darwin」(macOS)であるかどうかをチェックします。
  2. カーネルバージョンの取得: exec.Command("uname", "-a").Output() を使用して、uname -aコマンドの出力を取得します。uname -aは、システム名、ネットワークノードホスト名、OSリリース、OSバージョン、ハードウェア名など、システムに関する詳細な情報を表示します。
  3. 特定のカーネルの識別: 取得したuname -aの出力文字列が、特定の「壊れたカーネル」を示す文字列("Darwin Kernel Version 10.8.0" および "root:xnu-1504.15.3~1/RELEASE_X86_64")を含んでいるかをstrings.Contains関数でチェックします。これらの文字列は、64ビット版のMac OS X 10.6 Snow Leopardにおける特定のカーネルビルドを指します。
  4. テストのスキップ: もし上記の条件が真であれば、t.Logfでスキップする旨のログを出力し、returnステートメントによってテスト関数を即座に終了させます。これにより、問題のある環境でのテストの実行が回避されます。

このアプローチは、OSのバグや特定の環境依存の問題によってテストが常に失敗する場合に、CI/CDパイプラインをブロックしないための一般的なプラクティスです。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/runtime/pprof/pprof_test.go
+++ b/src/pkg/runtime/pprof/pprof_test.go
@@ -26,6 +26,7 @@ func TestCPUProfile(t *testing.T) {
 		t.Logf("uname -a: %v", vers)
 		if strings.Contains(vers, "Darwin Kernel Version 10.8.0") && strings.Contains(vers, "root:xnu-1504.15.3~1/RELEASE_X86_64") {
 			t.Logf("skipping test on known-broken kernel (64-bit Snow Leopard)")
+			return
 		}
 	case "plan9":
 		// unimplemented

コアとなるコードの解説

変更はsrc/pkg/runtime/pprof/pprof_test.goファイルのTestCPUProfile関数内で行われています。

		if strings.Contains(vers, "Darwin Kernel Version 10.8.0") && strings.Contains(vers, "root:xnu-1504.15.3~1/RELEASE_X86_64") {
			t.Logf("skipping test on known-broken kernel (64-bit Snow Leopard)")
			return
		}

このコードブロックは、以下のロジックを実行します。

  1. strings.Contains(vers, "Darwin Kernel Version 10.8.0"): uname -aコマンドの出力(vers変数に格納されている)に「Darwin Kernel Version 10.8.0」という文字列が含まれているかを確認します。これは、Mac OS X 10.6 Snow Leopardの特定のカーネルバージョンを示します。
  2. strings.Contains(vers, "root:xnu-1504.15.3~1/RELEASE_X86_64"): 同様に、uname -aの出力に「root:xnu-1504.15.3~1/RELEASE_X86_64」という文字列が含まれているかを確認します。これは、64ビット版のSnow Leopardにおける特定のカーネルビルドを指します。
  3. &&: 上記の2つの条件が両方とも真である場合、つまり、テストが問題のある64ビット版Snow Leopardの特定のカーネル上で実行されている場合にのみ、以下の処理が実行されます。
  4. t.Logf("skipping test on known-broken kernel (64-bit Snow Leopard)"): テストログに「既知の壊れたカーネル(64ビットSnow Leopard)上でテストをスキップします」というメッセージを出力します。
  5. return: これがこのコミットで追加された最も重要な行です。このreturnステートメントにより、TestCPUProfile関数はここで実行を終了し、それ以降のテストロジックは実行されません。結果として、問題のある環境でのCPUプロファイルテストはスキップされます。

この修正により、Goのテストスイートが、特定のOS環境の既知のバグによって不必要に失敗するのを防ぎ、CI/CDパイプラインの信頼性が向上しました。

関連リンク

参考にした情報源リンク