[インデックス 12278] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の仕様書(doc/go_spec.html
)における用語の統一に関するものです。具体的には、「lexical symbol」という表現を「lexical token」に修正し、仕様書内での用語の一貫性を向上させています。これは、言語仕様の正確性と明確性を保つための、軽微ながらも重要な修正です。
コミット
commit 7c1cb37b55a5f09ec1549c3998c30e44462de2b5
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date: Wed Feb 29 10:39:20 2012 -0800
spec: use the term "lexical token" (rather then "lexical symbol")
Fix for minor inconsistency.
R=golang-dev, iant
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5709058
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/7c1cb37b55a5f09ec1549c3998c30e44462de2b5
元コミット内容
spec: use the term "lexical token" (rather then "lexical symbol")
Fix for minor inconsistency.
R=golang-dev, iant
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5709058
変更の背景
この変更の背景には、Go言語の公式仕様書における用語の厳密性と一貫性の追求があります。プログラミング言語の仕様書は、その言語の動作を正確に記述し、実装者やユーザーが共通の理解を持つための最も重要なドキュメントです。そのため、使用される用語は曖昧さなく、一貫している必要があります。
コミットメッセージにある「minor inconsistency(軽微な不整合)」とは、仕様書内で「lexical symbol」と「lexical token」という二つの用語が混在して使用されていたことを指します。これらの用語は、文脈によっては似た意味で使われることもありますが、言語処理系の文脈では「トークン」がより一般的で、特定の意味合いを持つことが多いです。この不整合を解消し、「lexical token」に統一することで、仕様書の記述がより正確で、誤解の余地のないものとなることを目指しています。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、プログラミング言語のコンパイラやインタプリタがソースコードをどのように処理するか、特に「字句解析(Lexical Analysis)」の概念と関連する用語について理解しておく必要があります。
字句解析(Lexical Analysis)
字句解析は、コンパイラの最初のフェーズであり、ソースコードを文字のストリームとして読み込み、意味のある最小単位である「トークン(Token)」のストリームに変換するプロセスです。このプロセスを担当するプログラムは「字句解析器(Lexer)」または「スキャナー(Scanner)」と呼ばれます。
トークン(Token)
トークンは、プログラミング言語における意味のある最小単位です。例えば、int x = 10;
というコードがあった場合、字句解析器はこれを以下のようなトークンに分解します。
int
(キーワード)x
(識別子)=
(演算子)10
(整数リテラル);
(区切り文字)
各トークンは、その「種類(type)」と、元のソースコードにおける「値(lexemeまたはvalue)」を持ちます。例えば、識別子トークンは種類が「識別子」で、値が「x」となります。
字句シンボル(Lexical Symbol)
「字句シンボル」という用語は、「字句トークン」とほぼ同義で使われることもありますが、より広範な意味を持つ場合や、特定の文脈(例えば、形式言語理論におけるアルファベットの要素)で使われることがあります。しかし、プログラミング言語のコンパイラ設計や仕様記述の文脈では、「トークン」が標準的な用語として広く認知されています。
このコミットの背景にあるのは、おそらくGo言語の仕様書が、より一般的なコンパイラ理論の用語法に合わせることを意図しているためと考えられます。これにより、仕様書が他のプログラミング言語の専門家にとっても、より理解しやすくなります。
技術的詳細
このコミットは、Go言語のソースコード自体を変更するものではなく、Go言語の公式仕様書を記述したHTMLファイル(doc/go_spec.html
)内のテキストを修正するものです。
変更内容は非常にシンプルで、特定の箇所で使われていた「Lexical symbols」というフレーフを「Lexical tokens」に置き換えるだけです。この修正は、技術的な機能変更やバグ修正を伴うものではなく、ドキュメントの品質向上、特に用語の厳密性と一貫性を目的としています。
プログラミング言語の仕様書において、用語の統一は非常に重要です。異なる用語が同じ概念を指したり、似た用語が異なる概念を指したりすると、読者に混乱を招き、言語の解釈や実装に不整合が生じる可能性があります。特に、言語の構文や意味論を定義するセクションでは、使用されるすべての用語が明確に定義され、一貫して使用されることが求められます。
この修正は、Go言語の仕様書が、字句解析の標準的な用語である「トークン」に統一することで、その専門性と正確性を高める一環と見なすことができます。
コアとなるコードの変更箇所
変更は doc/go_spec.html
ファイルの1行のみです。
--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -67,7 +67,7 @@ operators, in increasing precedence:
<p>
Lower-case production names are used to identify lexical tokens.
-Non-terminals are in CamelCase. Lexical symbols are enclosed in
+Non-terminals are in CamelCase. Lexical tokens are enclosed in
double quotes <code>""</code> or back quotes <code>``</code>.
</p>
コアとなるコードの解説
変更された行は、Go言語の仕様書における「表記法(Notation)」のセクションの一部です。このセクションでは、仕様書内で使用される文法規則や用語の表記方法について説明しています。
元の行:
Non-terminals are in CamelCase. Lexical symbols are enclosed in
変更後の行:
Non-terminals are in CamelCase. Lexical tokens are enclosed in
この変更は、Lexical symbols
という表現を Lexical tokens
に置き換えることで、仕様書全体で「トークン」という用語に統一することを目的としています。この文脈では、小文字のプロダクション名が字句トークンを識別するために使用され、非終端記号はCamelCaseで表記され、そして字句トークン自体は二重引用符またはバッククォートで囲まれる、という表記規則を説明しています。
この修正により、Go言語の仕様書は、字句解析の分野で広く受け入れられている標準的な用語法に準拠し、読者にとってより明確で一貫性のあるドキュメントとなります。
関連リンク
- Go言語の公式仕様書: https://go.dev/ref/spec (このコミットが修正したドキュメントの最新版)
- このコミットのGo Gerritレビューページ: https://golang.org/cl/5709058
参考にした情報源リンク
- コンパイラ設計に関する一般的な知識(字句解析、トークン、シンボルなど)
- Go言語の公式ドキュメント
- Gitのコミット情報と差分表示
- HTMLの基本的な構造