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[インデックス 12512] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式仕様書である doc/go_spec.html の更新に関するものです。具体的には、以前存在していた「実装上の差異 (Implementation differences)」に関するセクションが削除され、仕様書のバージョン日付が更新されています。これは、Go言語の進化に伴い、特定のGoコンパイラ実装(例えばgcやgccgo)間での既知の差異が解消されたことを示唆しています。

コミット

commit 11d8b155ce228b441b549b694d4e544bf36a462b
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Wed Mar 7 22:17:40 2012 -0800

    go_spec: no known implementation differences anymore
    
    R=r, rsc, iant, ken
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5781048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/11d8b155ce228b441b549b694d4e544bf36a462b

元コミット内容

このコミットの元の内容は以下の通りです。

go_spec: no known implementation differences anymore

これは、「Go言語仕様において、もはや既知の実装上の差異は存在しない」という簡潔なメッセージです。

変更の背景

Go言語は、その設計当初から複数のコンパイラ実装が存在していました。主要なものとしては、Googleが開発した公式コンパイラである gc (Go Compiler) と、GCC (GNU Compiler Collection) をベースにした gccgo が挙げられます。言語仕様は、これらの異なる実装が同じソースコードに対して一貫した振る舞いをすることを保証するための「契約」のようなものです。

しかし、言語の初期段階や特定の機能の実装においては、コンパイラ間で微妙な差異が生じることがあります。これは、仕様の解釈の違い、バグ、あるいは特定の最適化戦略に起因する可能性があります。doc/go_spec.html に「Implementation differences - TODO」というセクションが存在していたことは、かつてGo言語の公式仕様書が、まだ解消されていない、あるいは文書化が必要な実装間の差異を認識していたことを示しています。

このコミットが行われた2012年3月7日という時期は、Go言語がバージョン1.0のリリースに向けて開発が活発に行われていた時期と重なります。Go 1.0は、言語の安定性と互換性を確立するための重要なマイルストーンでした。この時期に「既知の実装上の差異がなくなった」と宣言されたことは、Go言語の成熟度が高まり、異なるコンパイラ実装間での互換性が確保されたことを意味します。これは、Go言語がより安定したプラットフォームとして利用可能になるための重要な一歩でした。

前提知識の解説

Go言語仕様 (Go Language Specification)

Go言語仕様は、Goプログラミング言語の構文、セマンティクス、および標準ライブラリの動作を正式に記述した文書です。これは、Goプログラムがどのように解釈され、実行されるべきかを定義する「唯一の真実の源」として機能します。コンパイラ開発者、ツール開発者、そしてGoプログラマが言語の正確な振る舞いを理解するために不可欠です。

言語仕様が存在する主な理由は以下の通りです。

  1. 一貫性: 異なるコンパイラやツールが同じGoコードを同じように解釈し、実行することを保証します。
  2. 明確性: 言語の曖昧さを排除し、特定の構文や機能がどのように動作するかを明確に定義します。
  3. 互換性: 将来の言語バージョンや異なるプラットフォーム間での互換性を維持するための基盤となります。
  4. 教育: プログラマが言語を深く理解するための参照点となります。

コンパイラの実装差異

プログラミング言語には、その言語仕様を実装する複数のコンパイラが存在することがあります。例えば、C++にはGCC、Clang、MSVCなどがあります。Go言語の場合も、公式の gc コンパイラ以外に gccgo などが存在しました。

これらの異なるコンパイラ実装間で、以下のような理由で差異が生じることがあります。

  • 仕様の解釈: 仕様書が曖昧な場合、異なるコンパイラ開発者が異なる解釈をする可能性があります。
  • バグ: 特定のコンパイラにのみ存在するバグが、仕様とは異なる振る舞いを引き起こすことがあります。
  • 最適化: コンパイラがコードを最適化する際に、特定のケースで予期せぬ副作用が生じ、仕様に準拠しない振る舞いをすることがあります。
  • 未実装の機能: 仕様で定義されているにもかかわらず、特定のコンパイラでまだ実装されていない機能がある場合があります。

これらの差異は、特に言語の初期開発段階では一般的です。しかし、言語が成熟し、安定版がリリースされるにつれて、これらの差異は解消され、すべての公式実装が仕様に厳密に準拠することが期待されます。

技術的詳細

このコミットは、Go言語仕様のHTMLドキュメント (doc/go_spec.html) を直接編集しています。HTMLドキュメントは、Go言語の公式ウェブサイト (golang.org) で公開される仕様書の基盤となります。

変更の技術的な意味合いは以下の通りです。

  1. バージョン日付の更新: <!--{\n \t\"Title\": \"The Go Programming Language Specification\",\n-\t\"Subtitle\": \"Version of March 1, 2012\",\n+\t\"Subtitle\": \"Version of March 7, 2012\",\n \t\"Path\": \"/ref/spec\"\n }--> この部分の変更は、仕様書が2012年3月1日から2012年3月7日に更新されたことを示しています。これは、仕様書が継続的にレビューされ、更新されていることを示す標準的なプラクティスです。

  2. 「Implementation differences - TODO」セクションの削除: -\n-\n-<h2 id=\"Implementation_differences\">Implementation differences - TODO</h2>\n-<ul>\n-\t<li><span class=\"alert\"><code>len(x)</code> is only a constant if <code>x</code> is a (qualified) identifier denoting an array or pointer to an array.</span></li>\n-</ul> このセクションの削除は、Go言語のコンパイラ実装間における既知の差異が、もはや存在しないか、あるいは重要ではないレベルにまで解消されたことを公式に宣言するものです。特に、len(x) が配列または配列へのポインタを示す識別子である場合にのみ定数となるという具体的な差異が挙げられていましたが、これも解消されたことを意味します。

    この特定の差異(len(x) の定数性)は、コンパイル時の最適化や型チェックの挙動に影響を与える可能性がありました。例えば、len の結果が定数であるかどうかは、配列のサイズがコンパイル時に既知であるかどうかに依存します。もし異なるコンパイラがこの点で異なる挙動を示していた場合、それは移植性の問題を引き起こす可能性がありました。この問題が解決されたことは、Go言語のコンパイラがより仕様に厳密に準拠し、予測可能な振る舞いをするようになったことを示しています。

このコミットは、言語の安定性と成熟度を示す重要な指標であり、Go 1.0リリースに向けた品質向上の一環と見なすことができます。

コアとなるコードの変更箇所

変更は doc/go_spec.html ファイルに対して行われています。

--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -1,6 +1,6 @@
 <!--{
 	"Title": "The Go Programming Language Specification",
-\t"Subtitle": "Version of March 1, 2012",
+\t"Subtitle": "Version of March 7, 2012",
 	"Path": "/ref/spec"
 }-->
 
@@ -5499,9 +5499,3 @@ The following minimal alignment properties are guaranteed:
 <p>
 A struct or array type has size zero if it contains no fields (or elements, respectively) that have a size greater than zero. Two distinct zero-size variables may have the same address in memory.
 </p>
-\n-\n-<h2 id=\"Implementation_differences\">Implementation differences - TODO</h2>\n-<ul>\n-\t<li><span class=\"alert\"><code>len(x)</code> is only a constant if <code>x</code> is a (qualified) identifier denoting an array or pointer to an array.</span></li>\n-</ul>

コアとなるコードの解説

このdiffは2つの主要な変更点を示しています。

  1. メタデータ内の日付更新:

    -\t"Subtitle": "Version of March 1, 2012",
    +\t"Subtitle": "Version of March 7, 2012",
    

    これはHTMLファイルの冒頭にあるコメントブロック内の Subtitle フィールドを変更しています。このフィールドは、Go言語仕様のバージョン日付を示しており、このコミットによって2012年3月1日から2012年3月7日に更新されました。これは、仕様書がこの日付で最新の状態になったことを示すものです。

  2. 「Implementation differences - TODO」セクションの削除:

    -<h2 id=\"Implementation_differences\">Implementation differences - TODO</h2>
    -<ul>
    -\t<li><span class=\"alert\"><code>len(x)</code> is only a constant if <code>x</code> is a (qualified) identifier denoting an array or pointer to an array.</span></li>
    -</ul>
    

    この部分は、HTMLドキュメント内の <h2> ヘッダーとそれに続く <ul> リストを完全に削除しています。

    • <h2 id=\"Implementation_differences\">Implementation differences - TODO</h2>: 「実装上の差異 - TODO」という見出しです。TODO が付いていることから、これは将来的に解決されるべき、あるいは文書化されるべき問題として認識されていたことがわかります。
    • <li><span class=\"alert\"><code>len(x)</code> is only a constant if <code>x</code> is a (qualified) identifier denoting an array or pointer to an array.</span></li>: 具体的な差異として挙げられていた項目です。これは、len 関数が引数 x に対して定数値を返す条件に関するものでした。この項目が削除されたということは、この特定の len(x) の挙動に関する実装間の差異が解消されたか、あるいはもはや問題と見なされなくなったことを意味します。

これらの変更は、Go言語の仕様がより洗練され、異なる実装間での一貫性が向上したことを公式に反映するものです。特に、TODO セクションの削除は、言語の成熟度と安定性を示す重要なシグナルとなります。

関連リンク

参考にした情報源リンク