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[インデックス 12712] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のビルドシステムの中核を担う go/build パッケージにおけるコメントの明確化を目的としています。具体的には、Goのパッケージに含めないファイル(ビルド対象外となるファイル)の条件として、「_ または . で始まるファイル」が挙げられていましたが、その理由が「エディタの一時ファイルである可能性が高い」という補足説明が追加されました。これにより、Goのビルドシステムが特定のファイルを無視する背景がより明確になり、開発者にとって理解しやすくなっています。

コミット

commit 7186e565730d9b0789128319c9dde79dbf8488dc
Author: Shenghou Ma <minux.ma@gmail.com>
Date:   Thu Mar 22 03:18:47 2012 +0800

    go/build: clarify why we exclude files starting with '_' or '.'
    
    R=golang-dev, gri
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5864053
---
 src/pkg/go/build/build.go | 2 +--
 1 file changed, 1 insertion(+), 1 deletion(-)

diff --git a/src/pkg/go/build/build.go b/src/pkg/go/build/build.go
index bf9801c802..d113dc135b 100644
--- a/src/pkg/go/build/build.go
+++ b/src/pkg/go/build/build.go
@@ -337,7 +337,7 @@ func (e *NoGoError) Error() string {
 // considered part of the package except for:
 //
 //	- .go files in package documentation
-//	- files starting with _ or .
+//	- files starting with _ or . (likely editor temporary files)
 //	- files with build constraints not satisfied by the context
 //
 // If an error occurs, Import returns a non-nil error also returns a non-nil

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/7186e565730d9b0789128319c9dde79dbf8488dc

元コミット内容

go/build: clarify why we exclude files starting with '_' or '.'

R=golang-dev, gri
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5864053

変更の背景

Go言語のビルドシステムは、ソースコードをコンパイルする際に、どのファイルをパッケージの一部として扱うかを厳密に決定します。この決定プロセスにおいて、特定の命名規則を持つファイルは意図的に除外されます。以前のコメントでは、「_ または . で始まるファイル」が除外されることだけが述べられており、その背後にある具体的な理由が不明瞭でした。

このコミットの背景には、開発者がGoのビルドシステムがなぜ特定のファイルを無視するのかをより深く理解できるようにするという意図があります。特に、多くのテキストエディタやIDEは、編集中のファイルのバックアップや一時的なバージョンを、元のファイル名にプレフィックス(例: ._)を付けて保存する習慣があります(例: .main.go.swp_main.go)。これらのファイルが誤ってGoのパッケージの一部として扱われると、ビルドエラーや予期せぬ動作を引き起こす可能性があります。

この変更は、単なるコードの機能変更ではなく、ドキュメンテーションの改善、特にGoのビルドシステムの「なぜ」を明確にすることで、開発者の学習曲線とデバッグ体験を向上させることを目的としています。

前提知識の解説

Goのビルドシステムとgo/buildパッケージ

Go言語のビルドシステムは、go buildgo installといったコマンドを通じて、ソースコードをコンパイルし、実行可能ファイルやライブラリを生成します。このシステムの中心的な役割を果たすのが、標準ライブラリのgo/buildパッケージです。

go/buildパッケージは、Goのソースコードディレクトリをスキャンし、どのファイルが特定のパッケージに属するか、どのファイルがビルド対象となるかを決定するロジックを提供します。これには、以下のような考慮事項が含まれます。

  • パッケージの識別: ディレクトリ内の.goファイルがpackage mainまたは他のパッケージ宣言を持つかによって、そのディレクトリがどのパッケージを構成するかが決まります。
  • ビルド制約 (Build Constraints): Goのソースファイルは、// +buildタグや//go:buildタグ(Go 1.17以降)を使用して、特定のOS、アーキテクチャ、Goのバージョン、またはカスタムタグが満たされた場合にのみビルドされるように指定できます。例えば、// +build linuxと書かれたファイルはLinux環境でのみビルドされます。
  • テストファイル: _test.goで終わるファイルはテストファイルとして認識され、通常のビルドプロセスからは除外されますが、go testコマンドによって特別に扱われます。
  • ドキュメンテーションファイル: パッケージのドキュメンテーションとして扱われる.goファイル(例: doc.go)も、特定のルールに基づいてビルド対象から除外されることがあります。

ファイル命名規則とエディタの一時ファイル

Unix系システムでは、ファイル名の先頭に.(ドット)が付くファイルは、通常「隠しファイル」として扱われます。これは、ユーザーが日常的に操作する必要のない設定ファイルや一時ファイルを隠すための慣習です。

また、多くのプログラミングエディタやIDEは、ファイルの保存時に以下のような一時ファイルを生成することがあります。

  • バックアップファイル: 編集前の状態を保存するために、元のファイル名に特定のサフィックス(例: ~)やプレフィックス(例: #)を付けたり、隠しファイルとして保存したりします。
  • スワップファイル: Vimなどのエディタは、編集中にクラッシュした場合のデータ損失を防ぐために、スワップファイル(例: .filename.swp)を作成します。
  • 自動保存ファイル: 一部のエディタは、定期的に自動保存を行い、その一時ファイルを特定の命名規則で保存します。

これらのエディタが生成する一時ファイルは、通常、ソースコードの一部としてコンパイルされることを意図していません。もしGoのビルドシステムがこれらのファイルを誤ってGoのソースファイルとして解釈しようとすると、構文エラーや型エラーが発生し、ビルドが失敗する原因となります。

Goのビルドシステムが「_ または . で始まるファイル」を除外するルールは、このようなエディタの一時ファイルや、開発者が意図的にビルド対象から外したい補助的なファイル(例: _data.goのような内部的なデータファイル)を自動的に無視するためのものです。これにより、開発者はクリーンなビルド環境を維持し、不要なファイルによるビルドエラーを避けることができます。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/go/build/build.goファイル内のコメントを修正しています。このファイルは、Goのgo/buildパッケージの核心部分であり、Goのソースコードを解析し、パッケージの構造を理解するためのロジックを含んでいます。

変更が行われた箇所は、Import関数(またはそれに類するパッケージインポートロジック)が、Goのパッケージの一部として考慮しないファイルの種類を列挙している部分です。このリストは、Goのビルドシステムが特定のファイルを無視する際の内部的なルールを開発者に伝えるためのドキュメンテーションとして機能します。

以前のコメントでは、単に「_ または . で始まるファイル」が除外されるとだけ書かれていました。これは事実を述べていますが、なぜそのようなルールが存在するのかという理由が欠けていました。

今回の変更では、この記述に「(likely editor temporary files)」という補足が追加されました。この短いフレーズが追加されたことで、このルールの背後にある具体的な理由、すなわち、多くのエディタが生成する一時ファイルがビルドプロセスに干渉するのを防ぐためであるという意図が明確になります。

この変更は、コードの動作自体には影響を与えません。go/buildパッケージは、このコメントが変更される前から、_ または . で始まるファイルをビルド対象から除外していました。したがって、このコミットは機能的なバグ修正や新機能の追加ではなく、既存の動作に関するドキュメンテーションの品質向上を目的としたものです。

このようなドキュメンテーションの改善は、Go言語の設計哲学の一部であり、コードが自己説明的であること、そしてその動作が明確に文書化されていることを重視しています。これにより、Goのツールチェーンの透明性が高まり、開発者がより効率的に作業できるようになります。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/go/build/build.go
+++ b/src/pkg/go/build/build.go
@@ -337,7 +337,7 @@ func (e *NoGoError) Error() string {
 // considered part of the package except for:
 //
 //	- .go files in package documentation
-//	- files starting with _ or .
+//	- files starting with _ or . (likely editor temporary files)
 //	- files with build constraints not satisfied by the context
 //
 // If an error occurs, Import returns a non-nil error also returns a non-nil

コアとなるコードの解説

変更された行は、src/pkg/go/build/build.goファイルの339行目付近にあります。この部分は、go/buildパッケージがGoのソースパッケージをインポートする際に、どのファイルをパッケージの一部として考慮しないかを説明するコメントブロックです。

元の行:

//	- files starting with _ or .

この行は、Goのビルドシステムがアンダースコア (_) またはドット (.) で始まるファイルを無視するという事実を述べています。これは、Goのビルドルールの一部として、これらのファイルが通常のソースコードとは異なる目的を持つと見なされるためです。

変更後の行:

//	- files starting with _ or . (likely editor temporary files)

この変更では、元の行の末尾に「(likely editor temporary files)」という括弧書きの補足が追加されました。この補足は、なぜこれらのファイルが除外されるのかという理由を明確にしています。つまり、これらのファイルは、Vimのスワップファイル(.filename.swp)、Emacsのバックアップファイル(#filename#)、またはその他のエディタが生成する一時ファイルである可能性が高い、ということを示唆しています。

この変更は、コードの実行ロジックには一切影響を与えません。go/buildパッケージの動作は、このコメントの変更によって変わることはありません。これは純粋にドキュメンテーションの改善であり、Goのビルドシステムが特定のファイルを無視する理由について、開発者により深い洞察を提供することを目的としています。これにより、開発者はGoのビルドプロセスをよりよく理解し、予期せぬビルドエラーに遭遇した際に、問題の原因を特定しやすくなります。

関連リンク

  • Gerrit Change-ID: https://golang.org/cl/5864053
    • Goプロジェクトでは、GitHubにプッシュされる前に、Gerritというコードレビューシステムで変更がレビューされます。このリンクは、このコミットがGerrit上でどのようにレビューされ、承認されたかを示すものです。Gerritは、Goプロジェクトのコントリビューションプロセスにおいて重要な役割を果たしています。

参考にした情報源リンク