[インデックス 12745] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のビルドシステムにおける go/build
パッケージの変更に関するものです。具体的には、cgoEnabled
というCgoの有効/無効を管理するマップが、もはや cmd/dist
ツールに直接認識される必要がなくなったことを反映しています。これにより、ビルドシステムの依存関係が整理され、よりモジュール化された設計へと移行していることが示唆されます。
コミット
go/build: cgoEnabled is not known to cmd/dist anymore
このコミットは、go/build
パッケージ内の cgoEnabled
マップが、Goのビルドツールチェーンの一部である cmd/dist
から直接参照されなくなったことを示しています。これは、ビルドプロセスの内部的な変更、特にCgoの有効化ロジックの管理方法の変更を反映しています。
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/d1f6e27880f1e867c62704c32aa8917f902925fd
元コミット内容
commit d1f6e27880f1e867c62704c32aa8917f902925fd
Author: Shenghou Ma <minux.ma@gmail.com>
Date: Mon Mar 26 10:00:06 2012 +0800
go/build: cgoEnabled is not known to cmd/dist anymore
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5901051
---
src/pkg/go/build/build.go | 1 -
1 file changed, 1 deletion(-)
diff --git a/src/pkg/go/build/build.go b/src/pkg/go/build/build.go
index d113dc135b..1c7c47231f 100644
--- a/src/pkg/go/build/build.go
+++ b/src/pkg/go/build/build.go
@@ -210,7 +210,6 @@ func (ctxt *Context) SrcDirs() []string {
// if set, or else the compiled code\'s GOARCH, GOOS, and GOROOT.
var Default Context = defaultContext()
-// This list is also known to ../../../cmd/dist/build.c.
var cgoEnabled = map[string]bool{
\"darwin/386\": true,
\"darwin/amd64\": true,
変更の背景
この変更の背景には、Go言語のビルドシステム、特にCgoのサポートに関する内部的なアーキテクチャの進化があります。以前は、src/pkg/go/build/build.go
内の cgoEnabled
マップ(特定のOS/アーキテクチャの組み合わせでCgoが有効であるかを示す)が、Goのブートストラップビルドツールである cmd/dist
の build.c
ファイルからも直接参照されていました。
しかし、Goのビルドシステムが成熟するにつれて、各コンポーネントの責任範囲がより明確に分離されるようになりました。このコミットは、cgoEnabled
の情報が cmd/dist
に直接ハードコードされるのではなく、go/build
パッケージが提供するAPIを通じて間接的に利用されるようになったことを示唆しています。これにより、cmd/dist
は go/build
の内部実装の詳細に依存することなく、より高レベルな抽象化を通じてCgoの有効性を判断できるようになります。
この変更は、ビルドシステムの保守性を向上させ、将来的な変更に対する柔軟性を持たせるためのリファクタリングの一環と考えられます。特定の情報が複数の場所で重複して管理されることを避け、単一の信頼できる情報源(Single Source of Truth)を確立する設計原則に沿っています。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、以下のGo言語のビルドシステムに関する前提知識が必要です。
-
Go言語のビルドシステム: Go言語は、
go build
コマンドを通じてソースコードをコンパイルし、実行可能ファイルを生成します。このプロセスは、Goツールチェーンによって管理されており、複数の内部コンポーネントが連携して動作します。 -
go/build
パッケージ:go/build
パッケージは、Goのソースコードを解析し、パッケージの依存関係を解決し、ビルド可能なGoパッケージに関する情報を提供する標準ライブラリです。- このパッケージは、Goのソースファイルやディレクトリ構造を理解し、ビルドタグ(build tags)や環境変数(GOOS, GOARCHなど)に基づいて、どのファイルを含めるべきかを決定します。
Context
構造体は、ビルド環境に関する情報(GOOS, GOARCH, GOROOT, GOPATHなど)をカプセル化し、ビルドプロセス全体で利用されます。cgoEnabled
マップは、特定のOS/アーキテクチャの組み合わせでCgoがデフォルトで有効になっているかどうかを示す内部的なデータ構造です。
-
cmd/dist
:cmd/dist
は、Goのツールチェーン自体をビルドするためのブートストラップツールです。GoのソースコードからGoコンパイラ、リンカ、その他のツールを構築する際に使用されます。- Goは自己ホスト型(self-hosting)言語であり、GoのコンパイラやツールはGo自身で書かれています。そのため、Goの新しいバージョンをビルドするには、まず既存のGoコンパイラを使って
cmd/dist
をビルドし、そのcmd/dist
を使って新しいGoツールチェーン全体をビルドするというブートストラッププロセスが必要です。 cmd/dist
は、Goのビルド環境に関する低レベルな詳細(例えば、Cgoが有効かどうか)を直接知る必要がありました。
-
Cgo:
- Cgoは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出すためのGoの機能です。また、C言語のコードからGoの関数を呼び出すことも可能です。
- Cgoを使用すると、既存のCライブラリをGoプロジェクトに統合したり、パフォーマンスが重要な部分をCで記述したりすることができます。
- Cgoが有効な場合、GoコンパイラはCコンパイラ(通常はGCCやClang)と連携して動作し、Cコードをコンパイルし、Goコードとリンクします。
cgoEnabled
マップは、特定のプラットフォーム(例:darwin/amd64
)でCgoがデフォルトで有効になっているかどうかを定義します。これは、クロスコンパイルや特定の環境でのCgoの挙動を制御するために重要です。
これらのコンポーネントがどのように連携し、Goのビルドプロセスを形成しているかを理解することが、このコミットの意義を把握する上で不可欠です。
技術的詳細
このコミットの技術的な詳細は、Goのビルドシステムにおける依存関係のデカップリング(分離)にあります。
変更前は、src/pkg/go/build/build.go
内の cgoEnabled
マップの定義の直前に、以下のコメントがありました。
// This list is also known to ../../../cmd/dist/build.c.
このコメントは、cgoEnabled
マップの内容が、Goツールチェーンのブートストラップビルドを担当する cmd/dist
ディレクトリ内の build.c
ファイルにも「知られている」、つまり、同じ情報が重複して存在するか、あるいは build.c
がこのマップの定義に直接依存していることを示していました。
このような状況は、ソフトウェア開発において「DRY (Don't Repeat Yourself)」原則に反し、保守性の問題を引き起こす可能性があります。例えば、新しいプラットフォームでCgoを有効にする場合、build.go
の cgoEnabled
マップを更新するだけでなく、cmd/dist/build.c
も同様に更新する必要がありました。もし片方だけが更新された場合、ビルドシステム全体で不整合が生じ、予期せぬエラーやビルドの失敗につながる可能性があります。
このコミットでは、このコメントが削除されています。これは、cmd/dist/build.c
がもはや go/build/build.go
内の cgoEnabled
マップの具体的な内容に直接依存しなくなったことを意味します。
考えられる変更のシナリオは以下の通りです。
cmd/dist
の抽象化:cmd/dist
がgo/build
パッケージのより高レベルなAPIを利用するようになった可能性があります。例えば、go/build
パッケージ内にCgoEnabled(goos, goarch string) bool
のような関数が提供され、cmd/dist
はその関数を呼び出すことで、特定のプラットフォームでCgoが有効かどうかを問い合わせるようになったのかもしれません。これにより、cmd/dist
はcgoEnabled
マップの内部実装の詳細を知る必要がなくなります。- ビルドプロセスの再設計:
cmd/dist
がCgoの有効性を判断する方法が根本的に変更された可能性もあります。例えば、ビルド時に動的にCgoのサポートを検出するメカニズムが導入されたか、あるいはCgoの有効/無効が別の設定ファイルや環境変数を通じて制御されるようになったのかもしれません。 - 冗長な情報の削除: 単純に、以前は
build.c
がcgoEnabled
の情報をハードコードしていたが、そのハードコードが不要になり、go/build
パッケージが唯一の信頼できる情報源となった、という可能性もあります。
いずれにせよ、この変更はGoのビルドシステムがよりモジュール化され、各コンポーネントの責任が明確に分離される方向へと進化していることを示しています。これにより、将来的な機能追加やプラットフォームサポートの変更が容易になり、ビルドシステムの堅牢性が向上します。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/go/build/build.go
ファイルの1行の削除です。
--- a/src/pkg/go/build/build.go
+++ b/src/pkg/go/build/build.go
@@ -210,7 +210,6 @@ func (ctxt *Context) SrcDirs() []string {
// if set, or else the compiled code\'s GOARCH, GOOS, and GOROOT.
var Default Context = defaultContext()
-// This list is also known to ../../../cmd/dist/build.c.
var cgoEnabled = map[string]bool{
\"darwin/386\": true,
\"darwin/amd64\": true,
削除された行は以下のコメントです。
// This list is also known to ../../../cmd/dist/build.c.
コアとなるコードの解説
削除された行はコードの動作に直接影響を与えるものではなく、単なるコメントです。しかし、このコメントの削除は、Goのビルドシステムにおける重要な設計変更を意味します。
このコメントは、cgoEnabled
マップ(GoのビルドコンテキストでCgoが有効なプラットフォームを定義する)の情報が、cmd/dist
ツール内の build.c
ファイルにも複製されている、または build.c
がこのマップの具体的な内容に依存していることを示していました。
コメントが削除されたということは、もはや cmd/dist/build.c
が cgoEnabled
マップの内部的な詳細に直接依存していない、ということを開発者が明示的に宣言していることになります。これは、cmd/dist
が go/build
パッケージのより抽象化されたインターフェースを通じてCgoの有効性を問い合わせるようになったか、あるいはCgoの有効性に関する情報がビルドプロセスの別の段階で、より適切に管理されるようになったことを示唆しています。
この変更は、Goのビルドシステムがよりクリーンで、保守しやすく、将来の拡張に対応しやすいようにリファクタリングされた結果です。重複する情報の管理を避け、単一の信頼できる情報源(go/build
パッケージ)に依存することで、ビルドシステムの整合性と堅牢性が向上します。
関連リンク
- Go CL 5901051: https://golang.org/cl/5901051
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (go/buildパッケージ, cmd/dist, Cgoに関する情報): https://golang.org/pkg/go/build/
- Go言語のソースコード (特に
src/cmd/dist
ディレクトリ): https://github.com/golang/go/tree/master/src/cmd/dist - Go言語のCgoに関する公式ドキュメント: https://golang.org/cmd/cgo/
- Go言語のビルドプロセスに関する一般的な情報源 (ブログ記事、カンファレンス発表など)
- (具体的なURLはコミット情報からは得られないため、一般的な情報源として記載)
- 例: "Go's build process explained" や "Understanding Go's toolchain" などのキーワードで検索。# [インデックス 12745] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のビルドシステムにおける go/build
パッケージの変更に関するものです。具体的には、cgoEnabled
というCgoの有効/無効を管理するマップが、もはや cmd/dist
ツールに直接認識される必要がなくなったことを反映しています。これにより、ビルドシステムの依存関係が整理され、よりモジュール化された設計へと移行していることが示唆されます。
コミット
go/build: cgoEnabled is not known to cmd/dist anymore
このコミットは、go/build
パッケージ内の cgoEnabled
マップが、Goのビルドツールチェーンの一部である cmd/dist
から直接参照されなくなったことを示しています。これは、ビルドプロセスの内部的な変更、特にCgoの有効化ロジックの管理方法の変更を反映しています。
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/d1f6e27880f1e867c62704c32aa8917f902925fd
元コミット内容
commit d1f6e27880f1e867c62704c32aa8917f902925fd
Author: Shenghou Ma <minux.ma@gmail.com>
Date: Mon Mar 26 10:00:06 2012 +0800
go/build: cgoEnabled is not known to cmd/dist anymore
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5901051
---
src/pkg/go/build/build.go | 1 -
1 file changed, 1 deletion(-)
diff --git a/src/pkg/go/build/build.go b/src/pkg/go/build/build.go
index d113dc135b..1c7c47231f 100644
--- a/src/pkg/go/build/build.go
+++ b/src/pkg/go/build/build.go
@@ -210,7 +210,6 @@ func (ctxt *Context) SrcDirs() []string {
// if set, or else the compiled code\'s GOARCH, GOOS, and GOROOT.
var Default Context = defaultContext()
-// This list is also known to ../../../cmd/dist/build.c.
var cgoEnabled = map[string]bool{
\"darwin/386\": true,
\"darwin/amd64\": true,
変更の背景
この変更の背景には、Go言語のビルドシステムにおける、特にCgoのサポートに関する内部的なアーキテクチャの進化があります。以前は、src/pkg/go/build/build.go
内の cgoEnabled
マップ(特定のOS/アーキテクチャの組み合わせでCgoが有効であるかを示す)が、Goのブートストラップビルドツールである cmd/dist
の build.c
ファイルからも直接参照されていました。
しかし、Goのビルドシステムが成熟するにつれて、各コンポーネントの責任範囲がより明確に分離されるようになりました。このコミットは、cgoEnabled
の情報が cmd/dist
に直接ハードコードされるのではなく、go/build
パッケージが提供するAPIを通じて間接的に利用されるようになったことを示唆しています。これにより、cmd/dist
は go/build
の内部実装の詳細に依存することなく、より高レベルな抽象化を通じてCgoの有効性を判断できるようになります。
この変更は、ビルドシステムの保守性を向上させ、将来的な変更に対する柔軟性を持たせるためのリファクタリングの一環と考えられます。特定の情報が複数の場所で重複して管理されることを避け、単一の信頼できる情報源(Single Source of Truth)を確立する設計原則に沿っています。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、以下のGo言語のビルドシステムに関する前提知識が必要です。
-
Go言語のビルドシステム: Go言語は、
go build
コマンドを通じてソースコードをコンパイルし、実行可能ファイルを生成します。このプロセスは、Goツールチェーンによって管理されており、複数の内部コンポーネントが連携して動作します。 -
go/build
パッケージ:go/build
パッケージは、Goのソースコードを解析し、パッケージの依存関係を解決し、ビルド可能なGoパッケージに関する情報を提供する標準ライブラリです。- このパッケージは、Goのソースファイルやディレクトリ構造を理解し、ビルドタグ(build tags)や環境変数(GOOS, GOARCHなど)に基づいて、どのファイルを含めるべきかを決定します。
Context
構造体は、ビルド環境に関する情報(GOOS, GOARCH, GOROOT, GOPATHなど)をカプセル化し、ビルドプロセス全体で利用されます。cgoEnabled
マップは、特定のOS/アーキテクチャの組み合わせでCgoがデフォルトで有効になっているかどうかを示す内部的なデータ構造です。
-
cmd/dist
:cmd/dist
は、Goのツールチェーン自体をビルドするためのブートストラップツールです。GoのソースコードからGoコンパイラ、リンカ、その他のツールを構築する際に使用されます。- Goは自己ホスト型(self-hosting)言語であり、GoのコンパイラやツールはGo自身で書かれています。そのため、Goの新しいバージョンをビルドするには、まず既存のGoコンパイラを使って
cmd/dist
をビルドし、そのcmd/dist
を使って新しいGoツールチェーン全体をビルドするというブートストラッププロセスが必要です。 cmd/dist
は、Goのビルド環境に関する低レベルな詳細(例えば、Cgoが有効かどうか)を直接知る必要がありました。
-
Cgo:
- Cgoは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出すためのGoの機能です。また、C言語のコードからGoの関数を呼び出すことも可能です。
- Cgoを使用すると、既存のCライブラリをGoプロジェクトに統合したり、パフォーマンスが重要な部分をCで記述したりすることができます。
- Cgoが有効な場合、GoコンパイラはCコンパイラ(通常はGCCやClang)と連携して動作し、Cコードをコンパイルし、Goコードとリンクします。
cgoEnabled
マップは、特定のプラットフォーム(例:darwin/amd64
)でCgoがデフォルトで有効になっているかどうかを定義します。これは、クロスコンパイルや特定の環境でのCgoの挙動を制御するために重要です。
これらのコンポーネントがどのように連携し、Goのビルドプロセスを形成しているかを理解することが、このコミットの意義を把握する上で不可欠です。
技術的詳細
このコミットの技術的な詳細は、Goのビルドシステムにおける依存関係のデカップリング(分離)にあります。
変更前は、src/pkg/go/build/build.go
内の cgoEnabled
マップの定義の直前に、以下のコメントがありました。
// This list is also known to ../../../cmd/dist/build.c.
このコメントは、cgoEnabled
マップの内容が、Goツールチェーンのブートストラップビルドを担当する cmd/dist
ディレクトリ内の build.c
ファイルにも「知られている」、つまり、同じ情報が重複して存在するか、あるいは build.c
がこのマップの定義に直接依存していることを示していました。
このような状況は、ソフトウェア開発において「DRY (Don't Repeat Yourself)」原則に反し、保守性の問題を引き起こす可能性があります。例えば、新しいプラットフォームでCgoを有効にする場合、build.go
の cgoEnabled
マップを更新するだけでなく、cmd/dist/build.c
も同様に更新する必要がありました。もし片方だけが更新された場合、ビルドシステム全体で不整合が生じ、予期せぬエラーやビルドの失敗につながる可能性があります。
このコミットでは、このコメントが削除されています。これは、cmd/dist/build.c
がもはや go/build/build.go
内の cgoEnabled
マップの具体的な内容に直接依存しなくなったことを意味します。
考えられる変更のシナリオは以下の通りです。
cmd/dist
の抽象化:cmd/dist
がgo/build
パッケージのより高レベルなAPIを利用するようになった可能性があります。例えば、go/build
パッケージ内にCgoEnabled(goos, goarch string) bool
のような関数が提供され、cmd/dist
はその関数を呼び出すことで、特定のプラットフォームでCgoが有効かどうかを問い合わせるようになったのかもしれません。これにより、cmd/dist
はcgoEnabled
マップの内部実装の詳細を知る必要がなくなります。- ビルドプロセスの再設計:
cmd/dist
がCgoの有効性を判断する方法が根本的に変更された可能性もあります。例えば、ビルド時に動的にCgoのサポートを検出するメカニズムが導入されたか、あるいはCgoの有効/無効が別の設定ファイルや環境変数を通じて制御されるようになったのかもしれません。 - 冗長な情報の削除: 単純に、以前は
build.c
がcgoEnabled
の情報をハードコードしていたが、そのハードコードが不要になり、go/build
パッケージが唯一の信頼できる情報源となった、という可能性もあります。
いずれにせよ、この変更はGoのビルドシステムがよりモジュール化され、各コンポーネントの責任が明確に分離される方向へと進化していることを示しています。これにより、将来的な機能追加やプラットフォームサポートの変更が容易になり、ビルドシステムの堅牢性が向上します。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/go/build/build.go
ファイルの1行の削除です。
--- a/src/pkg/go/build/build.go
+++ b/src/pkg/go/build/build.go
@@ -210,7 +210,6 @@ func (ctxt *Context) SrcDirs() []string {
// if set, or else the compiled code\'s GOARCH, GOOS, and GOROOT.
var Default Context = defaultContext()
-// This list is also known to ../../../cmd/dist/build.c.
var cgoEnabled = map[string]bool{
\"darwin/386\": true,
\"darwin/amd64\": true,
削除された行は以下のコメントです。
// This list is also known to ../../../cmd/dist/build.c.
コアとなるコードの解説
削除された行はコードの動作に直接影響を与えるものではなく、単なるコメントです。しかし、このコメントの削除は、Goのビルドシステムにおける重要な設計変更を意味します。
このコメントは、cgoEnabled
マップ(GoのビルドコンテキストでCgoが有効なプラットフォームを定義する)の情報が、cmd/dist
ツール内の build.c
ファイルにも複製されている、または build.c
がこのマップの具体的な内容に依存していることを示していました。
コメントが削除されたということは、もはや cmd/dist/build.c
が cgoEnabled
マップの内部的な詳細に直接依存していない、ということを開発者が明示的に宣言していることになります。これは、cmd/dist
が go/build
パッケージのより抽象化されたインターフェースを通じてCgoの有効性を問い合わせるようになったか、あるいはCgoの有効性に関する情報がビルドプロセスの別の段階で、より適切に管理されるようになったことを示唆しています。
この変更は、Goのビルドシステムがよりクリーンで、保守しやすく、将来の拡張に対応しやすいようにリファクタリングされた結果です。重複する情報の管理を避け、単一の信頼できる情報源(go/build
パッケージ)に依存することで、ビルドシステムの整合性と堅牢性が向上します。
関連リンク
- Go CL 5901051: https://golang.org/cl/5901051
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (go/buildパッケージ, cmd/dist, Cgoに関する情報): https://golang.org/pkg/go/build/
- Go言語のソースコード (特に
src/cmd/dist
ディレクトリ): https://github.com/golang/go/tree/master/src/cmd/dist - Go言語のCgoに関する公式ドキュメント: https://golang.org/cmd/cgo/
- Go言語のビルドプロセスに関する一般的な情報源 (ブログ記事、カンファレンス発表など)
- (具体的なURLはコミット情報からは得られないため、一般的な情報源として記載)
- 例: "Go's build process explained" や "Understanding Go's toolchain" などのキーワードで検索。