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[インデックス 12834] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のディストリビューションツール (misc/dist) におけるアーキテクチャの表示名を変更するものです。具体的には、386 アーキテクチャを「32-bit x86」に、amd64 アーキテクチャを「64-bit x86」に、より明確で一般的な表現に修正しています。

コミット

commit 0f775d6b769496296e95ce19ae5f4062bc0e5aed
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date:   Thu Apr 5 11:16:37 2012 +1000

    misc/dist: label 386 and amd64 as "32-bit x86" and "64-bit x86"
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5986043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/0f775d6b769496296e95ce19ae5f4062bc0e5aed

元コミット内容

misc/dist: label 386 and amd64 as "32-bit x86" and "64-bit x86"

このコミットメッセージは、386 および amd64 というアーキテクチャの識別子を、それぞれ「32-bit x86」と「64-bit x86」という、よりユーザーフレンドリーで分かりやすいラベルに変更することを意図しています。

変更の背景

Go言語のディストリビューションツールは、様々なプラットフォーム向けにバイナリをビルドし、配布する役割を担っています。このツールが生成するファイル名や表示される情報には、ターゲットとなるシステムのアーキテクチャが含まれます。

従来の「386」や「amd64」といった表記は、技術者にとっては馴染み深いものですが、一般のユーザーや、より広範な文脈でGoのバイナリを利用する人々にとっては、直感的ではない場合があります。特に「386」は、Intel 80386プロセッサに由来する古い名称であり、現代の32ビットx86アーキテクチャ全般を指すにはやや不適切です。同様に「amd64」も、AMDが開発した64ビット拡張命令セットの名称ですが、Intelの64ビットプロセッサ(Intel 64)も同じ命令セットを実装しており、より一般的な「x86-64」や「64-bit x86」という表現が望ましいとされています。

この変更の背景には、Go言語の利用者を拡大し、より多くの人々にとってGoのバイナリが理解しやすく、使いやすいものにするという意図があります。明確なラベル付けは、ユーザーが適切なバイナリを選択する際の混乱を減らし、全体的なユーザーエクスペリエンスを向上させます。

前提知識の解説

  • CPUアーキテクチャ: コンピュータのプロセッサ(CPU)がどのように命令を実行し、データを処理するかを定義する設計思想です。異なるアーキテクチャは、異なる命令セット、レジスタの構成、メモリ管理方式などを持っています。
  • x86: Intelが開発した命令セットアーキテクチャのファミリーです。初期の16ビットプロセッサから始まり、32ビット(IA-32)、そして64ビット(x86-64)へと進化してきました。
  • 386 (i386): Intel 80386プロセッサに由来する名称で、一般的に32ビットのx86アーキテクチャを指します。現代の多くの32ビットWindowsやLinuxシステムはこのアーキテクチャに基づいています。
  • amd64 (x86-64): AMDが開発し、後にIntelも採用した64ビットのx86命令セットアーキテクチャです。これにより、プロセッサはより大きなメモリ空間を直接アドレス指定できるようになり、より大規模なデータ処理や高性能なアプリケーションが可能になりました。現在、ほとんどのデスクトップPCやサーバーはこのアーキテクチャを採用しています。
  • Go言語のクロスコンパイル: Go言語は、異なるオペレーティングシステムやCPUアーキテクチャ向けにバイナリをコンパイルする機能(クロスコンパイル)を強力にサポートしています。GOOS(ターゲットOS)とGOARCH(ターゲットアーキテクチャ)という環境変数を設定することで、簡単に異なるプラットフォーム向けの実行ファイルを生成できます。
  • misc/dist: Go言語のソースコードリポジトリ内のディレクトリで、Goのディストリビューション(配布物)を構築するためのツールやスクリプトが含まれています。これには、公式のGoバイナリリリースを作成するためのロジックが含まれることがあります。

技術的詳細

この変更は、Go言語のディストリビューションツールの一部である misc/dist/bindist.go ファイル内のロジックに影響を与えます。このファイルは、Goのバイナリ配布物を準備する際に、アーキテクチャに応じた適切なラベルを生成する役割を担っていると考えられます。

変更前は、b.Arch の値が "386" の場合は arch 変数を "32-bit" に、"amd64" の場合は "64-bit" に設定していました。このコミットでは、これらの値をそれぞれ "x86 32-bit""x86 64-bit" に変更しています。

これは、単なる文字列の変更であり、コンパイルされるバイナリの機能や互換性に影響を与えるものではありません。しかし、生成されるファイル名や、Goのダウンロードページなどで表示されるアーキテクチャの記述が、より正確で分かりやすいものになります。

例えば、Goの公式ダウンロードページで提供されるバイナリパッケージのファイル名が、変更前は go1.x.y.linux-amd64.tar.gz のようにアーキテクチャが直接含まれていた場合、この変更によって、ユーザーインターフェース上での表示や、関連するドキュメントでの説明がより明確になる可能性があります。

コアとなるコードの変更箇所

変更は misc/dist/bindist.go ファイルの以下の部分です。

--- a/misc/dist/bindist.go
+++ b/misc/dist/bindist.go
@@ -394,9 +394,9 @@ func (b *Build) Upload(version string, filename string) error {
 	os_, arch := b.OS, b.Arch
 	switch b.Arch {
 	case "386":
-		arch = "32-bit"
+		arch = "x86 32-bit"
 	case "amd64":
-		arch = "64-bit"
+		arch = "x86 64-bit"
 	}
 	if arch != "" {
 		labels = append(labels, "Arch-"+b.Arch)

コアとなるコードの解説

このコードスニペットは、bindist.go ファイル内の Upload メソッドの一部であると推測されます。このメソッドは、Goのビルド済みバイナリをアップロードする際に、そのバイナリに関連するメタデータやラベルを生成するロジックを含んでいると考えられます。

  • os_, arch := b.OS, b.Arch: bBuild 構造体のインスタンスであり、現在のビルドのオペレーティングシステム (b.OS) とアーキテクチャ (b.Arch) の情報を保持しています。これらの値がローカル変数 os_arch にコピーされます。
  • switch b.Arch: b.Arch の値に基づいて条件分岐を行います。
    • case "386": もしビルドのアーキテクチャが "386" であれば、arch 変数の値を "x86 32-bit" に上書きします。変更前は "32-bit" でした。
    • case "amd64": もしビルドのアーキテクチャが "amd64" であれば、arch 変数の値を "x86 64-bit" に上書きします。変更前は "64-bit" でした。
  • if arch != "" { labels = append(labels, "Arch-"+b.Arch) }: arch 変数が空でなければ、labels スライスに "Arch-" と元の b.Arch の値を結合した文字列を追加します。この labels は、おそらく生成されるバイナリパッケージのメタデータや、ウェブサイト上での表示に使用されるタグの一部となるでしょう。

この変更により、arch 変数に設定される文字列がより詳細になり、ユーザーがアーキテクチャを識別しやすくなります。例えば、Goのダウンロードページで「Linux 32-bit x86」や「Windows 64-bit x86」といった表示が可能になります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • コミットハッシュ: 0f775d6b769496296e95ce19ae5f4062bc0e5aed
  • Go CL 5986043: https://golang.org/cl/5986043 (GoのコードレビューシステムGerritのリンク)
  • x86アーキテクチャに関する一般的な知識 (Wikipediaなど)
  • Go言語のクロスコンパイルに関するドキュメント (Go公式ドキュメントなど)