[インデックス 13745] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の公式ドキュメントの一部である doc/articles/concurrency_patterns.html
ファイルに対する修正です。具体的には、並行処理に関する記事内のタイポ(誤字)を修正しています。
コミット
commit d353d43d36003614ab192754c6e77a950b20fc00
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date: Tue Sep 4 15:28:09 2012 +1000
doc: fix typo in Concurrency Patterns article
Fixes #3178.
R=golang-dev, iant
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6506064
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/d353d43d36003614ab192754c6e77a950b20fc00
元コミット内容
doc: fix typo in Concurrency Patterns article
このコミットは、Go言語の並行処理パターンに関する記事におけるタイポを修正するものです。
変更の背景
このコミットの背景は、Go言語の公式ドキュメントである「Go Concurrency Patterns」記事内の記述の正確性を向上させることにあります。このドキュメントは、Go言語の重要な特徴である並行処理の概念と、それを効果的に利用するためのパターンについて解説しています。
記事内で「race condition(競合状態)」について説明している箇所に「a textbook of example」という誤った表現がありました。これは文法的に不自然であり、読者にとって理解の妨げとなる可能性があります。このタイポを「a textbook example」に修正することで、文章の自然さと正確性を高め、読者がよりスムーズに内容を理解できるようにすることが目的です。
この修正は、Issue #3178として報告された問題に対応しています。公式ドキュメントの品質維持は、ユーザーがGo言語を学習し、効果的に使用するために非常に重要であり、このような小さなタイポの修正もその一環として行われます。
前提知識の解説
Go言語の並行処理 (Concurrency in Go)
Go言語は、並行処理を言語レベルで強力にサポートしていることで知られています。その中心となるのが以下の2つの概念です。
- Goroutine (ゴルーチン): Go言語における軽量なスレッドのようなものです。OSのスレッドよりもはるかに少ないメモリで動作し、数千、数万といった多数のゴルーチンを同時に実行することが可能です。ゴルーチンは
go
キーワードを使って簡単に起動できます。 - Channel (チャネル): ゴルーチン間で安全にデータをやり取りするための通信メカニズムです。チャネルを通じてデータを送受信することで、共有メモリを直接操作することなく、ゴルーチン間の同期と通信を実現します。Goの並行処理の哲学は「共有メモリを通信によって共有するのではなく、通信によってメモリを共有する」というものであり、チャネルはその哲学を具現化する主要な手段です。
競合状態 (Race Condition)
競合状態とは、複数の並行に実行されるプロセスやスレッド(Go言語ではゴルーチン)が、共有リソース(変数、データ構造など)に同時にアクセスし、少なくとも1つのアクセスが書き込み操作である場合に発生する問題です。このとき、共有リソースの最終的な状態が、アクセスが行われる非決定的な順序に依存してしまうため、プログラムの動作が予測不能になったり、誤った結果を生成したりする可能性があります。
競合状態の発生メカニズムの例: 複数のゴルーチンが共有のカウンタ変数をインクリメントするシナリオを考えます。
- ゴルーチンAがカウンタの現在の値(例: 10)を読み込む。
- ゴルーチンBがカウンタの現在の値(例: 10、Aがまだ書き込んでいないため)を読み込む。
- ゴルーチンAが自身のローカルコピーを11にインクリメントし、カウンタに11を書き戻す。
- ゴルーチンBが自身のローカルコピーを11にインクリメントし、カウンタに11を書き戻す。
この場合、2回のインクリメントが行われたにもかかわらず、カウンタは1しか増加せず、誤った値(11)になってしまいます。
Goにおける競合状態の検出と防止:
Goには、競合状態を検出するための組み込みのデータ競合検出器があります。go test -race ./...
や go run -race main.go
のように -race
フラグを付けてテストやアプリケーションを実行することで、実行時に競合状態を検出し、詳細なレポートを提供してくれます。
競合状態を防止するための一般的な戦略には以下のようなものがあります。
- Mutex (ミューテックス):
sync.Mutex
やsync.RWMutex
を使用して、共有リソースへの排他的アクセスを保証します。 - Channel (チャネル): データをチャネル経由でやり取りすることで、共有メモリへの直接アクセスを避け、通信による同期を実現します。
- Atomic Operations (アトミック操作):
sync/atomic
パッケージを使用して、プリミティブ型に対する低レベルなアトミック操作(不可分な操作)を実行し、競合状態を防ぎます。
Go Concurrency Patterns記事
「Go Concurrency Patterns」は、Go言語の公式ブログで公開されている非常に有名な記事であり、Goの並行処理の設計原則と実践的なパターンについて深く掘り下げて解説しています。この記事は、Go言語の並行処理の強力さを理解し、それを効果的に活用するための基礎となる知識を提供しています。チャネルの利用、ファンアウト/ファンイン、パイプラインなどの一般的な並行処理パターンが紹介されており、Goプログラマーにとって必読のドキュメントの一つです。
技術的詳細
このコミットは、Go言語のドキュメントファイル doc/articles/concurrency_patterns.html
内のテキストコンテンツに対する修正です。技術的な変更は、HTMLタグやGo言語のコードロジックには一切影響を与えません。
変更内容は、以下の1行の修正のみです。
--- a/doc/articles/concurrency_patterns.html
+++ b/doc/articles/concurrency_patterns.html
@@ -64,7 +64,7 @@ could fail since no one is ready.
</p>
<p>
-This problem is a textbook of example of what is known as a
+This problem is a textbook example of what is known as a
<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/Race_condition">race condition</a>, but
the fix is trivial. We just make sure to buffer the channel <code>ch</code> (by
adding the buffer length as the second argument to <a href="/pkg/builtin/#make">make</a>),
具体的には、<p>
タグ内の文章「This problem is a textbook of example of what is known as a」において、「of」という余分な単語を削除し、「This problem is a textbook example of what is known as a」と修正しています。
この修正は、英語の慣用表現「a textbook example」(典型的な例、模範的な例)に合致させるためのものです。これにより、文章の文法的な正確性が向上し、読者が内容をより自然に、かつ正確に理解できるようになります。ドキュメントの品質向上に貢献する、小さなながらも重要な修正と言えます。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/doc/articles/concurrency_patterns.html
+++ b/doc/articles/concurrency_patterns.html
@@ -64,7 +64,7 @@ could fail since no one is ready.
</p>
<p>
-This problem is a textbook of example of what is known as a
+This problem is a textbook example of what is known as a
<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/Race_condition">race condition</a>, but
the fix is trivial. We just make sure to buffer the channel <code>ch</code> (by
adding the buffer length as the second argument to <a href="/pkg/builtin/#make">make</a>),
コアとなるコードの解説
変更された行は、Go Concurrency Patternsの記事内で「競合状態(race condition)」について説明している段落の一部です。
元の行:
This problem is a textbook of example of what is known as a
修正後の行:
This problem is a textbook example of what is known as a
この修正は、英語の慣用句「a textbook example」に合わせるためのものです。「textbook example」とは、「教科書に出てくるような典型的な例」や「模範的な例」といった意味合いで使われます。元の「textbook of example」は文法的に誤っており、不自然な表現でした。
このタイポ修正により、文章がより自然で正確な英語表現になり、読者が競合状態の概念をよりスムーズに理解できるようになります。ドキュメントの可読性と品質を向上させるための、シンプルながらも効果的な修正です。
関連リンク
- Go Concurrency Patterns (公式記事): https://go.dev/blog/concurrency-patterns (このコミットで修正された記事の最新版)
- Go言語における競合状態 (Race Condition) についてのGo公式ドキュメント: https://go.dev/doc/articles/race_detector
- Wikipedia: Race condition (競合状態): https://en.wikipedia.org/wiki/Race_condition
参考にした情報源リンク
- Go Concurrency Patterns article: https://go.dev/blog/concurrency-patterns
- Go Race Detector: https://go.dev/doc/articles/race_detector
- Web search results for "Go Concurrency Patterns article"
- Web search results for "Race condition Go"
- GitHub commit: d353d43d36003614ab192754c6e77a950b20fc00
- Issue 3178: https://go.dev/issue/3178 (コミットメッセージに記載されているFixes #3178)