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[インデックス 14817] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ os パッケージにおける Exit 関数のドキュメントを更新するものです。具体的には、Exit 関数が呼び出された際に、defer ステートメントで登録された関数が実行されないことを明記する変更が加えられています。

コミット

commit 0f64a6ef8db6a025fe2bb3d1756d312e9ea7d702
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date:   Mon Jan 7 14:46:41 2013 +1100

    os: document that Exit does not run deferred calls
    
    Fixes #4101.
    
    R=dsymonds, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7065048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/0f64a6ef8db6a025fe2bb3d1756d312e9ea7d702

元コミット内容

os: document that Exit does not run deferred calls

Fixes #4101.

変更の背景

この変更は、Go言語の os.Exit 関数の挙動に関する誤解や混乱を解消するために行われました。Go言語には defer という非常に便利な機能があり、関数がリターンする直前やパニックが発生した際に、特定の処理(リソースの解放、ログの出力など)を実行することを保証します。しかし、os.Exit 関数はプログラムを即座に終了させるため、通常の関数の終了とは異なり、defer された関数は実行されません。

この挙動は、特にC言語の exit() 関数に慣れているプログラマにとっては直感的ではない場合があります。C言語の exit() は、登録された atexit() ハンドラを実行しますが、Goの os.Exit はこれとは異なる設計思想に基づいています。

コミットメッセージにある Fixes #4101 は、この変更がGitHubのGoリポジトリで報告されたイシュー4101番を解決するものであることを示しています。このイシューでは、os.Exitdefer を実行しないことについて、ドキュメントに明記されていないために混乱が生じていることが指摘されていました。このドキュメントの追加は、このような混乱を防ぎ、開発者が os.Exit をより安全かつ意図通りに使用できるようにすることを目的としています。

前提知識の解説

Go言語の defer ステートメント

defer ステートメントは、Go言語のユニークな機能の一つで、関数が実行を終了する直前(returnする前、またはパニックが発生して関数が終了する前)に、指定された関数呼び出しを延期して実行することを保証します。これは、ファイルやネットワーク接続などのリソースのクリーンアップ、ロックの解放、ログの記録など、関数がどのように終了しても必ず実行したい処理に非常に役立ちます。

例:

func readFile(filename string) {
    f, err := os.Open(filename)
    if err != nil {
        log.Fatal(err)
    }
    defer f.Close() // 関数終了時に必ずファイルを閉じる

    // ファイルの読み込み処理
}

os.Exit 関数

os.Exit 関数は、Goプログラムを直ちに終了させるために使用されます。引数として整数型の終了コード(ステータスコード)を受け取ります。慣例として、0は成功を、非ゼロはエラーを示します。この関数は、プログラムの実行フローを中断し、オペレーティングシステムに制御を戻します。

syscall.Exit

os.Exit 関数の内部では、syscall.Exit が呼び出されています。syscall パッケージは、低レベルのオペレーティングシステムプリミティブへのインターフェースを提供します。syscall.Exit は、Goランタイムの通常のシャットダウンプロセスをバイパスし、直接システムコールを介してプログラムを終了させます。この直接的な終了が、defer された関数の実行をスキップする主な理由です。

技術的詳細

Go言語のプログラムが正常に終了する場合、またはパニックによって終了する場合、Goランタイムはスタックをアンワインドし、その過程で defer された関数をLIFO(Last-In, First-Out)順に実行します。これは、リソースの適切な解放やクリーンアップを保証するために不可欠なメカニズムです。

しかし、os.Exit 関数は、この通常のシャットダウンシーケンスを意図的にバイパスします。os.Exit の実装は、最終的に syscall.Exit を呼び出します。syscall.Exit は、Goランタイムのクリーンアップ処理(defer の実行を含む)を待たずに、直接オペレーティングシステムに終了を要求するシステムコールを発行します。これにより、プログラムは即座に終了し、defer された関数が実行される機会が失われます。

この挙動は、例えば、プログラムが致命的なエラーに遭遇し、これ以上処理を続行することが安全でない場合など、迅速な終了が必要なシナリオで役立ちます。しかし、開発者はこの挙動を理解し、os.Exit を使用する際には、defer に依存するクリーンアップ処理が実行されないことを考慮に入れる必要があります。例えば、ファイルへの書き込みがバッファリングされている場合、os.Exit の前に Flush を呼び出す必要があるかもしれません。

このコミットは、この重要な挙動を os.Exit のドキュメントに明示的に追加することで、開発者がこの関数の特性を正確に理解し、予期せぬ動作を避けることを支援します。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/os/proc.go ファイルの Exit 関数のコメントに2行が追加されました。

--- a/src/pkg/os/proc.go
+++ b/src/pkg/os/proc.go
@@ -31,4 +31,6 @@ func Getgroups() ([]int, error) {
 
 // Exit causes the current program to exit with the given status code.
 // Conventionally, code zero indicates success, non-zero an error.
+// The program terminates immediately; deferred functions are
+// not run.
 func Exit(code int) { syscall.Exit(code) }

コアとなるコードの解説

変更は os/proc.go ファイル内の Exit 関数のドキュメンテーションコメントに限定されています。

元のコメントは以下の通りでした。

// Exit causes the current program to exit with the given status code.
// Conventionally, code zero indicates success, non-zero an error.
func Exit(code int) { syscall.Exit(code) }

このコミットによって、以下の2行が追加されました。

// The program terminates immediately; deferred functions are
// not run.

これにより、Exit 関数のドキュメントは以下のようになります。

// Exit causes the current program to exit with the given status code.
// Conventionally, code zero indicates success, non-zero an error.
// The program terminates immediately; deferred functions are
// not run.
func Exit(code int) { syscall.Exit(code) }

この変更は、Exit 関数の機能自体を変更するものではなく、その挙動に関する重要な情報をドキュメントに追加することで、APIの明確性を向上させています。特に、「プログラムは即座に終了し、defer された関数は実行されない」という点が明記されたことで、開発者が os.Exit を使用する際の誤解を防ぎ、より堅牢なプログラムを作成するのに役立ちます。

関連リンク

  • Go言語の defer ステートメントに関する公式ドキュメントやチュートリアル
  • Go言語の os パッケージに関する公式ドキュメント
  • Go言語の syscall パッケージに関する公式ドキュメント
  • Go言語のイシュー追跡システムにおけるイシュー #4101

参考にした情報源リンク

# [インデックス 14817] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ `os` パッケージにおける `Exit` 関数のドキュメントを更新するものです。具体的には、`Exit` 関数が呼び出された際に、`defer` ステートメントで登録された関数が実行されないことを明記する変更が加えられています。

## コミット

commit 0f64a6ef8db6a025fe2bb3d1756d312e9ea7d702 Author: Andrew Gerrand adg@golang.org Date: Mon Jan 7 14:46:41 2013 +1100

os: document that Exit does not run deferred calls

Fixes #4101.

R=dsymonds, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7065048

## GitHub上でのコミットページへのリンク

[https://github.com/golang/go/commit/0f64a6ef8db6a025fe2bb3d1756d312e9ea7d702](https://github.com/golang/go/commit/0f64a6ef8db6a025fe2bb3d1756d312e9ea7d702)

## 元コミット内容

os: document that Exit does not run deferred calls

Fixes #4101.


## 変更の背景

この変更は、Go言語の `os.Exit` 関数の挙動に関する誤解や混乱を解消するために行われました。Go言語には `defer` という非常に便利な機能があり、関数がリターンする直前やパニックが発生した際に、特定の処理(リソースの解放、ログの出力など)を実行することを保証します。しかし、`os.Exit` 関数はプログラムを即座に終了させるため、通常の関数の終了とは異なり、`defer` された関数は実行されません。

この挙動は、特にC言語の `exit()` 関数に慣れているプログラマにとっては直感的ではない場合があります。C言語の `exit()` は、登録された `atexit()` ハンドラを実行しますが、Goの `os.Exit` はこれとは異なる設計思想に基づいています。

コミットメッセージにある `Fixes #4101` は、この変更がGitHubのGoリポジトリで報告されたイシュー4101番を解決するものであることを示しています。このイシューでは、`os.Exit` が `defer` を実行しないことについて、ドキュメントに明記されていないために混乱が生じていることが指摘されていました。このドキュメントの追加は、このような混乱を防ぎ、開発者が `os.Exit` をより安全かつ意図通りに使用できるようにすることを目的としています。

## 前提知識の解説

### Go言語の `defer` ステートメント

`defer` ステートメントは、Go言語のユニークな機能の一つで、関数が実行を終了する直前(returnする前、またはパニックが発生して関数が終了する前)に、指定された関数呼び出しを延期して実行することを保証します。これは、ファイルやネットワーク接続などのリソースのクリーンアップ、ロックの解放、ログの記録など、関数がどのように終了しても必ず実行したい処理に非常に役立ちます。

例:
```go
func readFile(filename string) {
    f, err := os.Open(filename)
    if err != nil {
        log.Fatal(err)
    }
    defer f.Close() // 関数終了時に必ずファイルを閉じる

    // ファイルの読み込み処理
}

os.Exit 関数

os.Exit 関数は、Goプログラムを直ちに終了させるために使用されます。引数として整数型の終了コード(ステータスコード)を受け取ります。慣例として、0は成功を、非ゼロはエラーを示します。この関数は、プログラムの実行フローを中断し、オペレーティングシステムに制御を戻します。

syscall.Exit

os.Exit 関数の内部では、syscall.Exit が呼び出されています。syscall パッケージは、低レベルのオペレーティングシステムプリミティブへのインターフェースを提供します。syscall.Exit は、Goランタイムの通常のシャットダウンプロセスをバイパスし、直接システムコールを介してプログラムを終了させます。この直接的な終了が、defer された関数の実行をスキップする主な理由です。

技術的詳細

Go言語のプログラムが正常に終了する場合、またはパニックによって終了する場合、Goランタイムはスタックをアンワインドし、その過程で defer された関数をLIFO(Last-In, First-Out)順に実行します。これは、リソースの適切な解放やクリーンアップを保証するために不可欠なメカニズムです。

しかし、os.Exit 関数は、この通常のシャットダウンシーケンスを意図的にバイパスします。os.Exit の実装は、最終的に syscall.Exit を呼び出します。syscall.Exit は、Goランタイムのクリーンアップ処理(defer の実行を含む)を待たずに、直接オペレーティングシステムに終了を要求するシステムコールを発行します。これにより、プログラムは即座に終了し、defer された関数が実行される機会が失われます。

この挙動は、例えば、プログラムが致命的なエラーに遭遇し、これ以上処理を続行することが安全でない場合など、迅速な終了が必要なシナリオで役立ちます。しかし、開発者はこの挙動を理解し、os.Exit を使用する際には、defer に依存するクリーンアップ処理が実行されないことを考慮に入れる必要があります。例えば、ファイルへの書き込みがバッファリングされている場合、os.Exit の前に Flush を呼び出す必要があるかもしれません。

このコミットは、この重要な挙動を os.Exit のドキュメントに明示的に追加することで、開発者がこの関数の特性を正確に理解し、予期せぬ動作を避けることを支援します。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/os/proc.go ファイルの Exit 関数のコメントに2行が追加されました。

--- a/src/pkg/os/proc.go
+++ b/src/pkg/os/proc.go
@@ -31,4 +31,6 @@ func Getgroups() ([]int, error) {
 
 // Exit causes the current program to exit with the given status code.
 // Conventionally, code zero indicates success, non-zero an error.
+// The program terminates immediately; deferred functions are
+// not run.
 func Exit(code int) { syscall.Exit(code) }

コアとなるコードの解説

変更は os/proc.go ファイル内の Exit 関数のドキュメンテーションコメントに限定されています。

元のコメントは以下の通りでした。

// Exit causes the current program to exit with the given status code.
// Conventionally, code zero indicates success, non-zero an error.
func Exit(code int) { syscall.Exit(code) }

このコミットによって、以下の2行が追加されました。

// The program terminates immediately; deferred functions are
// not run.

これにより、Exit 関数のドキュメントは以下のようになります。

// Exit causes the current program to exit with the given status code.
// Conventionally, code zero indicates success, non-zero an error.
// The program terminates immediately; deferred functions are
// not run.
func Exit(code int) { syscall.Exit(code) }

この変更は、Exit 関数の機能自体を変更するものではなく、その挙動に関する重要な情報をドキュメントに追加することで、APIの明確性を向上させています。特に、「プログラムは即座に終了し、defer された関数は実行されない」という点が明記されたことで、開発者が os.Exit を使用する際の誤解を防ぎ、より堅牢なプログラムを作成するのに役立ちます。

関連リンク

  • Go言語の defer ステートメントに関する公式ドキュメントやチュートリアル
  • Go言語の os パッケージに関する公式ドキュメント
  • Go言語の syscall パッケージに関する公式ドキュメント
  • Go言語のイシュー追跡システムにおけるイシュー #4101

参考にした情報源リンク