Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 15294] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のVimプラグインのインストール手順を更新し、特定のLinuxディストリビューションでの動作を改善することを目的としています。具体的には、Vimの設定ファイルであるvimrcにおけるfiletype関連のコマンドの順序を調整することで、Go言語のファイルタイプ検出が正しく行われるように修正しています。

コミット

commit 8ecc4cb41eaf48581ca1bef3cbb9edf9e477e2ab
Author: David Symonds <dsymonds@golang.org>
Date:   Mon Feb 18 14:03:47 2013 +1100

    misc/vim: update installation instructions to work better with some Linux distributions.
    
    Fixes #3308.
    
    R=golang-dev, minux.ma
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7301086

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/8ecc4cb41eaf48581ca1bef3cbb9edf9e477e2ab

元コミット内容

misc/vim: update installation instructions to work better with some Linux distributions.

Fixes #3308.

R=golang-dev, minux.ma
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7301086

変更の背景

この変更の背景には、VimエディタのGo言語用プラグインを特定のLinuxディストリビューションで使用する際に発生していた問題があります。Vimは、開いているファイルの種類(ファイルタイプ)を自動的に検出し、それに基づいて適切なシンタックスハイライトやインデント設定を適用します。この機能はfiletypeオプションによって制御されます。

多くのLinuxディストリビューションでは、システム全体の設定ファイル(例: /etc/vimrc)でVimの基本的な設定が行われています。この中には、filetype onのようなコマンドが含まれていることがあり、Vimの起動時にファイルタイプ検出が有効になります。

しかし、Go言語のVimプラグインは、$GOROOT/misc/vimパスをVimのruntimepathrtp)に追加することでロードされます。もしシステム全体のvimrcfiletypeが有効になった時点で、まだGo言語のプラグインがruntimepathに追加されていない場合、VimはGo言語のファイルを正しく認識できません。その結果、Go言語のシンタックスハイライトやインデントが適用されず、開発体験が損なわれるという問題が発生していました。

このコミットは、この問題を解決するために、ユーザーのvimrc(通常は$HOME/.vimrc)に記述するGoプラグインのインストール手順を修正し、runtimepathにGoプラグインのパスを追加する前に、一時的にfiletype関連のオプションを無効にするステップを追加しています。これにより、Goプラグインがロードされた後にfiletypeが再評価され、Go言語のファイルが正しく認識されるようになります。

コミットメッセージにあるFixes #3308は、Goプロジェクトの当時の課題追跡システム(issue tracker)で報告されていた、この問題に対応するものです。

前提知識の解説

Vim

Vim(Vi IMproved)は、Unix系のシステムで広く使われている高機能なテキストエディタです。キーボード操作のみで効率的なテキスト編集が可能であり、プログラマーに特に人気があります。プラグインシステムが充実しており、様々な言語やフレームワークに対応した機能を追加できます。

vimrc

vimrcはVimの設定ファイルです。Vimの動作や外観、キーバインディング、プラグインのロードなどをカスタマイズするために使用されます。

  • $HOME/.vimrc: ユーザー固有の設定ファイルです。Vimが起動する際に、まずシステム全体の設定が読み込まれた後、このファイルが読み込まれます。
  • /etc/vimrc (またはそれに類するパス): システム全体に適用されるVimの設定ファイルです。Linuxディストリビューションによっては、このファイルで基本的なVimの動作が設定されています。

runtimepath (rtp)

runtimepathはVimがプラグイン、ドキュメント、シンタックスファイルなどを検索するディレクトリのリストを定義するオプションです。Vimは、このリストに指定されたパスを順番に検索し、必要なファイルをロードします。set rtp+=/path/to/pluginのように記述することで、新しいパスをリストに追加できます。

filetype

filetypeはVimの重要なオプションの一つで、開いているファイルのタイプ(例: go, python, htmlなど)を自動的に検出する機能に関連します。

  • filetype on: ファイルタイプ検出を有効にします。
  • filetype plugin on: ファイルタイプに基づいてプラグインをロードする機能を有効にします。これにより、特定のファイルタイプに特化した機能が提供されます。
  • filetype indent on: ファイルタイプに基づいてインデント設定を適用する機能を有効にします。 これらのオプションは、通常、vimrcファイルで設定されます。

$GOROOT

$GOROOTはGo言語のインストールディレクトリを指す環境変数です。Goのツールチェインや標準ライブラリなどがこのディレクトリに配置されています。Go言語のVimプラグインは、通常$GOROOT/misc/vimに格納されています。

Go Vim plugins

Go言語のVimプラグインは、Goコードの記述を支援するための機能を提供します。これには、Go言語のシンタックスハイライト、適切なインデント、go fmtによるコードフォーマット、goimportsによるインポートの自動整理、定義へのジャンプなどが含まれます。

LinuxディストリビューションのVim設定

多くのLinuxディストリビューションでは、Vimがシステムにインストールされる際に、/etc/vimrc/usr/share/vim/vimrcのようなシステム全体の設定ファイルが配置されます。これらのファイルは、Vimの基本的な動作や、一般的なファイルタイプに対する設定を定義しています。問題は、これらのシステム設定が、ユーザーが追加するプラグインのロード順序と競合する場合に発生します。

Go Issue Tracker

#3308は、Go言語プロジェクトの課題追跡システム(issue tracker)における特定の課題番号を指します。Goプロジェクトは、バグ報告、機能要望、議論などを管理するために、GitHubのIssuesや以前はGoogle Codeなどのプラットフォームを利用していました。この番号は、Vimプラグインのインストールに関する特定のバグや改善提案が報告されていたことを示しています。

技術的詳細

このコミットが解決しようとしている技術的な問題は、Vimのfiletype検出メカニズムとruntimepathのロード順序の間の競合です。

  1. Vimの起動とシステム設定の読み込み: Vimが起動すると、まずシステム全体の設定ファイル(例: /etc/vimrc)が読み込まれます。このファイル内でfiletype onfiletype plugin indent onが設定されていると、Vimはすぐにファイルタイプ検出を開始します。
  2. Goプラグインのロード: Go言語のVimプラグインは、ユーザーのvimrcset rtp+=$GOROOT/misc/vimと記述することで、runtimepathに追加され、ロードされます。
  3. 競合の発生: もしシステム設定でfiletypeが有効になった時点で、まだ$GOROOT/misc/vimruntimepathに追加されていない場合、VimはGo言語のファイルを一般的なテキストファイルとして扱ってしまう可能性があります。一度ファイルタイプが決定されると、後からruntimepathにGoプラグインが追加されても、Vimは自動的にファイルタイプを再評価しないため、Go言語特有のシンタックスハイライトやインデントが適用されません。
  4. 解決策: このコミットで導入された解決策は、ユーザーのvimrcでGoプラグインのパスをruntimepathに追加する前に、一時的にfiletype offfiletype plugin indent offを実行することです。
    • filetype off: 現在有効になっているファイルタイプ検出を無効にします。
    • filetype plugin indent off: ファイルタイプに基づくプラグインロードとインデント設定も無効にします。 これにより、Vimは一時的にファイルタイプ検出を停止します。 その後、set runtimepath+=$GOROOT/misc/vimを実行してGoプラグインのパスをruntimepathに追加します。 最後に、filetype plugin indent onsyntax onを再度実行することで、VimはGoプラグインがロードされた新しいruntimepathの情報を考慮して、ファイルタイプ検出と関連機能を再評価します。これにより、Go言語のファイルが正しく認識され、適切なシンタックスハイライトやインデントが適用されるようになります。

このアプローチは、Vimのロード順序の特性を理解し、システム設定とユーザー設定の間の潜在的な競合を回避するための標準的なプラクティスです。

コアとなるコードの変更箇所

変更はmisc/vim/readme.txtファイルに対して行われました。

--- a/misc/vim/readme.txt
+++ b/misc/vim/readme.txt
@@ -1,9 +1,13 @@
 Vim plugins for Go (http://golang.org)
 ======================================
 
-To use all the Vim plugins, add these lines to your vimrc.
+To use all the Vim plugins, add these lines to your $HOME/.vimrc.
 
-  set rtp+=$GOROOT/misc/vim
+  " Some Linux distributions set filetype in /etc/vimrc.
+  " Clear filetype flags before changing runtimepath to force Vim to reload them.
+  filetype off
+  filetype plugin indent off
+  set runtimepath+=$GOROOT/misc/vim
   filetype plugin indent on
   syntax on
 

コアとなるコードの解説

変更されたreadme.txtは、Go言語のVimプラグインをインストールするための手順を説明しています。

  1. - To use all the Vim plugins, add these lines to your vimrc. + To use all the Vim plugins, add these lines to your $HOME/.vimrc.

    • 変更前は単にvimrcと書かれていましたが、変更後は$HOME/.vimrcと明示的にユーザーのホームディレクトリにある設定ファイルを指すようになりました。これは、ユーザーが設定を記述すべき場所をより明確にするためです。
  2. 新しい行の追加:

      " Some Linux distributions set filetype in /etc/vimrc.
      " Clear filetype flags before changing runtimepath to force Vim to reload them.
      filetype off
      filetype plugin indent off
    
    • これはこのコミットの最も重要な変更点です。
    • 最初の2行はコメントで、なぜこれらのコマンドが必要なのかを説明しています。「一部のLinuxディストリビューションでは/etc/vimrcfiletypeが設定されているため、runtimepathを変更する前にfiletypeフラグをクリアしてVimに再ロードを強制する」という意図が示されています。
    • filetype off: 現在有効になっているファイルタイプ検出を一時的に無効にします。
    • filetype plugin indent off: ファイルタイプに基づくプラグインロードとインデント設定も一時的に無効にします。
    • これらのコマンドは、set runtimepath+=$GOROOT/misc/vimの前に実行されます。これにより、Goプラグインのパスがruntimepathに追加される前に、Vimが誤ったファイルタイプ検出を行うことを防ぎます。Goプラグインがロードされた後、後続のfiletype plugin indent onsyntax onによって、VimはGoプラグインの情報を考慮してファイルタイプを再評価し、Go言語のシンタックスハイライトとインデントが正しく適用されるようになります。

この変更により、Go言語のVimプラグインが、システム全体のVim設定を持つ様々なLinuxディストリビューション環境でも、より確実に機能するようになりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク