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[インデックス 15533] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ syscall パッケージ内の TestPassFD テストを、OpenBSDオペレーティングシステム上で無効化する変更です。具体的には、runtime.GOOS を使用して現在のOSがOpenBSDであるかを判定し、そうである場合にはテストをスキップするよう修正されています。

コミット

commit 418dd410db78d7f3034464db55440d89a08d9318
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Fri Mar 1 11:51:32 2013 -0500

    syscall: disable TestPassFD on openbsd
    
    Update #4956.
    
    R=golang-dev
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7417048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/418dd410db78d7f3034464db55440d89a08d9318

元コミット内容

src/pkg/syscall/passfd_test.go ファイルに以下の変更が加えられました。

--- a/src/pkg/syscall/passfd_test.go
+++ b/src/pkg/syscall/passfd_test.go
@@ -13,6 +13,7 @@ import (
 	"net"
 	"os"
 	"os/exec"
+	"runtime"
 	"syscall"
 	"testing"
 	"time"
@@ -26,6 +27,9 @@ import (
 // "-test.run=^TestPassFD$" and an environment variable used to signal
 // that the test should become the child process instead.
 func TestPassFD(t *testing.T) {
+	if runtime.GOOS == "openbsd" {
+		t.Skip("issue 4956")
+	}
 	if os.Getenv("GO_WANT_HELPER_PROCESS") == "1" {
 		passFDChild()
 		return

変更の背景

この変更の背景には、TestPassFD テストがOpenBSD環境で正しく動作しない、または予期せぬ振る舞いを示す問題があったと考えられます。コミットメッセージに「Update #4956」とあることから、Goプロジェクトの内部課題追跡システムで管理されていた特定の不具合(issue 4956)に対応するための措置であることが示唆されます。

TestPassFD はファイルディスクリプタの受け渡し("passing file descriptors")に関連するテストであり、これはオペレーティングシステム固有のシステムコール(syscall)に深く依存します。異なるOS間では、ファイルディスクリプタの受け渡しメカニズムや関連するセキュリティポリシー、あるいは特定のシステムコールの実装に差異があることが一般的です。OpenBSDは特にセキュリティに重点を置いたOSであり、他のUnix系OSとは異なる挙動を示すことが多いため、このようなテストの失敗が発生した可能性が高いです。

テストが失敗し続けると、CI/CDパイプラインの健全性が損なわれたり、開発者が誤ったエラーに時間を費やしたりする原因となります。そのため、一時的または恒久的に特定の環境でのテストをスキップすることは、開発プロセスを円滑に進めるための一般的なプラクティスです。このコミットは、OpenBSD上での TestPassFD の問題を解決するのではなく、そのテストを一時的に無効化することで、他のテストや開発の進行を妨げないようにするための対応と見られます。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGo言語およびオペレーティングシステムに関する基本的な知識が必要です。

  • syscall パッケージ: Go言語の syscall パッケージは、オペレーティングシステムの低レベルな機能(システムコール)にアクセスするためのインターフェースを提供します。ファイル操作、プロセス管理、ネットワーク通信など、OSカーネルが提供するプリミティブな機能を利用する際に使用されます。ファイルディスクリプタの受け渡しのようなOS固有の機能は、このパッケージを通じて操作されることが多いです。
  • ファイルディスクリプタ (File Descriptor, FD): Unix系OSにおいて、ファイルやソケット、パイプなどのI/Oリソースを識別するためにカーネルがプロセスに割り当てる非負の整数です。プロセス間でファイルディスクリプタを「受け渡す」ことは、特にソケット通信において、親プロセスが子プロセスに、あるいは異なるプロセス間でオープンされたファイルやソケットの参照を共有する際に用いられる高度なIPC (Inter-Process Communication) 手法です。
  • TestPassFD: このテストは、Go言語の syscall パッケージがファイルディスクリプタの受け渡し機能を正しく実装しているかを確認するためのものです。通常、これはUnixドメインソケットを介して行われます。テストは、親プロセスが子プロセスを起動し、その子プロセスにファイルディスクリプタを渡すというシナリオをシミュレートします。
  • runtime.GOOS: Go言語の runtime パッケージが提供する定数で、Goプログラムが実行されているオペレーティングシステムの名前(例: "linux", "windows", "darwin", "openbsd" など)を文字列で返します。これにより、OSに依存するコードの分岐を簡単に実装できます。
  • testing パッケージ: Go言語の標準テストフレームワークを提供するパッケージです。テスト関数は Test で始まる名前を持ち、*testing.T 型の引数を取ります。
  • t.Skip(reason string): *testing.T 型のメソッドで、テストの実行をスキップするために使用されます。引数 reason は、テストがスキップされた理由を示す文字列です。このメソッドが呼び出されると、現在のテスト関数はそれ以上実行されず、テスト結果には「SKIP」と表示されます。これは、特定の環境や条件でのみ発生する問題がある場合や、まだ実装されていない機能のテストを一時的に無効にする場合などに便利です。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のクロスプラットフォーム開発における課題と、それを解決するための一般的なアプローチを示しています。

  1. OS固有の挙動への対応: Go言語はクロスプラットフォーム対応を強く意識して設計されていますが、低レベルなシステムコールを扱う syscall パッケージのような領域では、OS間の差異を吸収しきれない場合があります。特にファイルディスクリプタの受け渡しは、OSカーネルの実装に深く依存するため、特定のOSで予期せぬ問題が発生することがあります。
  2. 条件付きテストのスキップ: runtime.GOOS を利用してテストを条件付きでスキップする手法は、Go言語のテストにおいて非常に一般的です。これにより、特定の環境でのみ発生するテストの失敗を一時的に回避し、CI/CDパイプラインの健全性を維持することができます。これは、問題の根本的な解決策が見つかるまでの暫定的な措置として、あるいは特定のOSでその機能がサポートされていない場合の対応として用いられます。
  3. テストの健全性: テストが常に失敗する状態は、テストスイート全体の信頼性を低下させます。開発者は失敗するテストを無視するようになり、本当に重要なバグが隠れてしまう可能性があります。そのため、問題が解決するまでテストをスキップすることは、テストスイートの健全性を保つ上で重要なプラクティスです。
  4. Goのビルドタグと runtime パッケージ: Goには、// +build ディレクティブ(Go 1.17以降は //go:build)を使用して、特定のOSやアーキテクチャでのみコンパイルされるファイルを指定するビルドタグの仕組みもあります。しかし、このコミットではテスト関数内で runtime.GOOS をチェックしています。これは、テストファイル自体はすべてのOSでコンパイルされるが、実行時に特定のOSでのみテストをスキップしたい場合に適しています。例えば、テストのセットアップやヘルパー関数は共通で利用しつつ、特定のテストケースのみをOSによって分岐させたい場合に有効です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/syscall/passfd_test.go ファイルの TestPassFD 関数内で行われています。

func TestPassFD(t *testing.T) {
	if runtime.GOOS == "openbsd" {
		t.Skip("issue 4956")
	}
	// ... 既存のテストロジック ...
}

コアとなるコードの解説

追加された3行のコードは、TestPassFD 関数の冒頭に配置されています。

  1. import "runtime": runtime.GOOS を使用するために、runtime パッケージがインポートリストに追加されました。
  2. if runtime.GOOS == "openbsd" { ... }: この条件文は、現在のオペレーティングシステムが "openbsd" であるかどうかをチェックします。
  3. t.Skip("issue 4956"): もし現在のOSがOpenBSDであれば、t.Skip メソッドが呼び出され、テストは直ちにスキップされます。引数として渡された文字列 "issue 4956" は、テストがスキップされた理由としてテスト結果に表示されます。これは、Goプロジェクトの課題追跡システムにおける関連する課題番号を示しています。

この変更により、OpenBSD環境でGoのテストスイートを実行する際、TestPassFD は実行されずにスキップされるようになります。これにより、OpenBSD固有の問題が解決されるまで、テストの失敗が報告されなくなります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

注記: コミットメッセージに記載されている「issue 4956」についてWeb検索を行いましたが、Go言語プロジェクトの公式な課題追跡システム(GitHub Issuesなど)で直接関連する情報を見つけることはできませんでした。これは、非常に古い課題であるためアーカイブされているか、あるいは内部的な課題番号である可能性が考えられます。