[インデックス 15534] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のビルドシステムにおいて、Windows環境でのcgoのテストを無効化する変更を導入しています。具体的には、src/run.bat
ファイルに2行の変更が加えられ、cgo関連のテストがスキップされるようになっています。これは、当時のWindows環境におけるcgoの既知の問題(Issue 4955)に対応するための暫定的な措置です。
コミット
commit 2202663a93bacb1cedf0f807f9b76333ac05e892
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date: Fri Mar 1 11:55:00 2013 -0500
build: disable cgo on windows
Update #4955.
R=golang-dev
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7435049
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/2202663a93bacb1cedf0f807f9b76333ac05e892
元コミット内容
build: disable cgo on windows
Update #4955.
変更の背景
この変更は、Go言語のIssue 4955に対応するために行われました。コミットメッセージに「cgo is broken」と明記されている通り、当時のWindows環境ではcgo(C言語との相互運用機能)が正常に動作しない、あるいは不安定な状態にあったため、ビルドプロセスにおけるcgo関連のテストを一時的に無効化する必要がありました。これにより、Windows上でのGoのビルドがcgoの問題によって妨げられることを防ぎ、開発の継続性を確保することが目的でした。
前提知識の解説
Go言語
Goは、Googleによって開発されたオープンソースのプログラミング言語です。静的型付け、コンパイル型、並行処理のサポート、ガベージコレクションなどの特徴を持ち、シンプルさと効率性を重視しています。システムプログラミング、Webサービス、ネットワークプログラミングなどで広く利用されています。
cgo
cgoは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出したり、C言語のプログラムからGoの関数を呼び出したりするためのGoの機能です。これにより、既存のCライブラリをGoプロジェクトで再利用したり、パフォーマンスが重要な部分をCで記述したりすることが可能になります。cgoを使用するGoプログラムは、Goコンパイラだけでなく、Cコンパイラ(通常はGCCやClangなど)も必要とします。
Windows環境におけるcgoの課題
Windows環境でcgoを使用する場合、いくつかの特有の課題が存在します。
- Cコンパイラの依存性: Windowsには標準でCコンパイラが搭載されていないため、MinGW-w64やMSYS2などのGCC互換コンパイラを別途インストールし、適切にパスを設定する必要があります。
- クロスコンパイルの複雑さ: 異なるアーキテクチャ(例: amd64 Windows上で386向けにビルド)へのクロスコンパイルは、ターゲットアーキテクチャ用のC/C++コンパイラ(例:
mingw-w64
)のセットアップが必要となり、複雑さが増します。 - ビルドエラー: GCCのバージョン、環境変数の設定、リンカの問題などにより、様々なビルドエラーが発生することがあります。シンボルの再定義や
cmd/link
に関する問題が報告されることもあります。 - DLLのクラッシュ: cgoを使用してビルドされたGoのDLLがWindows上でクラッシュする事例も報告されています。
- ビルドのステートフルネス: cgoを含むクロスコンパイルでは、ビルドの順序や特定の環境変数(
CC_FOR_TARGET
、CXX_FOR_TARGET
など)の設定が結果に影響を与える「ステートフルネス」な挙動を示すことがあります。
これらの課題は、当時のGoのビルドシステムにおいて、Windows環境でのcgoテストの安定性を損なう要因となっていました。
技術的詳細
このコミットは、Goのビルドスクリプトであるsrc/run.bat
に修正を加えることで、Windows環境でのcgoテストを無効化しています。run.bat
は、Goのテストスイートを実行するためのバッチファイルであり、様々なテストカテゴリを順次実行します。
変更の核心は、cgoテストのセクションの冒頭にgoto nocgo
という行を追加したことです。これは、バッチスクリプトの制御フローを変更するコマンドです。goto
コマンドは、指定されたラベル(この場合はnocgo
)に処理をジャンプさせます。これにより、if x%CGO_ENABLED% == x0 goto nocgo
という既存の条件分岐よりも前に無条件でcgoテストセクションをスキップするようになります。
また、:: issue 4955 - cgo is broken
というコメントが追加されており、この変更がIssue 4955に関連するものであり、cgoが当時Windowsで問題があったことを明確に示しています。
このアプローチは、問題が解決されるまでの間、Windows上でのGoのビルドプロセスがcgoの不安定性に影響されないようにするための、シンプルかつ効果的な回避策でした。
コアとなるコードの変更箇所
src/run.bat
ファイルに以下の2行が追加されました。
--- a/src/run.bat
+++ b/src/run.bat
@@ -72,6 +72,8 @@ if errorlevel 1 goto fail
echo.
:: cgo tests
+:: issue 4955 - cgo is broken
+goto nocgo
if x%CGO_ENABLED% == x0 goto nocgo
echo # ..\misc\cgo\life
go run %GOROOT%\test\run.go - ..\misc\cgo\life
コアとなるコードの解説
:: cgo tests
: これはバッチファイルのコメント行で、続くセクションがcgo関連のテストであることを示しています。:: issue 4955 - cgo is broken
: 新しく追加されたコメント行です。この行は、この変更がGoのIssue 4955に関連しており、当時のWindows環境でcgoが正常に機能していなかった("cgo is broken")という背景を説明しています。goto nocgo
: 新しく追加された行です。このコマンドは、スクリプトの実行フローをnocgo
というラベルが付けられた行に無条件でジャンプさせます。これにより、この行以降に記述されているcgo関連のテストコードが実行されることなくスキップされます。if x%CGO_ENABLED% == x0 goto nocgo
: これは元々存在していた行で、環境変数CGO_ENABLED
が0
に設定されている場合にcgoテストをスキップするための条件分岐でした。しかし、今回の変更でgoto nocgo
がその前に挿入されたため、この条件分岐は実質的に意味をなさなくなりました。
この変更により、src/run.bat
がWindows上で実行される際、cgoテストセクションに到達するとすぐにnocgo
ラベルにジャンプし、cgoテストが完全にスキップされるようになります。
関連リンク
Go言語のIssueトラッカーで「Issue 4955」を直接検索しましたが、関連する情報は見つかりませんでした。これは、非常に古いIssueであるか、内部的な追跡番号である可能性があります。しかし、cgoとWindowsに関する一般的な課題は、Goコミュニティで広く議論されてきました。
参考にした情報源リンク
- reddit.com: https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQGdkPzL3gFSzdOEGzv-pUMDGOe15STthzVoo00J_IWDs64ctuByZmT_rXFYkos8xE8iPTJJFgsJOPjhZr8wogu1LHu3Tg_-dG1GyejQkvPT0GgdI6q5IAgAMWXUgbJD3rTwI9upSnhPWwKC_v2WBw7m28ue2U1iw1N1QMHBbL4qrBw=
- reddit.com: https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQE2lFGtDFGSos193etd1gZFE31IMNQkLazK8QW1sAqklpg0wJJkdFSazx5mZeS6WiupvAqzWNKJTPhr5q43t9Kh7jiAdBh9cTC43CzwpLJ2S_TXSdUtE0yRAE0pgkBWk-6K035jtQF6RHH0D6dPQZcV9opqibS4dgx1HFsFv0lhSMbw3LgXartR7tHNy_XsdoMjg5fyr_znRFGpSdjh
- stackoverflow.com: https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQGtP3sgf-_xcNYxFBZgXWaUrGjb4HPCz8CLP0YmxLn1WLye1eoA2-Bw0riRn0s5LKz0WKEZ8PEzdWBPFDuLC5R8-GEJBC8bDrnIwhYioIDju2G43P9iH9Y0Vty_gTVEgVhhJPi4oo711zn0v-upO3EDCnp1iRfOBtJxcmu-vrA_Xu7Ujt_CvjGkpRPyWa81hfAJmfXNec=
- github.com: https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQGOhf9QmdEOBV6mCgb_Vsf8DS7jYJ__glg88gLr5HU7VGYNiKx4ku9wBHZ6he4fbe_S-F9tm5CzURnr3mxOWV5ChLgF6fZuSMTrIms7QajH4E8knm39HJZd7H3UuXhyY47O_Ayu
- github.com: https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQEpH047ZS15nzukWwadirmdiRWGdSBHCVxzdFz3Gwg6nwsjnuJ3uzsECNO3zR9ZF1udd0C9xSEIfoQ1wFTcr-VezJEjVFJpTrFIUbIcq5BzIF5ZPSlE7AApjaivUhsQcjPmdyIL
- google.com: https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQFOc1m67SfgsjF04uDpGDrXERB2Rh0W_dgGL-TXj62d6P7Zxipb7pfFtahx4PlDzbxQenrGh-DhAVs_ICKEkjUcUX7N0sWPe_MeT9vWgwrZVvg4XoW2mJEc4ov4B9HCF-ptGeEQGUuAS41u38U9PioD