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[インデックス 15537] ファイルの概要

このコミットは、Go言語プロジェクトのビルドシステムにおける特定の変更を記録しています。具体的には、OpenBSD環境でのCgoテストの実行を無効化する修正が導入されました。これは、OpenBSD上でのCgoの挙動に関する既知の問題(コミットメッセージでは「issue 4878」と参照されています)に対応するためのものです。

コミット

commit f5ceeb94a8054dda97d6331ec689037b4aff6a3a
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Fri Mar 1 12:13:42 2013 -0500

    build: disable cgo test on openbsd
    
    Update #4878.
    
    R=golang-dev
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7450048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/f5ceeb94a8054dda97d6331ec689037b4aff6a3a

元コミット内容

build: disable cgo test on openbsd

Update #4878.

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のCgo機能がOpenBSDオペレーティングシステム上で正しく動作しない、またはテストが失敗するという問題がありました。コミットメッセージに記載されている「issue 4878」は、この問題に関連する内部的なトラッキング番号であると考えられます。Goプロジェクトでは、様々なプラットフォームでの互換性と安定性を確保するために、継続的なテストと修正が行われています。CgoはGoプログラムがC言語のコードと連携するための重要な機能であり、そのテストが特定の環境で失敗することは、その環境でのGoの利用に支障をきたす可能性があります。

このコミットは、問題の根本的な解決ではなく、一時的な回避策として、OpenBSD環境でのCgoテストの実行をスキップすることで、CI/CDパイプラインや開発者のローカル環境でのビルドが失敗するのを防ぐことを目的としています。これにより、他のプラットフォームでの開発やテストの進行を妨げることなく、OpenBSD固有の問題の調査と修正に時間を割くことが可能になります。

前提知識の解説

Go言語 (Golang)

Goは、Googleによって開発されたオープンソースのプログラミング言語です。静的型付け、コンパイル型、並行処理に優れた特徴を持ち、シンプルで効率的なコード記述を可能にします。システムプログラミング、ネットワークサービス、Webアプリケーションなど、幅広い分野で利用されています。

Cgo

Cgoは、Go言語の機能の一つで、GoプログラムからC言語のコードを呼び出したり、C言語のコードからGoの関数を呼び出したりすることを可能にします。これにより、既存のCライブラリをGoプロジェクトで再利用したり、パフォーマンスが重要な部分をCで記述したりすることができます。Cgoを使用するには、Goのビルドプロセス中にCコンパイラ(通常はGCCやClang)が必要です。Cgoは、GoとCの間のデータ型の変換や、メモリ管理の調整など、複雑な処理を内部的に行います。

OpenBSD

OpenBSDは、UNIXライクなオペレーティングシステムの一つで、特にセキュリティに重点を置いていることで知られています。厳格なセキュリティポリシーとコードレビュープロセスを持ち、デフォルトで多くのセキュリティ機能が有効になっています。そのため、他のOSと比較して、特定のシステムコールやメモリ管理の挙動が異なる場合があります。このような違いが、Cgoのような低レベルの相互運用機能において問題を引き起こすことがあります。

src/run.bash

src/run.bashは、Go言語プロジェクトのテストスイートを実行するためのシェルスクリプトです。Goプロジェクトのルートディレクトリに位置し、様々なテスト(ユニットテスト、インテグレーションテスト、Cgoテストなど)を自動化するために使用されます。このスクリプトは、環境変数をチェックし、それに基づいて特定のテストの実行をスキップしたり、異なる設定でテストを実行したりするロジックを含んでいます。

環境変数 CGO_ENABLEDGOHOSTOS

  • CGO_ENABLED: この環境変数は、Cgo機能が有効になっているかどうかを制御します。CGO_ENABLED=1の場合、Cgoが有効になり、GoプログラムはCコードと連携できます。CGO_ENABLED=0の場合、Cgoは無効になり、Cgoを使用するコードはコンパイルされません。
  • GOHOSTOS: この環境変数は、Goツールチェーンが動作しているホストオペレーティングシステムを示します。例えば、linuxdarwin (macOS)、windowsopenbsdなどがあります。ビルドスクリプトやテストスクリプトは、この変数を使用して、特定のOSに依存する処理を条件分岐させることができます。

Issue 4878の補足

コミットメッセージに「Update #4878」と記載されていますが、公開されているGoのIssueトラッカー(GitHub Issues)で「issue 4878」を検索しても、このコミットが作成された2013年当時のCgoとOpenBSDに関する直接的な情報は見つかりませんでした。これは、以下のいずれかの理由が考えられます。

  1. 内部的なIssueトラッカー: Goプロジェクトは、公開されているGitHub Issuesとは別に、内部的なバグトラッキングシステムを使用していた可能性があります。
  2. Issue番号の変更または統合: 関連する問題が後に別のIssueに統合されたり、番号が変更されたりした可能性があります。
  3. 誤記: 単純な誤記である可能性もゼロではありません。

しかし、GoのIssueトラッカーで「cgo openbsd」といったキーワードで検索すると、CgoとOpenBSDに関する様々な問題が報告されていることがわかります。例えば、より最近のIssue #43005「runtime/cgo: add support for cgo on openbsd/mips64」は、OpenBSD上の特定のアーキテクチャでのCgoサポートに関するものです。これは、Cgoが様々なOSやアーキテクチャで安定して動作するようにするための継続的な努力を示しています。

技術的詳細

このコミットは、src/run.bashスクリプトに条件付きの実行ロジックを追加することで、OpenBSD環境でのCgoテストをスキップします。

既存のスクリプトには、CGO_ENABLED環境変数が1(Cgoが有効)である場合にCgoテストを実行するセクションがありました。このコミットでは、その条件に加えて、GOHOSTOS環境変数がopenbsdではない場合にのみCgoテストを実行するという条件が追加されました。

具体的には、以下の行が追加されました。

[ "$GOHOSTOS" == openbsd ] || # issue 4878

この行は、シェルスクリプトの条件式の一部です。

  • [ "$GOHOSTOS" == openbsd ]: これは、GOHOSTOS環境変数の値が文字列openbsdと等しいかどうかをチェックするテストです。
  • ||: これは論理OR演算子です。左側のコマンドが失敗(終了ステータスが非ゼロ)した場合にのみ、右側のコマンドが実行されます。

この行が追加されたブロック全体は以下のようになります(変更後の関連部分):

[ "$CGO_ENABLED" != 1 ] ||
[ "$GOHOSTOS" == openbsd ] || # issue 4878
(xcd ../misc/cgo/test
go test
) || exit $?

このロジックを詳細に分析すると:

  1. [ "$CGO_ENABLED" != 1 ] ||:

    • もしCGO_ENABLED1ではない(つまりCgoが無効)ならば、左側の条件が真となり、||の右側(Cgoテストの実行)はスキップされます。
    • もしCGO_ENABLED1である(Cgoが有効)ならば、左側の条件が偽となり、||の右側が評価されます。
  2. [ "$GOHOSTOS" == openbsd ] ||:

    • CGO_ENABLED1であると仮定します。
    • もしGOHOSTOSopenbsdであるならば、左側の条件が真となり、||の右側(Cgoテストの実行)はスキップされます。
    • もしGOHOSTOSopenbsdではないならば、左側の条件が偽となり、||の右側が評価されます。

したがって、この修正により、Cgoが有効な場合でも、ホストOSがOpenBSDである場合にはCgoテストが実行されなくなります。これにより、OpenBSD環境でのビルドやテストの失敗を回避し、開発ワークフローをスムーズに保つことができます。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/run.bash ファイルの1箇所のみです。

--- a/src/run.bash
+++ b/src/run.bash
@@ -74,6 +74,7 @@ go run $GOROOT/test/run.go - .
 ) || exit $?\n
 [ "$CGO_ENABLED" != 1 ] ||
+[ "$GOHOSTOS" == openbsd ] || # issue 4878
 (xcd ../misc/cgo/test
 go test
 ) || exit $?

コアとなるコードの解説

追加された行 [ "$GOHOSTOS" == openbsd ] || # issue 4878 は、src/run.bash スクリプト内のCgoテスト実行ブロックの条件式に組み込まれています。

この行の目的は、GOHOSTOS 環境変数が openbsd と等しい場合に、その後のCgoテストの実行をスキップすることです。シェルスクリプトの論理OR (||) 演算子の特性を利用しており、左側のコマンド(この場合は条件式)が成功(終了ステータス0)した場合、右側のコマンドは実行されません。

つまり、以下の条件が満たされた場合にのみ、../misc/cgo/test ディレクトリに移動して go test が実行されます。

  1. CGO_ENABLED1 である(Cgoが有効である)。
  2. かつ、GOHOSTOSopenbsd ではない。

この変更により、OpenBSD環境でCgoテストが実行されることがなくなり、OpenBSD固有のCgo関連の問題によるテストの失敗が回避されます。これは、問題の根本的な解決ではなく、テストスイートがOpenBSD上で失敗するのを防ぐための一時的な回避策として機能します。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のソースコード (GitHub): https://github.com/golang/go
  • Go言語のIssueトラッカー (GitHub Issues): https://github.com/golang/go/issues
  • シェルスクリプトの条件式と論理演算子に関する一般的な情報 (例: Bashのドキュメントやチュートリアル)
  • Go言語のビルドプロセスと環境変数に関する情報 (Goの公式ドキュメントやブログ記事)