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[インデックス 15570] ファイルの概要

このコミットは、misc/dashboard/builder/main.go ファイルに対する変更です。このファイルは、Goプロジェクトのダッシュボードシステムの一部であるビルダに関連するロジックを含んでいます。

コミット

misc/dashboard/builder: make -fail mode faster

Don't check out the repository if we're just going to fail everything.

R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7453048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/7c68f7876a1384951956b6b61a4158526f01cb51

元コミット内容

このコミットは、Goプロジェクトのダッシュボードシステムにおけるビルダの動作を最適化することを目的としています。具体的には、ビルダが「失敗モード」(-failモード)で実行される際に、不要なリポジトリのチェックアウト処理をスキップすることで、処理速度を向上させています。コミットメッセージには「すべて失敗するつもりなら、リポジトリをチェックアウトする必要はない」と明記されており、この最適化の意図が明確に示されています。

変更の背景

Goプロジェクトのような大規模なオープンソースプロジェクトでは、継続的インテグレーション(CI)システムやビルドダッシュボードが非常に重要です。これらのシステムは、コードの変更がビルドやテストに悪影響を与えないことを確認するために、頻繁にビルドとテストを実行します。

このコミットの背景には、ビルダが特定のシナリオ、特に「失敗モード」で実行される際の効率性の問題があったと考えられます。失敗モードとは、おそらくテストやビルドが意図的に失敗するように設定されているデバッグやテストのシナリオ、あるいは単にビルド環境のセットアップが不完全な場合に、ビルドプロセス全体を迅速に失敗させるためのモードを指すでしょう。

このようなモードでは、最終的にビルドが失敗することが確定しているため、ビルドに必要なリポジトリのソースコードをわざわざチェックアウトする処理は無駄になります。リポジトリのチェックアウトは、ネットワークI/OやディスクI/Oを伴う時間のかかる操作であり、これをスキップすることで、ビルダの実行時間を短縮し、リソースの消費を抑えることができます。これは、CIシステム全体の効率向上に寄与します。

前提知識の解説

  • Goプロジェクトのダッシュボード/ビルダ: Go言語の公式プロジェクトでは、build.golang.org のようなビルドダッシュボードが運用されています。これは、様々なプラットフォームや構成でのGoのビルドとテストの結果を監視し、問題があれば開発者に通知するシステムです。このダッシュボードの裏側では、ビルダと呼ばれるプログラムが実際にビルドとテストのタスクを実行しています。misc/dashboard/builder ディレクトリは、このビルダのコードベースの一部であると推測されます。
  • goroot: Go言語の環境変数の一つで、Goのインストールディレクトリを指します。Goのツールチェインや標準ライブラリなどが配置されています。コード中の goroot.Exists() は、Goのワークスペース(作業環境)が既に存在するかどうかを確認する関数であると考えられます。
  • -failモード: コマンドラインツールにおいて、特定のオプション(この場合は-fail)を付与することで、プログラムの動作を変更する一般的なパターンです。この文脈では、ビルダがこのオプションを受け取ると、ビルドプロセスを迅速に失敗させる特別なモードで動作することを意味します。これは、例えばCIシステムが特定のテストケースを意図的に失敗させたい場合や、ビルド環境のセットアップが不完全な場合に、無駄な処理を省いてすぐに結果を返すために使用されることがあります。
  • リポジトリのチェックアウト: Gitなどのバージョン管理システムにおいて、リモートリポジトリからソースコードのコピーをローカルに取得する操作です。ビルドプロセスを開始する前に、最新のソースコードを取得するために通常行われます。

技術的詳細

この変更は、Go言語で書かれたビルダの main.go ファイル内の条件分岐を修正することで実現されています。

元のコードでは、ビルダの作業環境をセットアップする際に、goroot.Exists() の結果のみに基づいて既存のワークスペースを使用するか、新しいワークスペースを作成するかを判断していました。

// set up work environment, use existing enviroment if possible
if goroot.Exists() {
	log.Print("Found old workspace, will use it")
} else {
	if err := os.RemoveAll(*buildroot); err != nil {
		// ...
	}
}

変更後のコードでは、この条件に || *failAll が追加されています。

// set up work environment, use existing enviroment if possible
if goroot.Exists() || *failAll {
	log.Print("Found old workspace, will use it")
} else {
	if err := os.RemoveAll(*buildroot); err != nil {
		// ...
	}
}

ここで、*failAll は、おそらくコマンドライン引数として渡される -fail オプションに対応するブーリアン型の変数(ポインタ)であると推測されます。この変数が true の場合(つまり、ビルダが失敗モードで実行されている場合)、goroot.Exists() の結果に関わらず、条件式 goroot.Exists() || *failAlltrue となります。

これにより、ビルダは「Found old workspace, will use it」(古いワークスペースが見つかったので、それを使用します)というログを出力し、else ブロック内の新しいワークスペースを作成するための処理(os.RemoveAll(*buildroot) など)をスキップします。新しいワークスペースの作成には、通常、リポジトリのチェックアウトが含まれるため、この変更によって不要なチェックアウト処理が回避され、ビルダの起動が高速化されます。

この最適化は、ビルドが最終的に失敗することが分かっている場合に、無駄なリソース消費と時間の浪費を防ぐための賢明なアプローチです。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/misc/dashboard/builder/main.go
+++ b/misc/dashboard/builder/main.go
@@ -83,7 +83,7 @@ func main() {
 	}
 
 	// set up work environment, use existing enviroment if possible
-	if goroot.Exists() {
+	if goroot.Exists() || *failAll {
 		log.Print("Found old workspace, will use it")
 	} else {
 	if err := os.RemoveAll(*buildroot); err != nil {

コアとなるコードの解説

変更は misc/dashboard/builder/main.go ファイルの83行目付近にあります。

元のコードでは、if goroot.Exists() という条件文がありました。これは、Goの作業環境(goroot)が既に存在するかどうかを確認し、存在すれば既存の環境を再利用し、存在しなければ新しい環境をセットアップする(これには通常、リポジトリのクローンやチェックアウトが含まれる)というロジックでした。

このコミットでは、この条件文に || *failAll が追加されました。 *failAll は、ビルダが -fail モードで実行されているかどうかを示すブーリアン値(またはそのポインタ)です。

この変更により、以下のロジックが適用されます。

  1. goroot.Exists()true の場合: 以前と同様に、既存のワークスペースが検出され、それが使用されます。
  2. goroot.Exists()false で、かつ *failAlltrue の場合:
    • Goの作業環境は存在しないが、ビルダは失敗モードで実行されている。
    • この場合でも、条件式 false || truetrue となるため、if ブロックが実行されます。
    • 結果として、log.Print("Found old workspace, will use it") が出力され、else ブロック内の新しいワークスペースの作成(およびそれに伴うリポジトリのチェックアウト)がスキップされます。
    • これにより、ビルドが最終的に失敗することが確定しているにもかかわらず、不要なリポジトリのチェックアウト処理が行われるのを防ぎ、ビルダの起動時間を短縮します。
  3. goroot.Exists()false で、かつ *failAllfalse の場合:
    • Goの作業環境は存在せず、ビルダは通常のモードで実行されている。
    • 条件式 false || falsefalse となるため、else ブロックが実行されます。
    • 新しいワークスペースが作成され、通常通りリポジトリのチェックアウトが行われます。

この修正は、ビルダの起動ロジックに小さな変更を加えることで、特定の実行パス(失敗モード)における不要なI/O操作を排除し、全体的な効率を向上させる、非常に効果的な最適化です。

関連リンク

参考にした情報源リンク