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[インデックス 15752] ファイルの概要

このコミットで変更されたファイルは lib/godoc/package.txt です。このファイルは、Go言語の公式ドキュメンテーションツールである godoc がパッケージのドキュメントをテキスト形式で生成する際に使用するテンプレートの一部です。具体的には、Goのパッケージコメント内で BUG(who): の形式で記述されたバグノート(BUGS)セクションのヘッディングの表示方法を定義しています。

コミット

  • コミットハッシュ: 4e63d6ee4d55c706c3e24b718d89ece9c7faec16
  • Author: Russ Cox rsc@golang.org
  • Date: Wed Mar 13 15:22:59 2013 -0400

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/4e63d6ee4d55c706c3e24b718d89ece9c7faec16

元コミット内容

cmd/godoc: fix BUGS heading in text mode

All the headings are CAPS not Title.

Fixes #4843.

R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7792043

変更の背景

このコミットは、godoc コマンドがテキストモードでドキュメントを生成する際に、「BUGS」セクションのヘッディングの表示が他のヘッディングと一貫していなかった問題を修正するものです。

godoc は、Goのソースコードから自動的にドキュメントを生成するツールであり、その出力形式はHTML、プレーンテキストなど多岐にわたります。プレーンテキストモードでは、通常、セクションのヘッディングはすべて大文字(CAPS)で表示されるという慣習がありました。しかし、「BUGS」セクションのヘッディングだけが「Title Case」(単語の先頭が大文字)で表示されており、これが視覚的な不整合を引き起こしていました。

この不整合は、GoのIssueトラッカーで #4843 として報告されており、このコミットはその問題を解決するために行われました。

前提知識の解説

godoc ツール

godoc はGo言語の標準ドキュメンテーションツールです。Goのソースコードに記述されたコメント(特にエクスポートされた識別子に付随するコメント)を解析し、整形されたドキュメントを生成します。これにより、開発者はコードとドキュメントを密接に連携させ、常に最新の状態に保つことができます。godoc は、ローカルでドキュメントサーバーを起動したり、プレーンテキストやHTML形式でドキュメントを出力したりする機能を提供します。

Go言語におけるドキュメンテーションコメント

Go言語では、エクスポートされた(大文字で始まる)パッケージ、関数、型、変数、定数などには、その直前にコメントを記述することでドキュメントとして認識されます。特に、パッケージレベルのコメントは package キーワードの直前に記述され、パッケージ全体の概要を説明します。

また、godoc は特定の形式のコメントを特別に扱います。例えば、// BUG(who): で始まるコメントは、既知のバグとして認識され、生成されるドキュメントの「BUGS」セクションにまとめられます。

Goテンプレート

godoc は、ドキュメントの生成にGoの text/template パッケージ(または html/template)を使用しています。これにより、柔軟な出力形式のカスタマイズが可能です。テンプレートファイルは、プレースホルダーや制御構造(ifrange など)を含むテキストファイルであり、データが適用されると最終的な出力が生成されます。

このコミットで変更された lib/godoc/package.txt は、まさにこのGoテンプレートの一例です。テンプレート構文は {{.FieldName}} のように波括弧で囲まれた部分で、データから値を取り出したり、関数を呼び出したりします。

noteTitle 関数と $marker 変数

lib/godoc/package.txt テンプレート内で使用されている {{noteTitle $marker}} は、Goテンプレートの関数呼び出しと変数の使用を示しています。

  • $marker: これはテンプレート内で定義された変数で、BUG のようなノートのマーカー(識別子)を表します。
  • noteTitle: これは godoc のテンプレートエンジンに登録されたカスタム関数で、与えられたマーカー文字列を整形して、ドキュメントのヘッディングとして適切な形式に変換する役割を担っていました。元の実装では、この関数が「Title Case」に変換するロジックを含んでいた可能性があります。

技術的詳細

lib/godoc/package.txt は、godoc がパッケージドキュメントをテキスト形式でレンダリングする際の構造を定義するテンプレートファイルです。このファイルは、Goの text/template パッケージの構文に従っています。

問題の箇所は、BUGS セクションのヘッディングを生成する部分でした。元のコードでは {{noteTitle $marker}}s となっていました。

  • {{with $.Notes}}: パッケージにノート(BUG など)が存在する場合に、このブロックを実行します。
  • {{range $marker, $content := .}}: 各ノートについてループ処理を行います。$marker には BUG のようなノートの種類が、$content にはそのノートの内容が格納されます。
  • {{noteTitle $marker}}s: ここが問題の核心でした。noteTitle 関数は $marker(例: "BUG")を受け取り、それを「Title Case」に変換する(例: "Bug")役割を担っていたと考えられます。その後にリテラルの s が付加されることで、「Bugs」というヘッディングが生成されていました。

しかし、godoc のテキストモードにおける他のヘッディング(例: TYPES)はすべて大文字で表示されるという慣習がありました。このため、「Bugs」という表示は一貫性を欠いていました。

このコミットの目的は、noteTitle 関数による「Title Case」変換を避け、$marker の内容を直接大文字で表示することでした。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/lib/godoc/package.txt
+++ b/lib/godoc/package.txt
@@ -65,7 +65,7 @@ TYPES
  
  */}}{{with $.Notes}}\
  {{range $marker, $content := .}}\
--{{noteTitle $marker}}s
-+{{$marker}}S
  
  {{range $content}}{{comment_text . \"    \" \"\\t\"}}\
  {{end}}{{end}}{{end}}{{end}}{{/*

コアとなるコードの解説

変更は以下の1行です。

  • 変更前: {{noteTitle $marker}}s
  • 変更後: {{$marker}}S

この変更により、noteTitle 関数を呼び出すのをやめ、代わりに $marker 変数の値を直接使用するようにしました。

  1. {{noteTitle $marker}}s:

    • $marker の値が例えば BUG であった場合、noteTitle 関数がこれを Bug に変換します。
    • その後にリテラルの s が結合され、最終的に「Bugs」という文字列が生成されていました。
  2. {{$marker}}S:

    • noteTitle 関数を介さずに、$marker の値(例: BUG)を直接使用します。
    • その後にリテラルの大文字の S が結合されます。これにより、BUG + S で「BUGS」という文字列が生成されます。

この修正により、BUGS ヘッディングが他のヘッディングと同様にすべて大文字で表示されるようになり、godoc のテキストモード出力における一貫性が保たれました。これは、Goのドキュメンテーションの品質とユーザビリティを向上させるための小さな、しかし重要な改善です。

関連リンク

参考にした情報源リンク