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[インデックス 15754] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のコマンドラインツールgoにおけるプロファイリングに関するドキュメントを改善するものです。具体的には、go testコマンドのプロファイリングフラグに関する説明をより明確にし、ユーザーがgo tool pprofを効果的に利用するための情報を提供しています。

コミット

commit 221163411312443b5e13c17382a101a94bd2db62
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Wed Mar 13 13:56:51 2013 -0700

    cmd/go: better documentation about profiling
    Point the user to "go tool pprof" and mention some
    important flags.
    
    Fixes #4990.
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7657045

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/221163411312443b5e13c17382a101a94bd2db62

元コミット内容

このコミットの目的は、「プロファイリングに関するドキュメントの改善」です。具体的には、ユーザーをgo tool pprofに誘導し、いくつかの重要なフラグについて言及することで、プロファイリング情報の利用方法をより分かりやすくすることを目指しています。これはIssue #4990の修正に対応しています。

変更の背景

Go言語のアプリケーションのパフォーマンスを分析する際、プロファイリングは非常に重要なツールです。go testコマンドは、テスト実行中にCPUプロファイルやメモリプロファイルを生成する機能を提供しています。しかし、これらのプロファイルが生成された後、どのように分析すればよいのか、どのようなツールやオプションが利用できるのかについて、ドキュメントが不足していた可能性があります。

このコミットは、ユーザーが生成されたプロファイルデータを最大限に活用できるよう、go tool pprofの存在とその基本的な使用方法(特に--alloc_space, --alloc_objects, --show_bytesといった重要なオプション)を明示的にドキュメントに追加することで、このギャップを埋めることを目的としています。また、メモリプロファイルの生成タイミングに関する記述も、より正確な表現に修正されています。

前提知識の解説

Go言語のプロファイリング

Go言語には、プログラムの実行時のパフォーマンス特性を分析するための強力なプロファイリングツールが組み込まれています。これにより、CPU使用率、メモリ割り当て、ゴルーチン、ブロック操作などのボトルネックを特定できます。

  • go testコマンドとプロファイリングフラグ:

    • go test -cpuprofile cpu.out: テスト実行中のCPUプロファイルをcpu.outというファイルに書き出します。
    • go test -memprofile mem.out: テスト完了後のメモリプロファイルをmem.outというファイルに書き出します。
    • これらのフラグは、テストの実行と同時にプロファイルデータを収集するために使用されます。
  • go tool pprof:

    • go tool pprofは、Goプログラムによって生成されたプロファイルデータを分析するためのコマンドラインツールです。
    • CPUプロファイル、メモリプロファイル、ブロックプロファイル、ミューテックスプロファイルなど、様々な種類のプロファイルを視覚化し、分析する機能を提供します。
    • グラフ表示(Graphvizが必要)、テキストベースのレポート、インタラクティブなシェルなど、多様な形式でデータを提供します。
    • go tool pprof helpを実行すると、利用可能なオプションやコマンドの詳細が表示されます。

go tool pprofの重要なオプション

このコミットで言及されているpprofのオプションは、特にメモリプロファイルの分析において有用です。

  • --alloc_space: 割り当てられたメモリの総量に基づいてデータを表示します。
  • --alloc_objects: 割り当てられたオブジェクトの総数に基づいてデータを表示します。
  • --show_bytes: メモリサイズをバイト単位で表示します。これにより、より正確なメモリ使用量を把握できます。

これらのオプションは、メモリリークや過剰なメモリ割り当ての原因を特定する際に役立ちます。

技術的詳細

このコミットは、主にGoコマンドのドキュメントファイル(src/cmd/go/doc.go)と、go testコマンドのヘルプメッセージを生成するファイル(src/cmd/go/test.go)の2つのファイルを変更しています。

変更の核心は、プロファイリングに関する既存の説明に、go tool pprofへの明確な参照と、その使用時に役立つ特定のフラグに関する情報が追加された点です。

  1. go tool pprofへの誘導:

    • 以前のドキュメントでは、プロファイリングフラグがプロファイルを生成することだけを述べていましたが、生成されたプロファイルをどのように利用するかについては言及がありませんでした。
    • 今回の変更により、「go tool pprofに適した実行プロファイルを書き出す」という説明が追加され、さらに「go tool pprof helpを実行して詳細情報を得るように」とユーザーに指示しています。これにより、ユーザーはプロファイル生成後の次のステップを明確に理解できます。
  2. pprofの重要なフラグの言及:

    • --alloc_space, --alloc_objects, --show_bytesという3つのpprofオプションが明示的にドキュメントに追加されました。これらは、特にメモリプロファイルの分析において、データの表示方法を制御するために非常に有用なフラグです。これにより、ユーザーはより詳細かつ目的に合った分析を行うことができます。
  3. メモリプロファイル生成タイミングの修正:

    • -memprofileフラグの説明において、「when all tests are complete.」という記述が「after all tests have passed.」に修正されました。これは、メモリプロファイルが生成される正確なタイミングをより正確に反映しています。テストが失敗した場合でもプロファイルが生成されるのではなく、テストがすべて成功した場合にプロファイルが書き出されることを示唆しています。これは、プロファイルデータの信頼性や、どのような状況でプロファイルが利用可能になるかを理解する上で重要な詳細です。

これらの変更は、Goのプロファイリング機能の使いやすさを向上させ、ユーザーがパフォーマンスの問題を診断する際の障壁を低減することを目的としています。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットで変更された主要なファイルは以下の2つです。

  1. src/cmd/go/doc.go: goコマンド全体のドキュメントを定義しているファイルです。
  2. src/cmd/go/test.go: go testコマンドのヘルプメッセージや内部処理を定義しているファイルです。

両方のファイルで、go testコマンドのプロファイリングフラグに関する説明が更新されています。

src/cmd/go/doc.go の変更点:

--- a/src/cmd/go/doc.go
+++ b/src/cmd/go/doc.go
@@ -685,6 +685,11 @@ Description of testing flags
 The 'go test' command takes both flags that apply to 'go test' itself
 and flags that apply to the resulting test binary.
 
+Several of the flags control profiling and write an execution profile
+suitable for "go tool pprof"; run "go tool pprof help" for more
+information.  The --alloc_space, --alloc_objects, and --show_bytes
+options of pprof control how the information is presented.
+
 The following flags are recognized by the 'go test' command and
 control the execution of any test:
 
@@ -722,8 +727,8 @@ control the execution of any test:
 	    Write a CPU profile to the specified file before exiting.
 
 	-memprofile mem.out
-	    Write a memory profile to the specified file when all tests
-	    are complete.
+	    Write a memory profile to the specified file after all tests
+	    have passed.

src/cmd/go/test.go の変更点:

src/cmd/go/test.goの変更は、src/cmd/go/doc.goとほぼ同じ内容で、go testコマンドのヘルプメッセージに反映される部分です。

--- a/src/cmd/go/test.go
+++ b/src/cmd/go/test.go
@@ -81,6 +81,11 @@ var helpTestflag = &Command{
 The 'go test' command takes both flags that apply to 'go test' itself
 and flags that apply to the resulting test binary.
 
+Several of the flags control profiling and write an execution profile
+suitable for "go tool pprof"; run "go tool pprof help" for more
+information.  The --alloc_space, --alloc_objects, and --show_bytes
+options of pprof control how the information is presented.\n
+
 The following flags are recognized by the 'go test' command and
 control the execution of any test:
 
@@ -118,8 +123,8 @@ control the execution of any test:
 	    Write a CPU profile to the specified file before exiting.
 
 	-memprofile mem.out
-	    Write a memory profile to the specified file when all tests
-	    are complete.
+	    Write a memory profile to the specified file after all tests
+	    have passed.

コアとなるコードの解説

このコミットは、Goのソースコード自体に機能的な変更を加えるものではなく、ユーザー向けのドキュメントとヘルプメッセージを更新するものです。したがって、「コアとなるコード」とは、Goコマンドのドキュメントとヘルプメッセージを生成するテキストコンテンツを指します。

変更のポイントは以下の通りです。

  1. プロファイリングの説明の追加:

    • src/cmd/go/doc.gosrc/cmd/go/test.goの両方に、プロファイリングフラグがgo tool pprofに適したプロファイルを生成すること、そしてgo tool pprof helpで詳細を確認できる旨の新しい段落が追加されました。
    • この新しい段落には、pprof--alloc_space, --alloc_objects, --show_bytesという具体的なオプションが例として挙げられています。これにより、ユーザーはプロファイルデータの表示方法をカスタマイズできることを知ることができます。
  2. -memprofileの説明の修正:

    • -memprofileフラグの説明文が、「Write a memory profile to the specified file when all tests are complete.」から「Write a memory profile to the specified file after all tests have passed.」に変更されました。
    • この変更は、メモリプロファイルが生成される条件をより正確に記述しています。単にテストが完了するだけでなく、すべてのテストが成功した場合にプロファイルが書き出されることを示唆しています。これにより、ユーザーはプロファイルがいつ利用可能になるかについて、より正確な期待を持つことができます。

これらの変更は、Goのプロファイリング機能の利用に関するユーザーエクスペリエンスを向上させることを目的としています。ドキュメントの明確化は、ユーザーがGoのツールをより効果的に使用し、パフォーマンスの問題を効率的に特定・解決するのに役立ちます。

関連リンク

  • Go言語公式ドキュメント: https://golang.org/doc/
  • go tool pprofに関する公式ドキュメント(通常はgo tool pprof helpで表示される内容が基になりますが、オンラインリソースも存在します): https://pkg.go.dev/cmd/pprof
  • Go言語のプロファイリングに関するブログ記事やチュートリアル(例: Go公式ブログのプロファイリングに関する記事など)

参考にした情報源リンク