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[インデックス 15809] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるbytesパッケージとstringsパッケージ内のTitle関数のコメントに記述されていたBUG(r)マーカーの位置を変更するものです。これにより、コマンドラインからパッケージに関する情報を問い合わせる際に、このバグ情報が毎回表示されるのを避けることが目的です。

コミット

commit 464257eeffedcf2c9e04fd8c47edc1f1fc491b62
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Fri Mar 15 17:08:07 2013 -0700

    bytes,string: move the BUG to the comment of the function it's about
    Avoids printing it every time we ask a question about the package from
    the command line.
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7789048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/464257eeffedcf2c9e04fd8c47edc1f1fc491b62

元コミット内容

このコミットの目的は、bytesパッケージとstringsパッケージのTitle関数に関するBUG(r)コメントを、その関数自体のコメントブロック内に移動することです。これにより、Goのコマンドラインツール(例えばgo docなど)でパッケージのドキュメントを参照した際に、このバグ情報が不必要に表示されるのを防ぎます。

変更の背景

Go言語のドキュメンテーションツール(go docコマンドなど)は、ソースコード内のコメントを解析してドキュメントを生成します。特定の形式のコメント、特にBUG(author)形式のコメントは、バグトラッキングや既知の問題を示すために使用されます。しかし、これらのコメントがパッケージレベルやファイルレベルで記述されていると、そのパッケージやファイルに関するドキュメントを表示するたびに、関連性の低いバグ情報まで表示されてしまう問題がありました。

このコミットでは、Title関数に関するバグ情報が、その関数とは直接関係のない場所(関数の定義の直前ではなく、より一般的な位置)に記述されていたため、go doc bytesgo doc stringsといったコマンドを実行した際に、Title関数固有のバグがパッケージ全体のバグであるかのように表示されていました。これを避けるため、バグ情報をそのバグが関連するTitle関数のドキュメンテーションコメント内に移動することで、より適切なコンテキストで情報が表示されるように変更されました。

前提知識の解説

  • Go言語のドキュメンテーションツール (go doc): Go言語には、ソースコードのコメントから自動的にドキュメントを生成し、表示するためのgo docコマンドがあります。このツールは、エクスポートされた関数、変数、型、定数などの定義の直前にあるコメントを読み取り、それらをドキュメントとして扱います。
  • BUG(author)コメント: Goの慣習として、既知のバグや未解決の問題を示すために、BUG(author): descriptionという形式のコメントが使われることがあります。go docツールはこれらのコメントを認識し、ドキュメントの一部として表示します。
  • bytes.Title / strings.Title 関数:
    • bytes.Title(s []byte) []byte: バイトスライスs内のすべてのUnicode文字を、単語の先頭にあるものをタイトルケース(各単語の最初の文字を大文字、残りを小文字)に変換したコピーを返します。
    • strings.Title(s string) string: 文字列s内のすべてのUnicode文字を、単語の先頭にあるものをタイトルケースに変換したコピーを返します。
    • これらの関数は、テキストの書式設定、特に見出しや名前の整形によく使用されます。
  • Unicodeの句読点と単語境界: Title関数は、単語の境界を識別して各単語の最初の文字をタイトルケースに変換します。しかし、Unicodeには多様な文字や句読点が存在するため、単語の境界を正確に識別することは複雑な問題です。特に、句読点が単語の一部と見なされるべきか、それとも単語の区切りと見なされるべきかによって、Title関数の挙動が変わる可能性があります。このコミットで言及されているバグは、Title関数がUnicodeの句読点を単語境界として適切に扱わないという問題を示しています。

技術的詳細

このコミットの技術的な変更は非常にシンプルで、コードのロジック自体には一切変更がありません。変更点は、BUG(r)コメントの物理的な位置のみです。

元のコードでは、bytes.gostrings.goの両方で、isSeparator関数の直後、かつTitle関数の定義の直前に// BUG(r): The rule Title uses for word boundaries does not handle Unicode punctuation properly.というコメントがありました。

// src/pkg/bytes/bytes.go (変更前)
func isSeparator(r rune) bool {
	return unicode.IsSpace(r)
}

// BUG(r): The rule Title uses for word boundaries does not handle Unicode punctuation properly.

// Title returns a copy of s with all Unicode letters that begin words
// mapped to their title case.
func Title(s []byte) []byte {
	// ...
}

この配置だと、go doc bytesgo doc stringsを実行した際に、パッケージ全体のドキュメントの一部としてこのバグ情報が表示されてしまいます。

変更後、このBUG(r)コメントはTitle関数のドキュメンテーションコメントブロックの内部に移動されました。

// src/pkg/bytes/bytes.go (変更後)
func isSeparator(r rune) bool {
	return unicode.IsSpace(r)
}

// Title returns a copy of s with all Unicode letters that begin words
// mapped to their title case.
//
// BUG(r): The rule Title uses for word boundaries does not handle Unicode punctuation properly.
func Title(s []byte) []byte {
	// ...
}

この変更により、go doc bytesgo doc stringsを実行しても、このバグ情報は表示されなくなります。代わりに、go doc bytes.Titlego doc strings.Titleのように、特定のTitle関数についてドキュメントを要求した場合にのみ、その関数の既知のバグとして情報が表示されるようになります。これは、ドキュメントの関連性を高め、ユーザーが求めている情報に集中できるようにするための改善です。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/bytes/bytes.gosrc/pkg/strings/strings.go の2つのファイルが変更されました。

src/pkg/bytes/bytes.go の変更点:

--- a/src/pkg/bytes/bytes.go
+++ b/src/pkg/bytes/bytes.go
@@ -461,10 +461,10 @@ func isSeparator(r rune) bool {
 	return unicode.IsSpace(r)
 }
 
-// BUG(r): The rule Title uses for word boundaries does not handle Unicode punctuation properly.
-
 // Title returns a copy of s with all Unicode letters that begin words
 // mapped to their title case.
+//
+// BUG(r): The rule Title uses for word boundaries does not handle Unicode punctuation properly.
 func Title(s []byte) []byte {
 	// Use a closure here to remember state.
 	// Hackish but effective. Depends on Map scanning in order and calling

src/pkg/strings/strings.go の変更点:

--- a/src/pkg/strings/strings.go
+++ b/src/pkg/strings/strings.go
@@ -492,10 +492,10 @@ func isSeparator(r rune) bool {
 	return unicode.IsSpace(r)
 }
 
-// BUG(r): The rule Title uses for word boundaries does not handle Unicode punctuation properly.
-
 // Title returns a copy of the string s with all Unicode letters that begin words
 // mapped to their title case.
+//
+// BUG(r): The rule Title uses for word boundaries does not handle Unicode punctuation properly.
 func Title(s string) string {
 	// Use a closure here to remember state.
 	// Hackish but effective. Depends on Map scanning in order and calling

コアとなるコードの解説

変更されたのは、// BUG(r): The rule Title uses for word boundaries does not handle Unicode punctuation properly. という行の位置です。

  • 削除された行 (- で示される行): Title関数の定義の直前、かつisSeparator関数の直後にあったBUGコメントが削除されました。この位置では、go docコマンドがパッケージ全体のドキュメントを生成する際に、このコメントをパッケージレベルのバグとして解釈し、表示していました。

  • 追加された行 (+ で示される行): Title関数のドキュメンテーションコメントブロックの内部に、同じBUGコメントが追加されました。具体的には、Title関数の説明文の後に空行を挟んで追加されています。この位置に移動することで、go docコマンドは、このBUGコメントをTitle関数固有のドキュメントの一部として認識し、go doc bytes.Titleのように関数名を指定してドキュメントを要求した場合にのみ表示するようになります。

この変更は、Goのドキュメンテーションシステムのセマンティクスをより正確に反映させるためのものであり、コードの実行時の動作には一切影響を与えません。

関連リンク

  • Go言語のドキュメンテーションに関する公式ガイドラインや慣習については、Goの公式ドキュメントやEffective Goなどを参照すると良いでしょう。

参考にした情報源リンク