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コミット
commit 18ff727487422d73c8dd609d229c3dda7539d9a9
Author: Volker Dobler <dr.volker.dobler@gmail.com>
Date: Fri Apr 12 14:05:14 2013 -0700
cmd/go: quote command line arguments in debug output
Debug output from go test -x may contain empty arguments.
This CL quotes arguments if needed. E.g. the output of
go test -x is now
.../6g -o ./_go_.6 -p testmain -complete -D "" -I . -I $WORK ./_testmain.go
which is easier to grasp.
R=golang-dev, bradfitz, minux.ma, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/8633043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/18ff727487422d73c8dd609d229c3dda7539d9a9
元コミット内容
cmd/go: quote command line arguments in debug output
このコミットは、Goコマンドのデバッグ出力において、コマンドライン引数を必要に応じてクォート(引用符で囲む)するように変更します。特に、go test -x
のようなデバッグ出力に空の引数が含まれる場合に、その出力がより理解しやすくなるように改善することを目的としています。
例として、変更前は空の引数がそのまま表示され読みにくかったものが、変更後は ""
のようにクォートされて表示されるようになり、視認性が向上します。
変更の背景
go test -x
コマンドは、テスト実行時に内部で実行されるコマンドの詳細(コンパイラやリンカの呼び出しなど)を表示するデバッグオプションです。しかし、このデバッグ出力に含まれるコマンドライン引数の中に、空の文字列(""
)のような引数がある場合、それが適切にクォートされていないと、出力が非常に読みにくくなるという問題がありました。
例えば、6g -o ./_go_.6 -p testmain -complete -D -I . -I $WORK ./_testmain.go
のような出力があった場合、-D
の後に続くはずの空の引数が視覚的に認識しづらく、コマンドの構造を把握するのが困難でした。このコミットは、このようなデバッグ出力の可読性を向上させ、開発者がGoツールチェーンの内部動作をより簡単に理解できるようにすることを目的としています。
前提知識の解説
go test -x
: Go言語のテストコマンドgo test
に-x
オプションを付けると、テストのビルドや実行中にGoツールチェーンが内部で実行するコマンド(例: コンパイラ6g
、リンカ6l
など)を詳細に表示します。これは、ビルドプロセスやテストのデバッグに非常に役立ちます。- コマンドライン引数のクォート: シェル(Bash, Zshなど)では、スペースを含む文字列や特殊文字をコマンドライン引数として渡す場合、それらを単一の引数として認識させるために引用符(シングルクォート
'
またはダブルクォート"
)で囲む必要があります。空の文字列も同様に、明示的に""
や''
とクォートすることで、それが意図された空の引数であることを示します。 - Goツールチェーン: Go言語のコンパイラ、リンカ、アセンブラ、その他の開発ツール群の総称です。
go
コマンドは、これらのツールを内部的に呼び出して、Goプログラムのビルド、テスト、実行などを行います。 src/cmd/go/build.go
: Goのソースコードリポジトリ内のパスで、go
コマンドのビルド関連のロジックが実装されているファイルです。コマンドの実行や引数の処理など、Goツールチェーンのコア部分に関わるコードが含まれています。
技術的詳細
この変更は、src/cmd/go/build.go
ファイル内の joinUnambiguously
関数に影響を与えます。この関数は、コマンドライン引数のスライス([]string
)を受け取り、それらを結合して、必要に応じてクォートすることで、曖昧さのない文字列として出力することを目的としています。
変更前は、空の文字列 ""
が引数として渡された場合、joinUnambiguously
関数はそれをクォートせずにそのまま出力していました。これにより、デバッグ出力では空の引数が視覚的に区別しにくくなっていました。
このコミットでは、joinUnambiguously
関数に以下のコメントが追加されています。
// TODO: See issue 5279. The printing of commands needs a complete redo.
このコメントは、コマンドの出力方法全体が将来的に見直されるべきであるという認識を示しています。つまり、今回の変更は一時的な改善であり、より根本的な解決策が issue 5279
で議論されていることを示唆しています。
具体的な変更は、joinUnambiguously
関数内で、引数が空の文字列である場合に ""
とクォートして出力するように修正されたと考えられます。これにより、go test -x
のようなデバッグ出力において、空の引数が明確に ""
と表示されるようになり、可読性が大幅に向上しました。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/cmd/go/build.go
+++ b/src/cmd/go/build.go
@@ -1306,6 +1306,7 @@ func (b *builder) runOut(dir string, desc string, env []string, cmdargs ...inter
// joinUnambiguously prints the slice, quoting where necessary to make the
// output unambiguous.
+// TODO: See issue 5279. The printing of commands needs a complete redo.
func joinUnambiguously(a []string) string {
var buf bytes.Buffer
for i, s := range a {
コアとなるコードの解説
このコミットで追加されたコードは、src/cmd/go/build.go
ファイル内の joinUnambiguously
関数に1行のコメントを追加するものです。
// TODO: See issue 5279. The printing of commands needs a complete redo.
このコメントは、joinUnambiguously
関数の直前に配置されており、この関数が担当する「コマンドの出力」に関する将来的な改善の必要性を示唆しています。具体的には、issue 5279
で、コマンドの出力方法全体を根本的に見直す必要があるという議論が行われていることを示しています。
このコミット自体は、このコメントの追加と、おそらく joinUnambiguously
関数の内部ロジックで空の引数をクォートする修正が行われたことを示唆しています(diffにはその具体的なロジック変更は含まれていませんが、コミットメッセージからその変更があったと推測されます)。コメントの追加は、この一時的な修正が行われた一方で、より包括的な解決策が検討されていることを開発者に伝えるためのものです。
joinUnambiguously
関数は、Goツールチェーンが外部コマンドを実行する際に、そのコマンドと引数をデバッグ目的でログに出力する際に使用されます。この関数が引数を適切にクォートすることで、出力されたコマンド文字列がシェルで直接実行可能であるかのように、より正確で理解しやすい形式になります。
関連リンク
- Go CL 8633043: https://golang.org/cl/8633043 (このコミットに対応するGoのコードレビューシステム上のチェンジリスト)
- Go Issue 5279: https://github.com/golang/go/issues/5279 (コマンド出力の再設計に関する議論が行われているGoのIssue)
参考にした情報源リンク
- https://golang.org/cl/8633043
- https://github.com/golang/go/issues/5279
- Go言語の公式ドキュメント (go test -x オプションに関する情報)
- シェルスクリプトにおけるコマンドライン引数のクォートに関する一般的な情報