[インデックス 16211] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の公式ドキュメントである「Effective Go」内のタイポ(誤字)を修正するものです。具体的には、panic
とrecover
に関するセクションにおいて、文法的な誤りを修正し、ドキュメントの正確性と可読性を向上させています。
コミット
- コミットハッシュ:
994c486aa93a443a6cd32a4caa0884b2129392d5
- Author: Andrew Gerrand adg@golang.org
- Date: Mon Apr 22 16:57:23 2013 +0200
- メッセージ:
doc: fix typo in Effective Go Fixes #5329. R=golang-dev, bradfitz CC=golang-dev https://golang.org/cl/8897044
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/994c486aa93a443a6cd32a4caa0884b2129392d5
元コミット内容
doc: fix typo in Effective Go
Fixes #5329.
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/8897044
変更の背景
この変更は、Go言語の公式ドキュメント「Effective Go」における誤字を修正することを目的としています。コミットメッセージにある Fixes #5329
は、おそらくGoプロジェクトの内部的な課題追跡システムにおける特定の課題(Issue)に対応するものです。このタイポは、panic
とrecover
のメカニズム、特に名前付き戻り値(named return values)の挙動を説明する箇所に存在しており、ドキュメントの正確性を保つために修正が必要とされました。
前提知識の解説
Effective Go
「Effective Go」は、Go言語の公式ドキュメントの一つで、Goプログラミングにおける慣用的な書き方、ベストプラクティス、設計原則などを解説しています。Go言語で効率的かつ効果的なコードを書くためのガイドラインとして、Go開発者にとって非常に重要なリソースです。
Goにおけるpanic
とrecover
Go言語には、エラーハンドリングのための2つの主要なメカニズムがあります。
- エラー(
error
インターフェース): 予期されるエラーや、プログラムの正常な実行フロー内で処理できる問題に対して使用されます。Goでは、関数がエラーを返す場合、通常は戻り値の最後の要素としてerror
型を返します。 - パニック(
panic
): 予期せぬエラーや、回復不能な状況(例: 配列の範囲外アクセス、nilポインタ参照)が発生した場合に、プログラムの実行を停止させるために使用されます。panic
が発生すると、現在の関数の実行が直ちに停止し、遅延関数(defer
で登録された関数)が実行され、その後呼び出し元の関数へとスタックを遡ってpanic
が伝播していきます。
recover
関数
recover
は、panic
が発生した際にそのpanic
を捕捉し、プログラムの実行を再開させるために使用される組み込み関数です。recover
は、defer
された関数内でのみ有効です。defer
された関数内でrecover
が呼び出されると、panic
の値(panic
に渡された引数)が返され、panic
の伝播が停止します。recover
がdefer
された関数以外で呼び出された場合、またはpanic
が発生していないときに呼び出された場合、nil
を返します。
名前付き戻り値(Named Return Values)
Goの関数は、戻り値に名前を付けることができます。これにより、戻り値が明確になり、特に複数の戻り値がある場合にコードの可読性が向上します。名前付き戻り値は、関数の本体内で通常の変数として扱われ、初期値はゼロ値(数値型なら0、文字列型なら""、ポインタ型ならnilなど)です。return
ステートメントで明示的に値を指定しない場合、名前付き戻り値の現在の値が返されます。
このコミットで修正された箇所は、panic
が発生した際にrecover
が名前付き戻り値をどのように変更できるかという点に触れています。
型アサーション(Type Assertion)
Goのインターフェース型は、そのインターフェースを実装する任意の具体的な型の値を保持できます。型アサーションは、インターフェース値が特定の具体的な型を保持しているかどうかをチェックし、その具体的な型の値に変換するために使用されます。
構文は value.(Type)
です。
v := i.(T)
:i
が型T
を保持している場合、その値がv
に代入されます。そうでない場合、panic
が発生します。v, ok := i.(T)
:i
が型T
を保持している場合、v
に値が代入され、ok
はtrue
になります。そうでない場合、ok
はfalse
になり、v
は型T
のゼロ値になります。この形式は、panic
を避けて型チェックを行うためによく使用されます。
このコミットの文脈では、recover
された値が特定のカスタムエラー型(Error
)であるかどうかを型アサーションで確認している部分に言及しています。
技術的詳細
修正されたタイポは、「Effective Go」の「Defer, Panic, and Recover」セクションにあります。元の文章は以下の通りでした。
If doParse panics, the recovery block will set the
return value to nil—deferred functions can modify
named return values. It then will then check, in the assignment
to err, that the problem was a parse error by asserting
that it has the local type Error.
この文章の It then will then check
の部分に注目してください。「then」が重複しています。これは文法的に誤っており、読者に混乱を与える可能性があります。
修正後の文章は以下の通りです。
If doParse panics, the recovery block will set the
return value to nil—deferred functions can modify
named return values. It will then check, in the assignment
to err, that the problem was a parse error by asserting
that it has the local type Error.
It will then check
と修正され、重複が解消されています。この修正により、文章がより自然で正確になり、読者がpanic
とrecover
、そして名前付き戻り値の挙動を正しく理解するのに役立ちます。
このタイポは、技術的な内容そのものに誤りをもたらすものではありませんが、公式ドキュメントの品質と信頼性を維持するためには、このような細かな修正も重要です。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/doc/effective_go.html
+++ b/doc/effective_go.html
@@ -3414,7 +3414,7 @@ func Compile(str string) (regexp *Regexp, err error) {
<p>
If <code>doParse</code> panics, the recovery block will set the
return value to <code>nil</code>—deferred functions can modify
-named return values. It then will then check, in the assignment
+named return values. It will then check, in the assignment
to <code>err</code>, that the problem was a parse error by asserting
that it has the local type <code>Error</code>.
If it does not, the type assertion will fail, causing a run-time error
コアとなるコードの解説
変更は doc/effective_go.html
ファイルの3414行目付近にあります。
-named return values. It then will then check, in the assignment
- 削除された行です。ここで「then」が重複しています。
+named return values. It will then check, in the assignment
- 追加された行です。重複する「then」が削除され、「It will then check」という正しい表現になっています。
この変更は、panic
が発生した際にrecover
ブロックがどのように機能するかを説明する文脈で行われています。具体的には、doParse
という関数がパニックを起こした場合、recover
ブロックが戻り値をnil
に設定できること(遅延関数が名前付き戻り値を変更できるため)、そしてその後にerr
への代入において、問題がError
型のパースエラーであったかどうかを型アサーションによってチェックするという一連の流れを説明しています。
この修正は、ドキュメントの文章の流暢さと正確性を向上させるためのものであり、Go言語の機能そのものに変更を加えるものではありません。
関連リンク
- Go CL 8897044: https://golang.org/cl/8897044
参考にした情報源リンク
- Effective Go (公式ドキュメント): https://go.dev/doc/effective_go
- A Tour of Go - Defer, Panic, and Recover: https://go.dev/tour/moretypes/18
- Go言語の型アサーション: https://go.dev/tour/methods/15
- Go言語の名前付き戻り値: https://go.dev/doc/effective_go#named-results