[インデックス 16268] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の image/png
パッケージにおけるエラーメッセージの不具合を修正するものです。具体的には、Encode
関数内で画像サイズが無効な場合に返されるエラーメッセージにおいて、幅(width)の値が誤って2回出力されてしまう問題を解決しています。これにより、ユーザーに対してより正確なエラー情報が提供されるようになります。
コミット
commit 1294f14f1fb632a963df2af39a97b496e49fe9a8
Author: Brad Fitzpatrick <bradfitz@golang.org>
Date: Mon May 6 09:59:33 2013 -0700
image/png: fix error message to not return width twice
Fixes #5413
R=golang-dev, dave, adg
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/9153045
---
src/pkg/image/png/writer.go | 2 +--
1 file changed, 1 insertion(+), 1 deletion(-)
diff --git a/src/pkg/image/png/writer.go b/src/pkg/image/png/writer.go
index 093d47193b..629452cbfa 100644
--- a/src/pkg/image/png/writer.go
+++ b/src/pkg/image/png/writer.go
@@ -436,7 +436,7 @@ func Encode(w io.Writer, m image.Image) error {
// also rejected.
mw, mh := int64(m.Bounds().Dx()), int64(m.Bounds().Dy())
if mw <= 0 || mh <= 0 || mw >= 1<<32 || mh >= 1<<32 {\n-\t\treturn FormatError(\"invalid image size: \" + strconv.FormatInt(mw, 10) + \"x\" + strconv.FormatInt(mw, 10))\n+\t\treturn FormatError(\"invalid image size: \" + strconv.FormatInt(mw, 10) + \"x\" + strconv.FormatInt(mh, 10))\n \t}\n \n \tvar e encoder\n```
## GitHub上でのコミットページへのリンク
[https://github.com/golang/go/commit/1294f14f1fb632a963df2af39a97b496e49fe9a8](https://github.com/golang/go/commit/1294f14f1fb632a963df2af39a97b496e49fe9a8)
## 元コミット内容
image/png: fix error message to not return width twice
Fixes #5413
R=golang-dev, dave, adg CC=golang-dev https://golang.org/cl/9153045
## 変更の背景
このコミットは、Go言語の標準ライブラリである `image/png` パッケージにおいて、PNG画像をエンコードする際に発生するエラーメッセージの誤りを修正するために行われました。具体的には、Go issue #5413 で報告された問題に対応しています。
Go issue #5413 の内容は、`image/png` パッケージの `Encode` 関数が、無効な画像サイズ(例えば、幅や高さが0以下、または非常に大きい値)を受け取った際に返すエラーメッセージが不正確であるというものでした。本来であれば "invalid image size: WIDTHxHEIGHT" の形式で幅と高さを表示すべきところ、誤って "invalid image size: WIDTHxWIDTH" のように幅の値を2回表示してしまっていました。
このようなエラーメッセージの誤りは、開発者が問題の原因を特定する際に混乱を招く可能性があります。特に、画像処理のような数値的な正確性が求められる分野では、エラーメッセージの正確性はデバッグの効率に直結します。この修正は、ユーザーがより迅速かつ正確に問題に対処できるよう、エラーメッセージの品質を向上させることを目的としています。
## 前提知識の解説
このコミットを理解するためには、以下のGo言語の概念と画像処理に関する基本的な知識が必要です。
* **`image` パッケージ**: Go言語の標準ライブラリで、基本的な画像処理機能を提供します。`image.Image` インターフェースは、様々な画像フォーマット(PNG, JPEGなど)を抽象化して扱えるように定義されています。
* **`image/png` パッケージ**: `image` パッケージの一部で、PNG形式の画像をエンコード(書き出し)およびデコード(読み込み)するための機能を提供します。
* **`io.Writer` インターフェース**: データを書き込むための汎用的なインターフェースです。`image/png.Encode` 関数は、このインターフェースを実装する任意の型(例: `os.File`, `bytes.Buffer`)にPNGデータを書き出すことができます。
* **`image.Image.Bounds()` メソッド**: `image.Image` インターフェースが持つメソッドで、画像の境界(矩形)を `image.Rectangle` 型で返します。
* **`image.Rectangle.Dx()` メソッド**: `image.Rectangle` 型のメソッドで、矩形の幅(X軸方向のサイズ)を返します。
* **`image.Rectangle.Dy()` メソッド**: `image.Rectangle` 型のメソッドで、矩形の高さ(Y軸方向のサイズ)を返します。
* **`strconv.FormatInt(i int64, base int)` 関数**: `strconv` パッケージの関数で、`int64` 型の整数 `i` を指定された基数 `base`(例: 10進数なら `10`)の文字列に変換します。
* **`FormatError` 型**: `image/png` パッケージ内で定義されているエラー型で、PNGフォーマットに関するエラーを示すために使用されます。
* **PNG (Portable Network Graphics)**: 可逆圧縮のビットマップ画像フォーマットです。ウェブ上で広く利用されており、透明度(アルファチャンネル)をサポートします。
## 技術的詳細
このコミットの技術的な核心は、エラーメッセージの文字列生成ロジックの修正にあります。
`src/pkg/image/png/writer.go` ファイルの `Encode` 関数は、`image.Image` インターフェースを実装する画像データと `io.Writer` インターフェースを実装する出力先を受け取り、画像をPNG形式でエンコードします。
エンコード処理の初期段階で、入力された画像のサイズ(幅 `mw` と高さ `mh`)が有効であるかどうかのチェックが行われます。具体的には、幅または高さが0以下であるか、あるいは `1<<32` (約40億) 以上である場合に、無効な画像サイズとしてエラーを返します。これは、PNGの仕様やシステムのリソース制約に起因する可能性があります。
問題のあったコードは以下の部分でした。
```go
return FormatError("invalid image size: " + strconv.FormatInt(mw, 10) + "x" + strconv.FormatInt(mw, 10))
ここで、strconv.FormatInt(mw, 10)
が2回使われており、結果としてエラーメッセージが "invalid image size: WIDTHxWIDTH" の形式になっていました。これは、幅 (mw
) と高さ (mh
) の両方を表示すべき箇所で、誤って幅の値を繰り返してしまっていた単純なタイプミスです。
修正後のコードは以下のようになります。
return FormatError("invalid image size: " + strconv.FormatInt(mw, 10) + "x" + strconv.FormatInt(mh, 10))
この変更により、2回目の strconv.FormatInt
の引数が mw
から mh
に修正され、エラーメッセージは期待通り "invalid image size: WIDTHxHEIGHT" の形式で出力されるようになりました。これにより、開発者はエラーメッセージから画像の正確な寸法(幅と高さ)を把握できるようになり、デバッグ作業が容易になります。
この修正は、Go言語の標準ライブラリの品質と信頼性を向上させるための、細部への注意と継続的な改善の一例と言えます。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/pkg/image/png/writer.go
+++ b/src/pkg/image/png/writer.go
@@ -436,7 +436,7 @@ func Encode(w io.Writer, m image.Image) error {
// also rejected.
mw, mh := int64(m.Bounds().Dx()), int64(m.Bounds().Dy())
if mw <= 0 || mh <= 0 || mw >= 1<<32 || mh >= 1<<32 {\n-\t\treturn FormatError(\"invalid image size: \" + strconv.FormatInt(mw, 10) + \"x\" + strconv.FormatInt(mw, 10))\n+\t\treturn FormatError(\"invalid image size: \" + strconv.FormatInt(mw, 10) + \"x\" + strconv.FormatInt(mh, 10))\n \t}\n \n \tvar e encoder\n```
## コアとなるコードの解説
変更は `src/pkg/image/png/writer.go` ファイルの `Encode` 関数内、具体的には437行目で行われています。
元のコード:
```go
return FormatError("invalid image size: " + strconv.FormatInt(mw, 10) + "x" + strconv.FormatInt(mw, 10))
この行では、FormatError
関数を呼び出してエラーを生成しています。エラーメッセージの文字列は、"invalid image size: "
に続けて、画像の幅 mw
を文字列化したもの、"x"
、そして再び幅 mw
を文字列化したものを連結して作成されていました。これにより、例えば幅が100、高さが200の無効な画像の場合、「invalid image size: 100x100」という誤ったメッセージが出力されていました。
修正後のコード:
return FormatError("invalid image size: " + strconv.FormatInt(mw, 10) + "x" + strconv.FormatInt(mh, 10))
修正後のコードでは、2回目の strconv.FormatInt
の引数が mw
から mh
に変更されています。mh
は画像の高さ(height)を表す変数です。この変更により、エラーメッセージは "invalid image size: "
に続けて、幅 mw
、"x"
、そして高さ mh
を正確に連結したものとなります。これにより、上記の例では「invalid image size: 100x200」という正しいエラーメッセージが出力されるようになります。
この修正は非常に小さいですが、エラーメッセージの正確性を確保し、デバッグ時のユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させる重要な変更です。
関連リンク
- GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/1294f14f1fb632a963df2af39a97b496e49fe9a8
- Go Code Review (CL) ページ: https://golang.org/cl/9153045
- Go Issue #5413: https://github.com/golang/go/issues/5413
参考にした情報源リンク
- Go issue #5413:
image/png: Encode returns wrong error message for invalid image size
- https://github.com/golang/go/issues/5413 - GoDoc
image
package: https://pkg.go.dev/image - GoDoc
image/png
package: https://pkg.go.dev/image/png - GoDoc
strconv
package: https://pkg.go.dev/strconv - PNG (Portable Network Graphics) - Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/Portable_Network_Graphics