[インデックス 16285] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の公式ドキュメントの一部であるdoc/go1.1.html
ファイルに対する変更を記録しています。具体的には、Go 1.1リリースノートに「New packages」(新しいパッケージ)セクションを追加し、このリリースで導入された主要な新パッケージに関する情報を集約することを目的としています。
コミット
commit 0ae5036b268648305496acc09e0875b258c95e0d
Author: Nigel Tao <nigeltao@golang.org>
Date: Sun May 12 21:58:27 2013 -0700
doc: add a "New packages" section to the 1.1 release notes.
R=adg, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/9344044
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/0ae5036b268648305496acc09e0875b258c95e0d
元コミット内容
このコミットの元のメッセージは以下の通りです。
doc: add a "New packages" section to the 1.1 release notes.
R=adg, r CC=golang-dev https://golang.org/cl/9344044
これは、Go 1.1のリリースノートに「New packages」という新しいセクションを追加する意図を明確に示しています。R=
はレビュー担当者、CC=
はカーボンコピーの対象、https://golang.org/cl/9344044
はGoのコードレビューシステム(Gerrit)における変更リスト(Change-ID)へのリンクを示しています。
変更の背景
Go言語は継続的に進化しており、新しいリリースごとに言語機能、標準ライブラリ、ツールなどが追加・改善されます。Go 1.1は、Go言語にとって重要なマイルストーンとなるリリースであり、パフォーマンスの向上、言語仕様の微調整、そして新しい標準パッケージの導入が含まれていました。
このコミットが行われた背景には、Go 1.1で導入された新しいパッケージ群を、ユーザーがリリースノートを通じて容易に把握できるようにするという目的があります。以前は、これらの新しいパッケージに関する情報がリリースノートの「Minor changes to the library」セクションなどに散在しており、見つけにくい状態でした。この変更により、新パッケージに関する情報を一箇所に集約し、可読性と情報アクセシビリティを向上させることが図られました。
前提知識の解説
このコミットの理解を深めるためには、以下の前提知識が役立ちます。
- Go言語のリリースノート: Go言語は、新しいバージョンがリリースされるたびに、その変更点や新機能、改善点などをまとめたリリースノートを公開します。これらは通常、公式ウェブサイトの
golang.org/doc/goX.Y.html
のようなパスで提供されます。リリースノートは、Goユーザーが新しいバージョンに移行する際に参照する重要なドキュメントです。 go fmt
コマンド:go fmt
は、Go言語のソースコードを標準的なスタイルに自動整形するツールです。Goコミュニティでは、コードの一貫性を保つためにgo fmt
の使用が強く推奨されています。- HTTP Cookie: HTTP Cookieは、ウェブサイトがユーザーのブラウザに保存する小さなデータのことです。これにより、ユーザーのセッション管理、パーソナライゼーション、トラッキングなどが可能になります。
- データ競合 (Data Race): データ競合は、並行プログラミングにおいて複数のゴルーチン(またはスレッド)が共有データに同時にアクセスし、少なくとも1つのアクセスが書き込みであり、かつそれらのアクセスが同期メカニズムによって保護されていない場合に発生するバグです。データ競合はプログラムの予測不能な動作やクラッシュを引き起こす可能性があり、検出が困難な場合があります。
- Goのパッケージシステム: Go言語は、コードを整理し再利用するためのパッケージシステムを採用しています。標準ライブラリは多数のパッケージで構成されており、それぞれが特定の機能を提供します(例:
net/http
はHTTP通信、os
はオペレーティングシステムとのインタラクション)。
技術的詳細
このコミットは、Go 1.1で導入された以下の3つの重要な新パッケージについて、リリースノートに詳細な説明を追加しています。
-
go/format
パッケージ:- 目的: このパッケージは、プログラムから
go fmt
コマンドのコード整形機能にアクセスするための便利な方法を提供します。これにより、Goのソースコードをプログラム的に整形したり、Goの抽象構文木(AST)ノードを整形したりすることが可能になります。 - 主要な関数:
format.Node(output io.Writer, fset *token.FileSet, node interface{}) error
: Goパーサーのast.Node
を整形し、指定されたio.Writer
に出力します。format.Source(src []byte) ([]byte, error)
: 任意のGoソースコード(バイトスライスとして)を標準フォーマットに整形し、整形されたバイトスライスを返します。これはgo fmt
コマンドが提供する整形機能と同一です。
- 重要性: 開発ツールやIDE、コード生成ツールなどが、Goのコードを自動的に整形する機能を提供するために利用できます。
- 目的: このパッケージは、プログラムから
-
net/http/cookiejar
パッケージ:- 目的: このパッケージは、HTTPクッキーを管理するための基本的な機能を提供します。ウェブクライアントがHTTPリクエスト間でクッキーを保存し、次のリクエストで適切に送信するために使用されます。
- 機能:
cookiejar.Jar
型は、HTTPクライアントがクッキーを保存し、ドメインやパスに基づいて適切なクッキーを検索してリクエストに追加するためのインターフェースを実装します。これにより、ウェブサイトとのセッション管理が容易になります。 - 重要性: HTTPクライアントを実装する際に、クッキーの送受信を自動化し、セッション管理を簡素化するために不可欠です。
-
runtime/race
パッケージ:- 目的: このパッケージは、Goのデータ競合検出器(Race Detector)のための低レベルな機能を提供します。データ競合検出器は、並行プログラムにおけるデータ競合バグを特定するためのツールです。
- 特性: このパッケージは、データ競合検出器の内部実装に特化しており、ユーザーが直接利用することを意図したものではありません。そのため、ユーザーが直接呼び出すようなエクスポートされた機能は提供していません。
- 重要性: Goの並行プログラミングにおけるデータ競合という深刻なバグを特定するための強力なツールであるデータ競合検出器の基盤を形成しています。Go 1.1で導入されたデータ競合検出器は、Goの並行性の安全性を高める上で非常に重要な機能でした。
コアとなるコードの変更箇所
このコミットは、doc/go1.1.html
ファイルに対して以下の変更を加えています。
--- a/doc/go1.1.html
+++ b/doc/go1.1.html
@@ -694,6 +694,36 @@ The old package <code>exp/norm</code> has also been moved, but to a new reposito
be developed.\n </p>\n \n+<h3 id=\"new_packages\">New packages</h3>\n+\n+<p>\n+There are three new packages.\n+</p>\n+\n+<ul>\n+<li>\n+The <a href=\"/pkg/go/format/\"><code>go/format</code></a> package provides\n+a convenient way for a program to access the formatting capabilities of the\n+<a href=\"/cmd/go/#hdr-Run_gofmt_on_package_sources\"><code>go fmt</code></a> command.\n+It has two functions,\n+<a href=\"/pkg/go/format/#Node\"><code>Node</code></a> to format a Go parser\n+<a href=\"/pkg/go/ast/#Node\"><code>Node</code></a>,\n+and\n+<a href=\"/pkg/go/format/#Source\"><code>Source</code></a>\n+to reformat arbitrary Go source code into the standard format as provided by the\n+<a href=\"/cmd/go/#hdr-Run_gofmt_on_package_sources\"><code>go fmt</code></a> command.\n+</li>\n+\n+<li>\n+The <a href=\"/pkg/net/http/cookiejar/\"><code>net/http/cookiejar</code></a> package provides the basics for managing HTTP cookies.\n+</li>\n+\n+<li>\n+The <a href=\"/pkg/runtime/race/\"><code>runtime/race</code></a> package provides low-level facilities for data race detection.\n+It is internal to the race detector and does not otherwise export any user-visible functionality.\n+</li>\n+</ul>\n+\n <h3 id=\"minor_library_changes\">Minor changes to the library</h3>\n \n <p>\n@@ -796,17 +826,6 @@ information that the <a href=\"/cmd/godoc/\"><code>godoc</code></a>\n command can filter or present according to the value of the <code>-notes</code> flag.\n </li>\n \n-<li>\n-A new package, <a href=\"/pkg/go/format/\"><code>go/format</code></a>, provides\n-a convenient way for a program to access the formatting capabilities of <code>gofmt</code>.\n-It has two functions,\n-<a href=\"/pkg/go/format/#Node\"><code>Node</code></a> to format a Go parser\n-<a href=\"/pkg/go/ast/#Node\"><code>Node</code></a>,\n-and\n-<a href=\"/pkg/go/format/#Source\"><code>Source</code></a>\n-to format arbitrary Go source code.\n-</li>\n-\n <li>\n The undocumented and only partially implemented \"noescape\" feature of the\n <a href=\"/pkg/html/template/\"><code>html/template</code></a>\n@@ -943,10 +962,6 @@ a <a href=\"/pkg/net/http/#Response\"><code>Response.Body</code></a> is closed bef\n being fully consumed.\n </li>\n \n-<li>\n-The new <a href=\"/pkg/net/http/cookiejar/\"><code>net/http/cookiejar</code></a> package provides the basics for managing HTTP cookies.\n-</li>\n-\n <li>\n The <a href=\"/pkg/net/mail/\"><code>net/mail</code></a> package has two new functions,\n <a href=\"/pkg/net/mail/#ParseAddress\"><code>ParseAddress</code></a> and\n```
具体的には、以下の変更が行われました。
1. **新しいセクションの追加**:
* `<h3>`タグで`id="new_packages"`を持つ「New packages」という新しい見出しが追加されました。
* その下に、新しいパッケージが3つあることを示す`<p>`タグが追加されました。
* これら3つのパッケージ(`go/format`, `net/http/cookiejar`, `runtime/race`)に関する詳細な説明を含む`<ul>`リストが追加されました。各リスト項目には、パッケージへのリンク、その目的、および主要な機能(`go/format`の場合)が記述されています。
2. **既存の記述の削除**:
* 以前「Minor changes to the library」セクション内に散在していた`go/format`パッケージに関する記述が削除されました。
* 同様に、「Minor changes to the library」セクション内にあった`net/http/cookiejar`パッケージに関する記述も削除されました。
## コアとなるコードの解説
このコミットのコアとなる変更は、Go 1.1リリースノートの構造と内容を改善することにあります。
* **情報集約と可読性の向上**: 以前は、新しいパッケージに関する情報がリリースノートの様々な場所に分散していました。この変更により、`go/format`、`net/http/cookiejar`、`runtime/race`という3つの重要な新パッケージに関する情報が「New packages」という専用のセクションに集約されました。これにより、ユーザーはGo 1.1で導入された新しいパッケージを一目で確認できるようになり、リリースノート全体の可読性と情報アクセシビリティが大幅に向上しました。
* **明確な階層構造**: `<h3>`タグで新しいセクションを設けることで、リリースノートのコンテンツに明確な階層構造が導入されました。これにより、ユーザーは特定の種類の情報(この場合は新パッケージ)をより簡単に見つけることができます。
* **詳細な説明の提供**: 各パッケージについて、その目的、提供する機能、そして場合によってはその重要性について、より詳細な説明が提供されています。特に`go/format`については、`Node`と`Source`という2つの主要な関数が明記され、それぞれの役割が説明されています。`runtime/race`については、その内部的な性質が強調されています。
この変更は、単なるドキュメントの修正以上の意味を持ちます。それは、Goプロジェクトがユーザーエクスペリエンスとドキュメントの品質を重視していることの表れであり、新しい機能が導入された際に、それがユーザーにどのように伝わるかを考慮していることを示しています。
## 関連リンク
* GitHub上のコミットページ: [https://github.com/golang/go/commit/0ae5036b268648305496acc09e0875b258c95e0d](https://github.com/golang/go/commit/0ae5036b268648305496acc09e0875b258c95e0d)
* Go Gerrit変更リスト: [https://golang.org/cl/9344044](https://golang.org/cl/9344044)
* Go 1.1リリースノート (変更後の最終版): [https://golang.org/doc/go1.1](https://golang.org/doc/go1.1)
## 参考にした情報源リンク
* Go 1.1 Release Notes: [https://golang.org/doc/go1.1](https://golang.org/doc/go1.1)
* `go/format` package documentation: [https://pkg.go.dev/go/format](https://pkg.go.dev/go/format)
* `net/http/cookiejar` package documentation: [https://pkg.go.dev/net/http/cookiejar](https://pkg.go.dev/net/http/cookiejar)
* `runtime/race` package documentation: [https://pkg.go.dev/runtime/race](https://pkg.go.dev/runtime/race)
* The Go Race Detector: [https://go.dev/blog/race-detector](https://go.dev/blog/race-detector)
* Go Fmt: [https://go.dev/blog/gofmt](https://go.dev/blog/gofmt)