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[インデックス 16339] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のランタイムおよびコンパイラ(cmd/gc)におけるC言語の関数プロトタイプの記述スタイルを整理し、統一することを目的としています。具体的には、関数定義の開き括弧 { の位置を、関数名の行から次の行に移動させる変更が行われています。これは機能的な変更ではなく、コードの可読性と一貫性を向上させるための整形作業です。

コミット

commit 2dc751ac21ce8f7c9bf33a8ffd5c5f1b86dc0c17
Author: Anthony Martin <ality@pbrane.org>
Date:   Sat May 18 15:49:23 2013 -0700

    runtime, cmd/gc: clean up function protoypes

    R=golang-dev, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/8652043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/2dc751ac21ce8f7c9bf33a8ffd5c5f1b86dc0c17

元コミット内容

runtime, cmd/gc: clean up function protoypes

このコミットは、Go言語のランタイムとコンパイラ(cmd/gc)内のC言語コードにおける関数プロトタイプの記述を整理するものです。

変更の背景

Go言語のプロジェクトでは、コードベース全体で一貫したコーディングスタイルを維持することが重視されています。特に、C言語で書かれたランタイムやコンパイラの一部では、関数定義の開き括弧 { の位置に関して複数のスタイルが混在していることがありました。このコミットは、これらの関数プロトタイプを特定のスタイル(開き括弧を関数名の次の行に配置するスタイル)に統一し、コードの可読性と保守性を向上させることを目的としています。機能的な変更は伴わず、純粋にコードの整形(リファクタリング)が目的です。

前提知識の解説

C言語の関数プロトタイプと定義

C言語において、関数は「プロトタイプ宣言」と「定義」の二段階で扱われることがあります。

  • 関数プロトタイプ宣言: 関数の名前、戻り値の型、引数の型と数をコンパイラに伝えるものです。これにより、関数が定義される前にその関数を呼び出すことが可能になります。 例: int add(int a, int b);
  • 関数定義: 関数の実際の処理内容(本体)を記述するものです。 例:
    int add(int a, int b) {
        return a + b;
    }
    
    または
    int add(int a, int b)
    {
        return a + b;
    }
    
    本コミットで変更されているのは、この関数定義における開き括弧 { の位置に関するスタイルです。

コーディングスタイルと可読性

プログラミングにおいて、コーディングスタイルはコードの見た目や構造に関する一連の規則です。これには、インデント、命名規則、括弧の位置などが含まれます。一貫したコーディングスタイルは、以下の点で重要です。

  • 可読性の向上: 統一されたスタイルは、コードを読みやすくし、理解しやすくします。
  • 保守性の向上: 開発者が異なる部分のコードを修正する際に、スタイルの違いによる混乱を避けることができます。
  • 共同作業の効率化: 複数の開発者が同じプロジェクトで作業する際に、コードの統合がスムーズになります。

Go言語のプロジェクトでは、gofmt などのツールによってGo言語のコードスタイルが自動的に整形されますが、C言語で書かれた部分については手動または他のツールによる整形が必要となる場合があります。

Go言語の runtimecmd/gc

  • runtime: Go言語のランタイムは、ガベージコレクション、スケジューリング、メモリ管理、ゴルーチンなど、Goプログラムの実行を支える低レベルな機能を提供します。この部分はC言語(およびアセンブリ言語)で書かれていることが多いです。
  • cmd/gc: Go言語のコンパイラの一部であり、Goのソースコードを機械語に変換する役割を担います。コンパイラの一部もC言語で書かれています。

これらの低レベルなコンポーネントのコードは、Go言語のパフォーマンスと安定性に直結するため、その可読性と保守性は非常に重要です。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、C言語の関数定義における開き括弧 { の配置スタイルを統一することにあります。変更前は、開き括弧が関数名の行の末尾に配置されている箇所(K&Rスタイルに類似)と、次の行に独立して配置されている箇所(Allmanスタイルに類似)が混在していました。このコミットでは、後者のスタイル(開き括弧を次の行に配置する)に統一されています。

この変更は、コンパイラの動作やプログラムの実行結果に影響を与えるものではありません。純粋にコードの視覚的な構造を改善し、プロジェクト全体のコーディングスタイルの一貫性を高めるためのものです。このような整形作業は、大規模なコードベースにおいて、将来的なメンテナンスや新規開発者がコードを理解する際の障壁を低減する上で重要です。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットでは、以下の2つのファイルが変更されています。

  1. src/cmd/gc/reflect.c
  2. src/pkg/runtime/race.c

それぞれのファイルにおける変更の概要は以下の通りです。

src/cmd/gc/reflect.c

gcinline 関数の定義において、開き括弧 { の位置が変更されています。

--- a/src/cmd/gc/reflect.c
+++ src/cmd/gc/reflect.c
@@ -1026,7 +1026,8 @@ dalgsym(Type *t)
 }

 static int
-gcinline(Type *t) {
+gcinline(Type *t)
+{
 	switch(t->etype) {
 	case TARRAY:
 	\tif(t->bound == 1)\

src/pkg/runtime/race.c

runtime·RaceSemacquire, runtime·RaceSemrelease, runtime·RaceDisable, runtime·RaceEnable の各関数の定義において、開き括弧 { の位置が変更されています。

--- a/src/pkg/runtime/race.c
+++ src/pkg/runtime/race.c
@@ -301,13 +301,15 @@ runtime·RaceReleaseMerge(void *addr)
 }

 // func RaceSemacquire(s *uint32)
-void runtime·RaceSemacquire(uint32 *s)
+void
+runtime·RaceSemacquire(uint32 *s)
 {
 	runtime·semacquire(s);
 }

 // func RaceSemrelease(s *uint32)
-void runtime·RaceSemrelease(uint32 *s)
+void
+runtime·RaceSemrelease(uint32 *s)
 {
 	runtime·semrelease(s);
 }
@@ -329,13 +331,15 @@ runtime·RaceWrite(void *addr)
 }

 // func RaceDisable()
-void runtime·RaceDisable(void)
+void
+runtime·RaceDisable(void)
 {
 	g->raceignore++;
 }

 // func RaceEnable()
-void runtime·RaceEnable(void)
+void
+runtime·RaceEnable(void)
 {
 	g->raceignore--;
 }

コアとなるコードの解説

変更されたコードは、C言語で書かれた関数定義の構文に関するものです。

  • 変更前:

    void someFunction(Type *arg) {
        // ...
    }
    

    または

    static int gcinline(Type *t) {
        // ...
    }
    

    のように、関数名の行の末尾に開き括弧 { が配置されていました。

  • 変更後:

    void
    someFunction(Type *arg)
    {
        // ...
    }
    

    または

    static int
    gcinline(Type *t)
    {
        // ...
    }
    

    のように、関数名の次の行に開き括弧 { が独立して配置されるようになりました。

この変更は、Go言語のランタイム(src/pkg/runtime/race.c)におけるデータ競合検出に関連するセマフォ操作関数 (RaceSemacquire, RaceSemrelease) や、競合検出の有効/無効化関数 (RaceDisable, RaceEnable)、およびコンパイラ(src/cmd/gc/reflect.c)におけるインライン化関連の関数 (gcinline) に適用されています。

これらの変更は、コードの動作には一切影響を与えません。コンパイラはどちらのスタイルでも同じようにコードを解釈し、実行ファイルを生成します。この変更の唯一の目的は、GoプロジェクトのC言語コードベース全体で、関数定義のスタイルを統一し、視覚的な一貫性を高めることです。これにより、コードレビューが容易になり、新しい開発者がプロジェクトに参加した際の学習コストが削減され、長期的なコードの保守性が向上します。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (Goプロジェクトのコーディングスタイルに関する一般的な情報)
  • C言語の関数定義に関する一般的な情報 (K&Rスタイル、Allmanスタイルなど)