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[インデックス 16512] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のソースコード全体にわたる多数のタイプミス(typos)を修正することを目的としています。主にコメント、エラーメッセージ、変数名、およびその他の文字列リテラル内のスペルミスや文法的な誤りを訂正しています。

コミット

commit faef52c214c3f0cb610aff18f45bfc3e620be63a
Author: Shenghou Ma <minux.ma@gmail.com>
Date:   Sun Jun 9 21:50:24 2013 +0800

    all: fix typos
    
    R=golang-dev, bradfitz, khr, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7461046

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/faef52c214c3f0cb610aff18f45bfc3e620be63a

元コミット内容

all: fix typos

R=golang-dev, bradfitz, khr, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7461046

変更の背景

ソフトウェアプロジェクトにおいて、特にGoのような大規模で広く利用されるオープンソースプロジェクトでは、コードの品質と可読性が非常に重要です。タイプミスは、コードのコメント、エラーメッセージ、ドキュメントなどに存在すると、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

  1. 誤解の招き: 不正確なスペルや文法は、コメントやエラーメッセージの意図を誤解させる可能性があります。
  2. プロフェッショナリズムの欠如: 公式なプロジェクトにおいてタイプミスが多いと、プロジェクト全体の品質や信頼性に対する印象を損なう可能性があります。
  3. 検索性の低下: 特定のキーワードでコードベースを検索する際に、タイプミスがあると正確な情報を見つけにくくなることがあります。
  4. 一貫性の欠如: コードベース全体で異なるスペルが混在すると、一貫性が失われ、新しい貢献者が既存のスタイルを理解しにくくなります。

このコミットは、これらの問題を解消し、Go言語のソースコードの全体的な品質とプロフェッショナリズムを向上させるための、定期的なメンテナンスの一環として行われました。

前提知識の解説

  • Go言語のツールチェイン: Go言語は、コンパイラ (gc5g6g8g など)、リンカ (ld5l6l8l など)、アセンブラ (5a6a8a など) など、独自のツールチェインを持っています。これらのツールは、Goプログラムをビルドするために使用されます。
  • クロスコンパイル: Goはクロスコンパイルを強力にサポートしており、異なるアーキテクチャ(例: 5はARM、6はx86-64、8はx86-32)向けのコンパイラやツールが存在します。コミットログに src/cmd/5c/peep.csrc/cmd/6g/gsubr.c のようなパスが見られるのはそのためです。
  • peep.c: Goのコンパイラにおける「peephole optimizer」に関連するファイルです。peephole最適化は、コンパイラのバックエンドで行われる最適化の一種で、生成されたアセンブリコードの小さなシーケンス(peephole)を調べて、より効率的なシーケンスに置き換えることで、コードのパフォーマンスを向上させます。
  • gsubr.c: Goのコンパイラにおける汎用サブルーチン(general subroutines)に関連するファイルです。
  • reg.c: レジスタ割り当て(register allocation)に関連するファイルです。
  • ld: Goのリンカに関連するファイルです。
  • dwarf.c: DWARFデバッグ情報生成に関連するファイルです。DWARFは、ソースレベルデバッガがプログラムの実行を分析するために使用する標準的なデバッグファイル形式です。
  • libmach: Goのツールチェインが使用する、機械語(machine code)に関するライブラリです。
  • yacc: Yet Another Compiler Compiler の略で、構文解析器(パーサー)を生成するためのツールです。units.txtyacc の定義ファイルの一部である可能性があります。

技術的詳細

このコミットで行われた修正は、主に以下のカテゴリに分類されます。

  1. 短縮形の修正:

    • cant -> can't (cannot)
    • shouldnt -> shouldn't (should not)
    • doesnt -> doesn't (does not) これらの修正は、コメントやエラーメッセージ内の非公式な短縮形を、より正式で標準的な形に統一するものです。
  2. スペルミスの修正:

    • occurences -> occurrences (発生、出現)
    • wtih -> with (〜と共に)
    • supresses -> suppresses (抑制する)
    • neccesary -> necessary (必要な)
    • millenium -> millennium (千年紀)
    • aslo -> also (また、同様に)
    • simplier -> simpler (より単純な) これらの修正は、単純なスペルミスを訂正し、コードベースの正確性を向上させます。
  3. 文法的な修正:

    • hasprefix reports whether p begins wtih prefix. -> hasprefix reports whether p begins with prefix. これは、コメント内の文法的な誤りを修正し、より自然な英語表現にするものです。

これらの変更は、Goコンパイラ、リンカ、およびその他のツールチェインの様々な部分にわたって行われています。例えば、src/cmd/5c/peep.csrc/cmd/5g/gsubr.csrc/cmd/6g/cgen.csrc/cmd/ld/dwarf.c など、多岐にわたるファイルが影響を受けています。これは、Goプロジェクト全体でコードの品質と一貫性を維持するための継続的な努力を示しています。

修正自体は機能的な変更を伴わず、プログラムの動作に影響を与えるものではありません。しかし、開発者やユーザーがコードを読んだり、エラーメッセージを解釈したりする際の明確性を大幅に向上させます。特に、fatal エラーメッセージやデバッグ出力に含まれるタイプミスは、問題の診断を困難にする可能性があるため、これらの修正は重要です。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットは広範囲にわたるタイプミス修正のため、特定の「コアとなるコード」というよりは、多数のファイルにわたる小さな修正の集合体です。以下に代表的な変更箇所をいくつか示します。

例1: src/cmd/5c/peep.c

--- a/src/cmd/5c/peep.c
+++ b/src/cmd/5c/peep.c
@@ -462,7 +462,7 @@ copy1(Adr *v1, Adr *v2, Reg *r, int f)\n  		}\n  		t = copyu(p, v2, A);\n  		switch(t) {\n- 		case 2:	/* rar, cant split */\n+ 		case 2:	/* rar, can't split */\n  			if(debug['P'])\n  				print("; %Drar; return 0\n", v2);\n  			return 0;

cantcan't に修正されています。

例2: src/cmd/5g/gsubr.c

--- a/src/cmd/5g/gsubr.c
+++ b/src/cmd/5g/gsubr.c
@@ -1905,7 +1905,7 @@ odot:\n  \n  	for(i=1; i<o; i++) {\n  		if(oary[i] >= 0)\n- 			fatal("cant happen");\n+ 			fatal("can't happen");\n  		gins(AMOVW, &n1, reg);\n  		n1.xoffset = -(oary[i]+1);\n  	}

fatal メッセージ内の cantcan't に修正されています。

例3: src/cmd/8g/reg.c

--- a/src/cmd/8g/reg.c
+++ b/src/cmd/8g/reg.c
@@ -1824,7 +1824,7 @@ hash32to16(uint32 h)\n  static void\n  fixtemp(Prog *firstp)\n  {\n- 	static uint8 counts[1<<16]; // A hash table to count variable occurences.\n+ 	static uint8 counts[1<<16]; // A hash table to count variable occurrences.\n  	int i;\n  	Prog *p, *p2;\n  	uint32 h;

コメント内の occurencesoccurrences に修正されています。

例4: src/cmd/dist/plan9.c

--- a/src/cmd/dist/plan9.c
+++ b/src/cmd/dist/plan9.c
@@ -578,7 +578,7 @@ hassuffix(char *p, char *suffix)\n  	return np >= ns && strcmp(p+np-ns, suffix) == 0;\n  }\n  \n-// hasprefix reports whether p begins wtih prefix.\n+// hasprefix reports whether p begins with prefix.\n  bool\n  hasprefix(char *p, char *prefix)\n  {

コメント内の wtihwith に修正されています。

例5: src/cmd/ld/dwarf.c

--- a/src/cmd/ld/dwarf.c
+++ b/src/cmd/ld/dwarf.c
@@ -1646,7 +1646,7 @@ guesslang(char *s)\n  }\n  \n  /*\n-  * Generate short opcodes when possible, long ones when neccesary.\n+  * Generate short opcodes when possible, long ones when necessary.\n   * See section 6.2.5\n   */

コメント内の neccesarynecessary に修正されています。

コアとなるコードの解説

これらの変更は、Go言語のコンパイラ、リンカ、および関連ツールのソースコード全体にわたる、主にコメントや文字列リテラル内のスペルミスや文法的な誤りを修正するものです。

  • cant -> can't: これは、英語の cannot の短縮形である can't を正しく表記するための修正です。特に、fatal エラーメッセージやデバッグ出力で頻繁に登場し、プログラムが特定の操作を実行できない状況を示す際に使用されます。正確な表記は、メッセージの意図を明確にし、プロフェッショナルな印象を与えます。
  • occurences -> occurrences: これは一般的なスペルミスであり、変数の出現回数を数えるハッシュテーブルに関するコメントで修正されています。正確なスペルは、コードのドキュメントとしての価値を高めます。
  • wtih -> with: これも一般的なスペルミスで、hasprefix 関数のコメントで修正されています。コメントの可読性を向上させます。
  • neccesary -> necessary: DWARFデバッグ情報生成に関連するコメントで修正されています。技術的なドキュメントにおける正確なスペルは、理解の助けとなります。

これらの修正は、コードの機能には影響を与えませんが、コードベース全体の品質、可読性、および保守性を向上させる上で重要です。特に、Goのような大規模なオープンソースプロジェクトでは、多数の貢献者が関わるため、一貫した高品質なコードベースを維持することが不可欠です。タイプミスの修正は、このような品質保証の基本的な側面の一つと言えます。

関連リンク

参考にした情報源リンク