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[インデックス 16634] ファイルの概要

このコミットは、Goランタイムのlibmachライブラリ内のdarwin.cファイルにおいて、未使用のパラメータに関するコンパイラ警告を解消することを目的としています。具体的には、関数シグネチャには存在するものの、関数本体内で使用されていない引数に対してUSED()マクロを適用することで、警告を抑制し、コードのクリーンさを保っています。

コミット

  • コミットハッシュ: 02991bb960b4dcbcd9f9450d16df2251d964ed06
  • Author: Dave Cheney dave@cheney.net
  • Date: Tue Jun 25 10:52:37 2013 +1000
  • コミットメッセージ:
    libmach: trivial: resolve unused parameter warnings
    
    Fix a bunch of warnings detected by https://golang.org/cl/8090044
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/10483044
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/02991bb960b4dcbcd9f9450d16df2251d964ed06

元コミット内容

libmach: trivial: resolve unused parameter warnings

Fix a bunch of warnings detected by https://golang.org/cl/8090044

R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/10483044

変更の背景

この変更は、https://golang.org/cl/8090044で検出された多数のコンパイラ警告を修正するために行われました。libmachはGoランタイムの一部であり、デバッグやプロファイリングの目的で、実行中のGoプログラムのメモリやレジスタの状態を検査するために使用されます。特に、このコミットが対象としているdarwin.cは、macOS (Darwin) 環境におけるlibmachの実装に関連しています。

コンパイラが未使用のパラメータを検出すると警告を発するのは、通常、プログラマが意図しないコードを書いた可能性や、将来的にバグの原因となる可能性を指摘するためです。しかし、特定の状況下では、関数シグネチャがAPIの要件を満たすために特定のパラメータを必要とする一方で、そのパラメータが現在の実装では使用されないというケースがあります。このような場合、警告を抑制するために明示的な措置を講じるのが一般的です。このコミットでは、USED()マクロを使用してこれらの警告を抑制しています。

前提知識の解説

未使用パラメータ警告 (Unused Parameter Warning)

C言語やC++などのコンパイラは、関数定義において宣言されているが、関数本体内で一度も参照されていないパラメータ(引数)を検出すると、通常「未使用パラメータ」に関する警告を発します。この警告は、以下のような理由で重要です。

  1. 潜在的なバグの示唆: パラメータが意図的に使用されていない場合、それはロジックの欠陥や、本来行うべき処理が実装されていないことを示唆する可能性があります。
  2. コードの可読性と保守性: 未使用のパラメータは、コードを読んだ際に混乱を招く可能性があります。「なぜこのパラメータがあるのか?」「どこで使われるべきだったのか?」といった疑問を生じさせ、コードの理解を妨げます。
  3. コンパイル時間の短縮: 厳密にはパフォーマンスに直接影響するわけではありませんが、警告をなくすことで、クリーンなビルドを維持し、本当に重要な警告を見逃さないようにすることができます。

USED() マクロ

USED()マクロは、C言語のコードベースで未使用パラメータ警告を抑制するためによく用いられるテクニックです。このマクロは通常、引数として渡された変数を、実際には何もしないが、コンパイラに対してその変数が「使用された」と認識させるような形で参照します。一般的な実装は以下のようになります。

#define USED(x) (void)(x)

このマクロは、引数xvoid型にキャストしています。これにより、コンパイラはxが式の中で使用されたと判断し、未使用警告を発しなくなります。しかし、実際にはxの値はどこにも格納されず、計算も行われないため、実行時のオーバーヘッドは発生しません。これは、APIの互換性を維持しつつ、特定のパラメータが現在の実装では不要である場合に、コードをクリーンに保つための標準的な手法です。

libmach

libmachは、Goランタイムの一部として提供されるライブラリで、主にデバッグツールやプロファイリングツールが、実行中のGoプログラムの内部状態(メモリ、レジスタ、スタックなど)にアクセスするために使用されます。これは、Goプログラムの実行を外部から検査し、分析するための低レベルなインターフェースを提供します。darwin.cファイルは、macOS (Darwin) オペレーティングシステムに特化したlibmachの実装を含んでいます。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、USED()マクロの適用に集約されます。darwin.c内のいくつかの関数において、特定のパラメータが関数シグネチャには含まれているものの、その関数の現在の実装では使用されていませんでした。これは、APIの互換性、将来的な拡張性、あるいは異なるプラットフォーム間での共通インターフェースの維持といった理由によるものです。

例えば、procnotes関数はpid(プロセスID)を引数として受け取りますが、現在の実装ではこのpidを使用していません。同様に、proctextfile関数もpidを使用していません。machsegrwmachregrw関数ではseg(セグメント情報)が、catch_exception_raise関数ではeport(例外ポート)とtask(タスク情報)が未使用でした。

これらの未使用パラメータに対してUSED(parameter_name);という形式でマクロを挿入することで、コンパイラはこれらのパラメータがコード内で「使用された」と認識し、警告を発しなくなります。これにより、コンパイル時の出力がクリーンになり、開発者は本当に修正が必要な警告に集中できるようになります。この変更は、コードの機能には影響を与えず、純粋にコンパイラ警告の抑制を目的としたものです。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/libmach/darwin.cファイルに対して行われました。具体的には、以下の行が追加されています。

--- a/src/libmach/darwin.c
+++ b/src/libmach/darwin.c
@@ -391,6 +391,7 @@ detachproc(Map *m)
 int
 procnotes(int pid, char ***pnotes)
 {
+	USED(pid);
 	*pnotes = 0;
 	return 0;
 }
@@ -400,6 +401,7 @@ procnotes(int pid, char ***pnotes)
 char*
 proctextfile(int pid)
 {
+	USED(pid);
 	return nil;
 }
 
@@ -410,6 +412,8 @@ machsegrw(Map *map, Seg *seg, uvlong addr, void *v, uint n, int isr)
 	mach_port_t task;
 	int r;
 
+	USED(seg);
+
 	task = idtotask(map->pid);
 	if(task == -1)
 		return -1;
@@ -544,6 +548,8 @@ machregrw(Map *map, Seg *seg, uvlong addr, void *v, uint n, int isr)
 	} u;
 	uchar *p;
 
+	USED(seg);
+
 	if(n > 8){
 		werrstr("asked for %d-byte register", n);
 		return -1;
@@ -711,6 +717,9 @@ catch_exception_raise(mach_port_t eport, mach_port_t thread,
 	Thread *t;
 	int i;
 
+	USED(eport);
+	USED(task);
+
 	t = nil;
 	for(i=0; i<nthr; i++){
 		if(thr[i].thread == thread){
@@ -751,6 +760,7 @@ havet:
 static void*
 excthread(void *v)
 {
+	USED(v);
 	extern boolean_t exc_server(mach_msg_header_t *, mach_msg_header_t *);
 	mach_msg_server(exc_server, 2048, excport, 0);
 	return 0;

コアとなるコードの解説

各変更箇所は、特定の関数の未使用パラメータに対してUSED()マクロを適用しています。

  1. procnotes(int pid, char ***pnotes):

    • USED(pid); が追加されました。これは、pidパラメータがこの関数内で使用されていないため、コンパイラ警告を抑制します。現在の実装では、pnotes0に設定して0を返すだけで、pidの値は必要ありません。
  2. proctextfile(int pid):

    • USED(pid); が追加されました。この関数もpidパラメータを受け取りますが、常にnilを返しており、pidを使用していません。
  3. machsegrw(Map *map, Seg *seg, uvlong addr, void *v, uint n, int isr):

    • USED(seg); が追加されました。この関数はメモリセグメントの読み書きを行うためのものですが、現在の実装ではsegパラメータを直接使用していません。map->pidからタスクを取得しています。
  4. machregrw(Map *map, Seg *seg, uvlong addr, void *v, uint n, int isr):

    • USED(seg); が追加されました。この関数はレジスタの読み書きを行うためのものですが、machsegrwと同様にsegパラメータは使用されていません。
  5. catch_exception_raise(mach_port_t eport, mach_port_t thread, mach_port_t task, mach_msg_type_name_t exception, mach_msg_type_number_t code_count, mach_exception_data_t code):

    • USED(eport);USED(task); が追加されました。この例外ハンドラ関数は、eport(例外ポート)とtask(タスク)を引数として受け取りますが、現在の実装ではこれらを直接使用せず、主にthreadパラメータに基づいて処理を行っています。
  6. excthread(void *v):

    • USED(v); が追加されました。このスレッド関数はvoid *vを引数として受け取りますが、その値は使用されず、mach_msg_serverを呼び出して例外メッセージを処理するループに入ります。

これらの変更は、コードの機能的な振る舞いを一切変更せず、コンパイラ警告を抑制することで、ビルドプロセスをクリーンに保ち、開発者がより重要な問題に集中できるようにすることを目的としています。

関連リンク

  • 関連するGo CL (Changelist): https://golang.org/cl/8090044 (このコミットの警告検出元となったCL)
  • このコミットのGo CL: https://golang.org/cl/10483044

参考にした情報源リンク

  • GitHub: golang/go commit 02991bb960b4dcbcd9f9450d16df2251d964ed06
  • Go CL 8090044 (Web Search Result) - このCLは、GoランタイムのGCスイープフェーズにおける競合状態を修正するものであり、今回のコミットが修正した「未使用パラメータ警告」を検出した直接の原因ではありませんが、関連する警告検出プロセスの一部として言及されています。
  • C言語における未使用パラメータ警告とUSEDマクロに関する一般的な知識。