[インデックス 16702] ファイルの概要
このコミットは、Go 1.2 リリースノートのドキュメントファイル doc/go1.2.txt
に、sort
パッケージに新しく追加された Stable
関数に関する記述を追加するものです。これにより、Go 1.2 で安定ソート機能が導入されたことが公式ドキュメントに明記されます。
コミット
commit f3aa009a124c3ae67c9b23c20191a2ca7d435d13
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date: Wed Jul 3 11:46:09 2013 +1000
doc/go1.2.txt: stable sort
R=golang-dev, dave
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/10761048
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/f3aa009a124c3ae67c9b23c20191a2ca7d435d13
元コミット内容
doc/go1.2.txt: stable sort
変更の背景
この変更は、Go 1.2 のリリースにおいて、標準ライブラリの sort
パッケージに新しい Stable
関数が追加されたことを反映するためのものです。Go の開発チームは、言語の進化とともに標準ライブラリの機能拡充も進めており、ソート機能の強化はその一環でした。特に、安定ソートの必要性が認識され、その機能が実装されたため、ユーザーがその変更を認識できるようリリースノートに追記されました。
前提知識の解説
ソートアルゴリズム
ソートアルゴリズムとは、データ構造内の要素を特定の順序(昇順または降順)に並べ替えるためのアルゴリズムです。様々なソートアルゴリズムが存在し、それぞれ計算量、安定性、メモリ使用量などの特性が異なります。
安定ソート (Stable Sort)
安定ソートとは、ソート対象のデータに同じ値を持つ要素が複数存在する場合、それらの要素のソート前の相対的な順序が、ソート後も維持されるソートアルゴリズムのことです。
例えば、以下のようなデータがあるとします。
[(A, 1), (B, 2), (C, 1)]
ここで、括弧内の最初の要素は識別子、2番目の要素はソートキーとします。ソートキーで昇順にソートする場合、不安定ソートでは (A, 1)
と (C, 1)
の相対的な順序が保証されません。結果が [(A, 1), (C, 1), (B, 2)]
となることもあれば、[(C, 1), (A, 1), (B, 2)]
となることもあります。
一方、安定ソートでは、ソートキーが同じ (A, 1)
と (C, 1)
の元の順序(この場合 (A, 1)
が (C, 1)
より前)が維持されるため、結果は必ず [(A, 1), (C, 1), (B, 2)]
となります。
安定ソートは、複数のキーでソートを行う場合や、データの元の順序に意味がある場合に特に重要となります。
Go言語の sort
パッケージ
Go言語の標準ライブラリには、ソート機能を提供する sort
パッケージが含まれています。このパッケージは、スライスやカスタムデータ型をソートするための汎用的なインターフェースと関数を提供します。Go 1.2 以前は、sort.Sort
関数が提供されていましたが、これは安定ソートを保証するものではありませんでした(通常、クイックソートのような不安定ソートが内部的に使用されます)。
技術的詳細
Go 1.2 で sort
パッケージに追加された Stable
関数は、安定ソートアルゴリズムを実装しています。安定ソートの一般的な実装方法としては、マージソートやティムソートなどがあります。Go の sort.Stable
は、内部的にマージソートに似たアルゴリズムを使用していると考えられます。
安定ソートは、不安定ソートと比較して、一般的に以下の特性を持ちます。
- 計算量: 安定ソートは、不安定ソートよりもわずかに高い計算量を持つ場合があります。特に、最悪計算量において、不安定ソートが O(N log N) であるのに対し、安定ソートも O(N log N) を維持しつつ、定数倍のオーバーヘッドが増えることがあります。
- メモリ使用量: 安定ソートアルゴリズムの中には、追加のメモリ(O(N))を必要とするものがあります。これは、ソート中に一時的な配列を作成するためです。
Go の sort.Stable
関数は、これらの特性を考慮して設計されており、安定性を保証しつつ、実用的なパフォーマンスを提供します。ウェブ検索の結果によると、Go 1.2 で導入された Stable
関数は、標準の(不安定な)ソートアルゴリズムよりも効率が低いと指摘されていました。これは、安定性を保証するために追加の処理やメモリが必要となるため、一般的なトレードオフです。
コアとなるコードの変更箇所
このコミット自体は、Go のソースコード(Go言語で書かれたプログラム)を変更するものではなく、Go 1.2 のリリースノートのドキュメントファイル doc/go1.2.txt
を変更しています。
--- a/doc/go1.2.txt
+++ b/doc/go1.2.txt
@@ -22,4 +22,5 @@ fmt: indexed access to arguments in Printf etc. (CL 9680043).
go/build: support including C++ code with cgo (CL 8248043).
io: Copy prioritizes WriterTo over ReaderFrom (CL 9462044).
net: new build tag netgo for building a pure Go net package (CL 7100050).
+sort: new Stable function provides stable sort (CL 9612044).
testing: AllocsPerRun is now quantized to an integer (the type is still float64) (CL 9837049).
コアとなるコードの解説
上記の差分は、doc/go1.2.txt
ファイルの25行目に新しい行が追加されたことを示しています。追加された行は以下の通りです。
sort: new Stable function provides stable sort (CL 9612044).
これは、Go 1.2 のリリースで sort
パッケージに Stable
という新しい関数が追加され、それが安定ソート機能を提供することを簡潔に説明しています。括弧内の CL 9612044
は、この機能が導入された元の変更リスト(Change List)のIDを示しており、Go のコードレビューシステムである Gerrit 上での関連する変更を特定するための参照情報です。
この変更は、Go 1.2 の新機能として Stable
ソートが導入されたことをユーザーに伝えるためのドキュメント更新であり、実際のソートアルゴリズムの実装コード自体を変更するものではありません。
関連リンク
- Go の変更リスト (CL) へのリンク: https://golang.org/cl/10761048 (このコミット自体の変更リスト)
sort.Stable
関数が導入された元の変更リスト: https://golang.org/cl/9612044 (コミットメッセージに記載されているCL)