[インデックス 16703] ファイルの概要
このコミットは、Goコマンドラインツール(cmd/go
)におけるGitリポジトリのチェックアウト処理に関する修正です。具体的には、デフォルトブランチをチェックアウトする際のコマンドが origin/master
から master
へと変更されています。
コミット
commit a44009ca78b26ffc7ecda006131c424b3e7d9075
Author: David Symonds <dsymonds@golang.org>
Date: Wed Jul 3 11:56:02 2013 +1000
cmd/go: git checkout the correct default branch.
origin/master is always a remote branch, and it doesn't make sense to
switch to a remote branch. master is the default branch that tracks it.
R=adg
CC=golang-dev, matt.jibson
https://golang.org/cl/10869046
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/a44009ca78b26ffc7ecda006131c424b3e7d9075
元コミット内容
cmd/go: git checkout the correct default branch.
origin/master is always a remote branch, and it doesn't make sense to
switch to a remote branch. master is the default branch that tracks it.
R=adg
CC=golang-dev, matt.jibson
https://golang.org/cl/10869046
変更の背景
この変更は、cmd/go
ツールがGitリポジトリを扱う際に、デフォルトブランチを正しくチェックアウトできるようにするために行われました。以前の実装では、デフォルトブランチとして origin/master
を直接チェックアウトしようとしていました。しかし、origin/master
はリモート追跡ブランチであり、ローカルで直接チェックアウトして作業する対象ではありません。Gitの一般的なワークフローでは、リモート追跡ブランチ origin/master
を追跡するローカルブランチ master
をチェックアウトするのが正しい挙動です。
この誤ったチェックアウトコマンドは、go get
コマンドなどでGitリポジトリからソースコードを取得する際に問題を引き起こす可能性がありました。例えば、リポジトリをクローンした直後に origin/master
をチェックアウトしようとすると、Gitは「リモートブランチを直接チェックアウトすることはできない」というエラーを返すか、または「detached HEAD」状態になり、ユーザーが意図しない挙動となる可能性がありました。
このコミットは、このような問題を解消し、cmd/go
がGitリポジトリをより適切に扱えるようにするための修正です。
前提知識の解説
Gitにおけるブランチとリモート追跡ブランチ
Gitには、コードの異なるバージョンや開発の流れを管理するための「ブランチ」という概念があります。
- ローカルブランチ: 開発者が自分のローカルリポジトリ内で作成し、直接作業を行うブランチです。例えば、
master
やdevelop
、feature/xyz
などがあります。 - リモートリポジトリ: GitHubやGitLabなどのサーバー上に存在するリポジトリです。他の開発者とコードを共有するために使用されます。
- リモート追跡ブランチ: リモートリポジトリ上のブランチのローカルでの表現です。これらは
origin/master
やorigin/develop
のように、通常リモート名/ブランチ名
の形式で命名されます。リモート追跡ブランチは、リモートリポジトリのブランチの最新の状態を反映していますが、これらは直接チェックアウトして作業するものではありません。これらは、ローカルブランチがリモートブランチの変更を追跡するための参照点として機能します。 git checkout
コマンド: 指定されたブランチ、タグ、またはコミットに作業ツリーを切り替えるために使用されます。ローカルブランチ名を指定すると、そのブランチに切り替わり、そのブランチの最新のコミットが作業ディレクトリに反映されます。リモート追跡ブランチを直接指定すると、通常は「detached HEAD」状態になります。これは、特定のコミットを直接参照している状態であり、その状態でコミットを作成すると、どのブランチにも属さないコミットが作成されることになります。
go get
コマンド
go get
はGo言語のパッケージ管理ツールの一部であり、指定されたGoパッケージのソースコードをダウンロードし、依存関係を解決し、必要に応じてビルドするコマンドです。Gitリポジトリからパッケージを取得する場合、go get
は内部的にGitコマンドを呼び出してリポジトリをクローンし、適切なブランチやタグをチェックアウトします。このコミットは、その内部的なGit操作の一部を修正しています。
技術的詳細
このコミットは、Goのソースコード管理システム(VCS)の抽象化レイヤーである src/cmd/go/vcs.go
ファイル内の vcsGit
構造体の定義を変更しています。
vcsGit
構造体は、Gitリポジトリを操作するためのコマンドテンプレートを保持しています。この構造体には、タグの同期に関連する2つのフィールドがあります。
tagSyncCmd
: 特定のタグをチェックアウトするためのコマンドテンプレート。これはcheckout {tag}
と定義されており、例えばgit checkout v1.0.0
のように使用されます。tagSyncDefault
: デフォルトでチェックアウトするブランチまたはタグを指定するフィールド。このコミットの変更点はこのフィールドにあります。
変更前は、tagSyncDefault
が "checkout origin/master"
と設定されていました。これは、go get
がGitリポジトリをクローンした際に、デフォルトで git checkout origin/master
を実行しようとすることを意味します。前述の通り、origin/master
はリモート追跡ブランチであり、直接チェックアウトするべきではありません。
このコミットでは、tagSyncDefault
の値が "checkout master"
に変更されました。これにより、go get
はデフォルトで git checkout master
を実行するようになります。master
は通常、origin/master
を追跡するローカルブランチであり、開発者が作業を行うための適切なブランチです。この変更により、go get
はGitリポジトリをより自然で期待される方法で扱うことができるようになります。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/cmd/go/vcs.go
ファイルの1箇所のみです。
--- a/src/cmd/go/vcs.go
+++ b/src/cmd/go/vcs.go
@@ -102,7 +102,7 @@ var vcsGit = &vcsCmd{
\t\t{\"show-ref tags/{tag} origin/{tag}\", `((?:tags|origin)/\\S+)$`},\
},\
\ttagSyncCmd: \"checkout {tag}\",\
-\t\ttagSyncDefault: \"checkout origin/master\",\
+\t\ttagSyncDefault: \"checkout master\",\
\
\tscheme: []string{\"git\", \"https\", \"http\", \"git+ssh\"},\
\tpingCmd: \"ls-remote {scheme}://{repo}\",
コアとなるコードの解説
上記の差分が示すように、vcsGit
構造体の tagSyncDefault
フィールドの値が変更されています。
- 変更前:
tagSyncDefault: "checkout origin/master"
- これは、Gitリポジトリのデフォルトブランチをチェックアウトする際に、
git checkout origin/master
というコマンドが実行されることを意味していました。
- これは、Gitリポジトリのデフォルトブランチをチェックアウトする際に、
- 変更後:
tagSyncDefault: "checkout master"
- これは、Gitリポジトリのデフォルトブランチをチェックアウトする際に、
git checkout master
というコマンドが実行されることを意味します。
- これは、Gitリポジトリのデフォルトブランチをチェックアウトする際に、
この修正により、cmd/go
はGitの標準的なワークフローに沿って、リモート追跡ブランチではなく、そのリモート追跡ブランチを追跡するローカルブランチをデフォルトでチェックアウトするようになります。これにより、go get
コマンドがGitリポジトリを扱う際の堅牢性と正確性が向上しました。
関連リンク
- Go言語の公式ドキュメント:
go get
コマンドに関する詳細情報 - Gitの公式ドキュメント:
git checkout
コマンドに関する詳細情報 - Gitにおけるリモート追跡ブランチの概念
参考にした情報源リンク
- https://github.com/golang/go/commit/a44009ca78b26ffc7ecda006131c424b3e7d9075
- https://golang.org/cl/10869046
- Gitのブランチとリモート追跡ブランチに関する一般的な知識
git checkout
コマンドの動作に関する一般的な知識- Go言語の
go get
コマンドの動作に関する一般的な知識