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[インデックス 16930] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである container/list パッケージ内の list.go ファイルに対する変更です。具体的には、List 型の Len メソッドの計算量に関するドキュメントが追加されています。

コミット

commit 12a38d5b95db2221c68049fb6d2cc7abd5617304
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Tue Jul 30 13:35:14 2013 -0700

    container/list: document complexity of Len
    
    Fixes #5972.
    
    R=golang-dev, adonovan
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/12125043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/12a38d5b95db2221c68049fb6d2cc7abd5617304

元コミット内容

container/list: document complexity of Len

Fixes #5972.

R=golang-dev, adonovan CC=golang-dev https://golang.org/cl/12125043

変更の背景

このコミットの主な目的は、container/list パッケージの List 型が提供する Len メソッドの計算量(時間計算量)を明示的にドキュメントに追加することです。コミットメッセージには Fixes #5972 とありますが、Goの公式Issueトラッカーではこの番号のIssueは見つかりませんでした。しかし、この変更自体は、ユーザーや開発者が Len メソッドのパフォーマンス特性を正確に理解できるようにするためのものです。

一般的に、データ構造のメソッドの計算量は、そのデータ構造を効率的に利用するために非常に重要な情報です。特にリストのようなデータ構造では、要素数を取得する操作がO(1)(定数時間)で完了するのか、それともO(n)(線形時間、リストの要素数に比例)で完了するのかは、大規模なデータセットを扱うアプリケーションのパフォーマンスに大きな影響を与えます。このコミットは、container/list.ListLen メソッドがO(1)であることを明確にすることで、この点に関する誤解を防ぎ、より適切なデータ構造の選択を促すことを意図しています。

前提知識の解説

container/list パッケージ

container/list パッケージは、Go言語の標準ライブラリの一部であり、双方向連結リスト(doubly linked list)の実装を提供します。双方向連結リストは、各要素が前後の要素へのポインタを持つデータ構造で、リストの任意の場所への要素の挿入や削除を効率的に行うことができます。

List

container/list パッケージで定義されている List 型は、双方向連結リストを表す構造体です。この構造体は、リストの先頭要素へのポインタ、末尾要素へのポインタ、そしてリストの現在の要素数を保持する len フィールドなどを含んでいます。

Len メソッド

List 型の Len メソッドは、リストに含まれる要素の数を返します。

計算量(Big O表記)

計算量とは、アルゴリズムやデータ構造の操作が、入力サイズ(この場合はリストの要素数)に対してどれくらいの時間やメモリを必要とするかを示す指標です。Big O表記(O記法)は、計算量の上限を示すために用いられます。

  • O(1) (定数時間): 入力サイズに関わらず、操作にかかる時間が一定であることを意味します。非常に効率的な操作です。
  • O(n) (線形時間): 操作にかかる時間が入力サイズに比例して増加することを意味します。

技術的詳細

container/list.ListLen メソッドがO(1)である理由は、List 構造体自体が len というフィールドを持っており、常にリストの現在の要素数を追跡しているためです。リストに要素が追加されたり削除されたりするたびに、この len フィールドがインクリメントまたはデクリメントされます。したがって、Len メソッドが呼び出された際には、単にこの len フィールドの値を返すだけでよく、リスト全体を走査して要素数を数え上げる必要がありません。

もし List 構造体が len フィールドを持っていなかった場合、Len メソッドはリストの先頭から末尾まで全ての要素を辿って数え上げる必要があり、その場合の計算量はO(n)になってしまいます。しかし、container/list の実装では len フィールドを保持しているため、要素数の取得は非常に高速な定数時間操作となります。

この変更は、コードの動作を変更するものではなく、既存の動作に関するドキュメントを改善するものです。これにより、container/list.List を利用する開発者は、Len メソッドが非常に効率的であることを明確に理解し、パフォーマンスに関する懸念なく利用できるようになります。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/container/list/list.go
+++ b/src/pkg/container/list/list.go
@@ -62,6 +62,7 @@ func (l *List) Init() *List {
 func New() *List { return new(List).Init() }\n 
 // Len returns the number of elements of list l.\n+// The complexity is O(1).\n func (l *List) Len() int { return l.len }\n 
 // Front returns the first element of list l or nil\n

コアとなるコードの解説

変更は src/pkg/container/list/list.go ファイルの63行目に追加された1行のコメントのみです。

// The complexity is O(1).

このコメントは、Len メソッドのシグネチャの直前に挿入されており、Len メソッドの計算量がO(1)であることを明示しています。これは、Goのドキュメンテーション規約に従い、関数の動作や特性に関する重要な情報をコメントとして提供する一般的なプラクティスです。この追加により、godoc コマンドなどで生成されるドキュメントにもこの情報が反映され、開発者が容易に参照できるようになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (container/list パッケージ): https://pkg.go.dev/container/list
  • Big O表記に関する一般的な情報源 (例: Wikipediaなど)