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[インデックス 16931] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである net/http パッケージ内のテスト TestDirJoin がWindows環境でスキップされるように変更するものです。具体的には、os.Stat("/etc/hosts") の存在に依存するテストが、Windowsでは /etc/hosts ファイルが存在しないことが一般的であるため、テストの実行を不必要に失敗させないようにするための修正です。

コミット

commit 3abaf5cae0557452264272331c7a7e308e14258f
Author: Shivakumar GN <shivakumar.gn@gmail.com>
Date:   Tue Jul 30 18:25:08 2013 -0700

    net/http: skip TestDirJoin on Windows, even if /etc/hosts exists
    
    Fixes #5460.
    
    R=golang-dev, rsc, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/12123043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/3abaf5cae0557452264272331c7a7e308e14258f

元コミット内容

net/http: skip TestDirJoin on Windows, even if /etc/hosts exists

このコミットメッセージは、net/http パッケージの TestDirJoin テストがWindows上でスキップされるように変更されたことを示しています。その理由として、Windows環境では /etc/hosts ファイルが存在しない場合でもテストがスキップされるべきである、というニュアンスが含まれています。これは、テストが特定のファイルシステムの構造に依存しているが、その構造がOSによって異なる場合に発生する問題を解決するためのものです。

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のクロスプラットフォーム対応におけるテストの課題があります。TestDirJoin テストは、/etc/hosts というUnix系OSに典型的なファイルパスの存在を前提としていました。しかし、Windowsオペレーティングシステムでは、ホスト名解決のためのファイルは通常 C:\Windows\System32\drivers\etc\hosts に位置しており、/etc/hosts というパスは存在しません。

元のテストコードでは、os.Stat("/etc/hosts") を実行し、エラーが発生した場合(つまりファイルが存在しない場合)にテストをスキップするロジックが含まれていました。しかし、Windows環境では /etc/hosts が存在しないため、この os.Stat 呼び出しは常にエラーを返し、テストはスキップされていました。

問題は、たとえWindows環境で /etc/hosts が何らかの理由で存在したとしても(例えば、手動で作成された場合など)、そのファイルがUnix系OSと同じ意味を持つとは限らず、テストの意図する動作を検証できない可能性があったことです。また、テストが常にスキップされることで、Windows上での TestDirJoin の実際の動作が検証されないという問題も生じます。

このコミットは、Issue #5460 を解決するために行われました。このIssueは、Windows上で TestDirJoin が常にスキップされること、そしてそのスキップの条件が /etc/hosts の存在に依存していることの不適切さを指摘していました。開発者は、Windowsでは /etc/hosts の存在に関わらず、このテストはスキップされるべきであると判断しました。これは、テストが意図するファイルシステム操作のセマンティクスがWindowsとUnix系OSで異なる可能性があり、テストの目的がWindowsでは適切に達成できないためと考えられます。

前提知識の解説

Go言語のテストフレームワーク

Go言語には、標準で testing パッケージが提供されており、これを用いてユニットテストやベンチマークテストを記述します。

  • func TestXxx(t *testing.T): テスト関数は Test で始まり、*testing.T 型の引数を取ります。
  • t.Skip(args ...interface{}): *testing.T 型のメソッドで、このメソッドが呼び出されると、現在のテストはスキップされます。テストが実行されるべきではない特定の環境や条件で非常に有用です。テスト結果には「SKIP」として表示されます。
  • runtime.GOOS: runtime パッケージは、Goプログラムが実行されているシステムに関する情報を提供します。runtime.GOOS は、プログラムがビルドまたは実行されているオペレーティングシステムの名前(例: "linux", "windows", "darwin")を文字列で返します。

net/http パッケージ

net/http パッケージは、HTTPクライアントとサーバーの実装を提供します。Webアプリケーションの構築やHTTPリクエストの送信に広く使用されます。このコミットで関連するのは、ファイルサーバー機能に関連するテストです。

/etc/hosts ファイル

  • Unix系OS: LinuxやmacOSなどのUnix系オペレーティングシステムでは、/etc/hosts ファイルは、IPアドレスとホスト名のマッピングを定義するために使用されます。DNS(Domain Name System)よりも優先して参照されるため、特定のドメイン名をローカルのIPアドレスに解決したり、ネットワークに接続せずにホスト名を解決したりする際に利用されます。
  • Windows OS: Windowsオペレーティングシステムでは、同様の機能を持つファイルは通常 C:\Windows\System32\drivers\etc\hosts にあります。/etc/hosts というパスはWindowsの標準的なファイルシステム構造には存在しません。

os.Stat 関数

os パッケージは、オペレーティングシステム機能へのプラットフォームに依存しないインターフェースを提供します。

  • os.Stat(name string): 指定されたファイルまたはディレクトリのファイル情報を返します。ファイルが存在しない場合や、アクセス権がない場合などにはエラーを返します。返されるファイル情報は os.FileInfo インターフェースを満たします。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のクロスプラットフォームテスト戦略における具体的な課題を浮き彫りにしています。TestDirJoin は、net/http パッケージのファイルサーバー機能の一部をテストしていると考えられます。このテストは、ファイルパスの結合や正規化に関する挙動を検証するために、特定のファイル(この場合は /etc/hosts)の存在を前提としていました。

元のコードでは、以下のようなロジックでした。

func TestDirJoin(t *testing.T) {
	wfi, err := os.Stat("/etc/hosts")
	if err != nil {
		t.Skip("skipping test; no /etc/hosts file")
	}
	// ... テスト本体 ...
}

このロジックは、Unix系OSでは /etc/hosts が存在するためテストが実行されますが、Windowsでは /etc/hosts が存在しないため os.Stat がエラーを返し、テストがスキップされます。これは意図された動作のように見えますが、問題は、Windows環境でこのテストが本当に意味を持つのか、という点にありました。

コミットの意図は、「Windowsでは /etc/hosts が存在するかどうかにかかわらず、このテストはスキップされるべきである」というものです。これは、TestDirJoin がテストしようとしているファイルシステム操作のセマンティクスが、WindowsとUnix系OSで根本的に異なる可能性があるためです。例えば、パスの結合ルール、シンボリックリンクの扱い、またはファイルパーミッションの概念などがOS間で異なる場合、Unix系OS向けに書かれたテストがWindowsで同じように機能することを期待するのは適切ではありません。

したがって、このコミットは、テストの堅牢性とプラットフォーム間の整合性を高めるために、より明示的なプラットフォームチェックを追加しました。runtime.GOOS == "windows" という条件を追加することで、Windows上では無条件にテストをスキップし、不必要なエラーや誤解を招くテスト結果を避けることができます。これにより、テストスイート全体の信頼性が向上します。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/net/http/fs_test.go ファイルの TestDirJoin 関数に対して行われました。

--- a/src/pkg/net/http/fs_test.go
+++ b/src/pkg/net/http/fs_test.go
@@ -259,6 +259,9 @@ func TestFileServerImplicitLeadingSlash(t *testing.T) {
 }
 
 func TestDirJoin(t *testing.T) {
+	if runtime.GOOS == "windows" {
+		t.Skip("skipping test on windows")
+	}
 	wfi, err := os.Stat("/etc/hosts")
 	if err != nil {
 		t.Skip("skipping test; no /etc/hosts file")

コアとなるコードの解説

追加されたコードは以下の3行です。

	if runtime.GOOS == "windows" {
		t.Skip("skipping test on windows")
	}

このコードブロックは、TestDirJoin 関数の冒頭に追加されました。

  1. runtime.GOOS == "windows": runtime.GOOS は現在のオペレーティングシステムの名前を文字列で返します。この条件式は、プログラムがWindows上で実行されているかどうかをチェックします。
  2. t.Skip("skipping test on windows"): もし現在のOSがWindowsであれば、t.Skip メソッドが呼び出され、テストは直ちにスキップされます。引数として渡された文字列は、テスト結果にスキップ理由として表示されます。

この変更により、TestDirJoin はWindows環境では /etc/hosts ファイルの存在に関わらず、常にスキップされるようになりました。これにより、Windows上でのテスト実行時の不必要なエラーや、テストの意図しない動作を回避し、テストスイートの安定性が向上します。

関連リンク

参考にした情報源リンク