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[インデックス 1776] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリの一部である syscall パッケージのドキュメントを追加するものです。syscall パッケージは、低レベルのオペレーティングシステムプリミティブへのインターフェースを提供しますが、このコミットの主な目的は、ユーザーが通常はより高レベルの ostimenet などのパッケージを使用すべきであることを明確にすることです。

コミット

document syscall.  all we do is redirect elsewhere.

R=rsc
DELTA=7  (7 added, 0 deleted, 0 changed)
OCL=25859
CL=25871

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/6f07796e864123ffdd8e42468b6574864a88fdb7

元コミット内容

document syscall.  all we do is redirect elsewhere.

R=rsc
DELTA=7  (7 added, 0 deleted, 0 changed)
OCL=25859
CL=25871

変更の背景

このコミットが行われた2009年3月は、Go言語がまだ公開される前の非常に初期の段階でした。syscall パッケージは、オペレーティングシステムの低レベルな機能に直接アクセスするための重要なインターフェースを提供しますが、その性質上、プラットフォーム依存性が高く、直接使用するには専門知識が必要です。

Go言語の設計思想の一つに「シンプルさと実用性」があります。多くの一般的なタスク(ファイル操作、時間処理、ネットワーク通信など)は、syscall パッケージのプリミティブを基盤としつつも、より抽象化され、ポータブルで使いやすい高レベルのパッケージ(ostimenet など)を通じて提供されるべきです。

このコミットの背景には、syscall パッケージの役割を明確にし、開発者が誤って低レベルな syscall を直接使用するのではなく、より安全でポータブルな高レベルのパッケージを利用するように促す意図があります。これにより、Goプログラムの可搬性と保守性が向上し、開発者はOSの細部に煩わされることなくアプリケーションロジックに集中できるようになります。

前提知識の解説

システムコール (System Call)

システムコールとは、コンピュータプログラムがオペレーティングシステム (OS) のカーネルが提供するサービスを要求するためのメカニズムです。例えば、ファイルの読み書き、メモリの割り当て、プロセスの作成、ネットワーク通信などは、すべてシステムコールを通じて行われます。ユーザー空間で動作するアプリケーションは、直接ハードウェアにアクセスすることはできず、OSカーネルが提供するシステムコールを介して間接的にアクセスします。

Go言語の syscall パッケージ

Go言語の syscall パッケージは、各オペレーティングシステムが提供するシステムコールをGoプログラムから呼び出すための低レベルなインターフェースを提供します。このパッケージは、OS固有の定数、データ構造、関数を含んでおり、非常に強力ですが、その分、OSの内部動作に関する深い知識を必要とします。また、OSによってAPIが異なるため、syscall パッケージを直接使用すると、プログラムの可搬性が損なわれる可能性があります。

Go言語の os, time, net パッケージ

Go言語の標準ライブラリには、syscall パッケージの上に構築された、より高レベルでポータブルなパッケージが多数存在します。

  • os パッケージ: ファイルシステム操作、プロセス管理、環境変数へのアクセスなど、OSに依存しない汎用的な機能を提供します。例えば、ファイルのオープンや読み書きは os.Openos.Read を通じて行われ、内部的には適切なシステムコールが呼び出されます。
  • time パッケージ: 時間の表現、計測、フォーマット、タイマーやスリープ機能など、時間に関する機能を提供します。
  • net パッケージ: TCP/IPネットワーク通信、UDP、DNSルックアップなど、ネットワークに関する機能を提供します。

これらのパッケージは、syscall パッケージの複雑さを抽象化し、異なるOS間での互換性を保ちながら、開発者が一般的なタスクを容易に実行できるように設計されています。

技術的詳細

このコミットは、src/lib/syscall/syscall.go ファイルのパッケージコメントに、syscall パッケージの目的と、より高レベルのパッケージを使用すべきであるという推奨事項を追加するものです。これは、Go言語の標準ライブラリにおけるパッケージ設計の原則を反映しています。

Go言語では、パッケージのドキュメントは非常に重要であり、特にパッケージの目的、使用方法、そして「いつ使うべきか、いつ使うべきでないか」を明確にすることが推奨されます。syscall パッケージの場合、その低レベルな性質から、ほとんどのアプリケーション開発者にとっては直接触れるべきではない「内部的な」パッケージと見なされます。このドキュメントの追加は、この意図を公式に表明するものです。

追加されたコメントは、以下の点を強調しています。

  1. syscall パッケージが低レベルのOSプリミティブへのインターフェースであること。
  2. その詳細が基盤となるシステムに依存すること。
  3. 主な用途が、ostimenet のような、よりポータブルなインターフェースを提供する他のパッケージの内部であること。
  4. 可能な限り、syscall ではなく、これらの高レベルパッケージを使用すべきであること。
  5. 関数やデータ型の詳細については、適切なOSのマニュアルを参照すべきであること。

これは、Go言語の標準ライブラリが提供する抽象化レイヤーの重要性を示しています。開発者は通常、より抽象化されたAPIを使用することで、コードの可搬性を高め、OS間の差異を意識することなく開発を進めることができます。syscall パッケージは、これらの高レベルパッケージが内部的にOSと対話するための「橋渡し」の役割を担っています。

また、コメントの冒頭にある // Use of this source code is governed by a BSD-style // license that can be found in the LICENSE file. という記述は、Go言語のソースコードがBSDスタイルのライセンスで提供されていることを示しており、これはGoプロジェクト全体のライセンスポリシーの一部です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/lib/syscall/syscall.go ファイルに対して行われました。具体的には、パッケージ宣言の直前に以下の7行のコメントが追加されています。

--- a/src/lib/syscall/syscall.go
+++ b/src/lib/syscall/syscall.go
@@ -2,6 +2,13 @@
 // Use of this source code is governed by a BSD-style
 // license that can be found in the LICENSE file.
 
+// This package contains an interface to the low-level operating system
+// primitives.  The details vary depending on the underlying system.
+// Its primary use is inside other packages that provide a more portable
+// interface to the system, such as "os", "time" and "net".  Use those
+// packages rather than this one if you can.
+// For details of the functions and data types in this package consult
+// the manuals for the appropriate operating system.
 package syscall
 
 /*

コアとなるコードの解説

追加されたコメントは、syscall パッケージの目的と推奨される使用方法を明確に定義しています。

  • // This package contains an interface to the low-level operating system // primitives.

    • この行は、syscall パッケージがオペレーティングシステムの低レベルなプリミティブ(基本的な操作)へのインターフェースを提供することを明示しています。これは、ファイル操作、プロセス管理、ネットワーク通信などのOSが提供する基本的な機能に直接アクセスするためのものです。
  • // The details vary depending on the underlying system.

    • この行は、syscall パッケージの具体的な実装や利用可能な機能が、実行されるオペレーティングシステム(Linux, Windows, macOSなど)によって異なることを示しています。これは、syscall パッケージがプラットフォーム依存性が高いことを意味し、直接使用する際にはこの点を考慮する必要があることを示唆しています。
  • // Its primary use is inside other packages that provide a more portable // interface to the system, such as "os", "time" and "net".

    • この行は、syscall パッケージの主な用途が、ostimenet といった、より高レベルでポータブルなインターフェースを提供する他のGo標準ライブラリパッケージの内部で利用されることであることを説明しています。これは、syscall がGo標準ライブラリの他の部分の「基盤」として機能していることを示しています。
  • // Use those packages rather than this one if you can.

    • この行は、開発者に対して、可能な限り syscall パッケージを直接使用するのではなく、ostimenet のような高レベルのパッケージを使用することを強く推奨しています。これにより、コードの可搬性が向上し、OS間の差異を吸収できるため、より堅牢で保守しやすいアプリケーションを構築できます。
  • // For details of the functions and data types in this package consult // the manuals for the appropriate operating system.

    • この行は、syscall パッケージ内の関数やデータ型の詳細については、Goのドキュメントではなく、対象となるオペレーティングシステムの公式マニュアル(例:Linuxのmanページ、WindowsのMSDNドキュメントなど)を参照する必要があることを示しています。これは、syscall パッケージがOSのAPIを直接ラップしているため、その動作はOSの仕様に強く依存するという事実を反映しています。

これらのコメントは、syscall パッケージの役割を明確にし、Go言語の標準ライブラリにおける抽象化の重要性を強調するものです。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (pkg.go.dev)
  • Go言語のGitHubリポジトリ (golang/go)
  • システムコールに関する一般的な情報 (例: Wikipedia)