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[インデックス 17794] ファイルの概要

このコミットは、Goコンパイラのcmd/gcパッケージ内のwalk.cファイルにおけるコメントの誤りを修正するものです。具体的には、コンパイル時に文字列インデックスが処理される際の例示が、0ベースインデックスのGoの挙動と一致するように修正されています。

コミット

commit 2acb80b5e57f5c42c6f474616253d4be80187527
Author: Keith Randall <khr@golang.org>
Date:   Mon Oct 14 14:26:52 2013 -0700

    cmd/gc: fix comment about performing indexing at compile time.
    
    R=golang-dev, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/14441070

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/2acb80b5e57f5c42c6f474616253d4be80187527

元コミット内容

cmd/gc: fix comment about performing indexing at compile time.

R=golang-dev, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/14441070

変更の背景

このコミットの背景は、Goコンパイラ(cmd/gc)が文字列リテラルに対するインデックス操作をコンパイル時に最適化する機能に関するコメントの正確性を確保することです。Go言語では、文字列はバイトのシーケンスとして扱われ、インデックスは0から始まります。元のコメントでは「"abc"[2] with 'b'」と記述されていましたが、これはGoの0ベースインデックスのルールに照らすと誤りです。文字列"abc"のインデックス2は'c'を指し、'b'はインデックス1に位置します。このコミットは、このコメントの例を「"abc"[1] with 'b'」に修正し、Goのインデックス規則に合致させることで、コードの可読性と正確性を向上させています。

前提知識の解説

Goコンパイラ (cmd/gc)

cmd/gcは、Go言語の公式コンパイラです。Goのソースコードを機械語に変換する役割を担っています。コンパイルプロセスは複数のフェーズに分かれており、構文解析、型チェック、最適化、コード生成などが行われます。

walkexpr フェーズ

walkexprは、Goコンパイラのコンパイルプロセスにおける重要なフェーズの一つです。このフェーズでは、抽象構文木(AST)を走査し、式に対する様々な変換や最適化を実行します。これには、型チェック、定数畳み込み(constant folding)、一部のエスケープ解析などが含まれます。

コンパイル時文字列インデックス(定数畳み込み)

Goコンパイラは、文字列リテラルと整数インデックスが両方ともコンパイル時に既知の定数値である場合(例: "hello"[1])、その文字列インデックス操作の結果をコンパイル時に評価する最適化を行います。これは「定数畳み込み(constant folding)」と呼ばれる一般的なコンパイラ最適化の一種です。

定数畳み込みでは、定数のみを含む式がコンパイル時に計算され、その結果の定数に置き換えられます。これにより、実行時にインデックス操作を行うためのコードを生成する代わりに、コンパイラは直接結果の文字で式を置き換えます。例えば、"hello"[1]は文字'e'に置き換えられます。

この最適化により、以下の利点があります。

  • 実行時パフォーマンスの向上: 実行時にインデックス操作を行う必要がなくなるため、プログラムの実行速度が向上します。
  • さらなる最適化の可能性: より多くの値が定数として利用可能になることで、後続のコンパイラパスでさらなる最適化が可能になる場合があります。

技術的詳細

src/cmd/gc/walk.cファイルは、Goコンパイラのwalkexprフェーズにおける式の走査と変換ロジックを含んでいます。このファイル内のwalkexpr関数は、ASTノードを処理し、様々な最適化を適用します。

問題の箇所は、文字列リテラルに対するインデックス操作をコンパイル時に処理するロジックに関連するコメントでした。Go言語では、文字列はバイトのシーケンスであり、インデックスは0から始まります。例えば、文字列"abc"の場合、'a'はインデックス0、'b'はインデックス1、'c'はインデックス2に位置します。

元のコメントは以下のようになっていました。

// replace "abc"[2] with 'b'.
// delayed until now because "abc"[2] is not
// an ideal constant.

このコメントは、"abc"[2]'b'に置き換えられると説明していましたが、Goの0ベースインデックスの規則に従うと、"abc"[2]'c'を指します。'b'を指すのは"abc"[1]です。

このコミットは、このコメントの例をGoのインデックス規則に合致するように修正しました。

// replace "abc"[1] with 'b'.
// delayed until now because "abc"[1] is not
// an ideal constant.

この修正は、コンパイラの動作自体を変更するものではなく、その動作を説明するコメントの正確性を高めるものです。しかし、正確なコメントは、将来のGoコンパイラの開発者やGo言語の学習者にとって、コードの理解を深める上で非常に重要です。特に、コンパイル時の最適化のような複雑な挙動を説明するコメントは、その正確性が求められます。

nodconst(n, n->type, n->left->val.u.sval->s[v]); の行は、実際にコンパイル時定数畳み込みを実行している部分です。n->left->val.u.sval->s[v]は、文字列リテラル(n->left->val.u.sval)から計算されたインデックスvに対応する文字を取得しています。そして、nodconst関数が、この計算された定数値を元の式ノードnに置き換える処理を行っています。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/gc/walk.c
+++ b/src/cmd/gc/walk.c
@@ -1044,8 +1044,8 @@ walkexpr(Node **np, NodeList **init)\n 			if(!n->bounded)\n 				yyerror("index out of bounds");\n 			else {\n-				// replace "abc"[2] with 'b'.\n-				// delayed until now because "abc"[2] is not\n+				// replace "abc"[1] with 'b'.\n+				// delayed until now because "abc"[1] is not\n 				// an ideal constant.\n 				v = mpgetfix(n->right->val.u.xval);\n 				nodconst(n, n->type, n->left->val.u.sval->s[v]);

コアとなるコードの解説

変更されたのは、src/cmd/gc/walk.cファイルの1046行目と1047行目のコメントです。

  • - // replace "abc"[2] with 'b'.
  • - // delayed until now because "abc"[2] is not

上記の2行が削除され、以下の2行に置き換えられました。

  • + // replace "abc"[1] with 'b'.
  • + // delayed until now because "abc"[1] is not

この変更は、Go言語の文字列インデックスが0ベースであることを反映しています。元のコメントでは、文字列"abc"のインデックス2が文字'b'に置き換えられると記述されていましたが、これは誤りです。Goでは、"abc"[0]'a'"abc"[1]'b'"abc"[2]'c'となります。したがって、'b'に置き換えられるのは"abc"[1]です。

この修正により、コメントがGoの実際の挙動と一致するようになり、コードの正確性と理解しやすさが向上しました。これは、コンパイラの内部動作を正確に文書化することの重要性を示す良い例です。

関連リンク

参考にした情報源リンク