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[インデックス 18448] ファイルの概要

このコミットは、Goコンパイラ(cmd/gc)におけるエラーメッセージの改善に関するものです。具体的には、パッケージ識別子がセレクタ式以外で使用された場合に表示されるコンパイルエラーメッセージを、より明確な表現に変更しています。

コミット

commit d30949693c62bc81046d558681292a4254d4d7c0
Author: Brendan Daniel Tracey <tracey.brendan@gmail.com>
Date:   Mon Feb 10 20:27:31 2014 -0500

    cmd/gc: change compile error to "use of package %S without selector"
    
    At present, when a package identifier is used outside of a selector expression, gc gives the error "use of package %S outside selector". However, in the selector expression x.f, the spec defines f as the selector. This change makes the error clearer.
    
    Fixes #7133.
    
    LGTM=rsc
    R=golang-codereviews, rsc
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/50060047

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/d30949693c62bc81046d558681292a4254d4d7c0

元コミット内容

現在のGoコンパイラ(gc)では、パッケージ識別子がセレクタ式(例: fmt.PrintlnPrintln の部分)の外部で使用された場合、「use of package %S outside selector」というエラーが表示されます。しかし、x.f のようなセレクタ式では、Goの仕様上 f がセレクタとして定義されています。この変更は、エラーメッセージをより分かりやすくすることを目的としています。

変更の背景

Go言語では、パッケージ内のエクスポートされたエンティティ(関数、変数、型など)にアクセスするために、パッケージ名.エンティティ名 という形式の「セレクタ式」を使用します。例えば、fmt.Println の場合、fmt はパッケージ識別子であり、.PrintlnPrintln がセレクタです。

このコミットが修正しようとしている問題は、ユーザーが誤ってパッケージ識別子単独で何かをしようとした際に発生するエラーメッセージの曖昧さです。例えば、fmt とだけ記述して、その後にセレクタを付け忘れた場合などです。

元々のエラーメッセージ「use of package %S outside selector」は、技術的には正しいものの、初心者にとっては「セレクタの外でパッケージを使っている」という表現が直感的に理解しにくい可能性がありました。特に、x.ff がセレクタであるというGoの仕様を考慮すると、「セレクタなしでパッケージを使っている」という表現の方が、ユーザーが何が不足しているのかをより明確に把握できると考えられます。

この変更は、Go言語の設計哲学の一つである「明確さ」と「使いやすさ」に沿ったものであり、コンパイラのエラーメッセージを通じて、ユーザーがGoの構文規則をより正確に理解し、問題を迅速に解決できるように支援することを目的としています。Issue #7133 で報告された問題に対応しています。

前提知識の解説

Go言語のパッケージとセレクタ

Go言語では、コードは「パッケージ」という単位で整理されます。パッケージは、関連する機能やデータ型をまとめたもので、他のパッケージからその機能を利用する際には、パッケージ名を指定してアクセスします。

  • パッケージ識別子 (Package Identifier): fmtos のように、パッケージ全体を指す名前です。通常、import 文で指定されたパッケージ名に対応します。
  • セレクタ (Selector): パッケージ内の特定の要素(関数、変数、型、メソッドなど)にアクセスするために、パッケージ識別子の後に . を付けて記述する部分です。例えば、fmt.Println における Println がセレクタです。セレクタは、構造体のフィールドやインターフェースのメソッドにアクセスする際にも使用されます(例: myStruct.field, myInterface.Method())。

Goの仕様では、x.f の形式において f がセレクタであると明確に定義されています。したがって、パッケージ識別子単独で何かをしようとすると、それは「セレクタなしでパッケージを使用している」状態と解釈されます。

Goコンパイラ (cmd/gc)

cmd/gc は、Go言語の公式コンパイラの一部であり、Goのソースコードを機械語に変換する主要な役割を担っています。コンパイルプロセス中に、構文解析、型チェック、最適化、コード生成など、様々な段階でエラーチェックを行います。このコミットで変更されているのは、その型チェック段階で発生する特定のエラーメッセージです。

yyerror 関数

yyerror は、コンパイラやパーサーの文脈でよく見られるエラー報告関数です。通常、構文解析中や型チェック中に問題が検出された際に呼び出され、指定されたエラーメッセージをユーザーに表示します。%S のようなフォーマット指定子は、C言語の printf 関数と同様に、引数として渡された値をメッセージに埋め込むために使用されます。この場合、%S はパッケージ識別子(シンボル名)に置き換えられます。

技術的詳細

このコミットは、Goコンパイラのソースコード内の src/cmd/gc/typecheck.c ファイルに対する変更です。このファイルは、Goプログラムの型チェックを行う部分を実装しています。

Goコンパイラの型チェックフェーズでは、抽象構文木(AST)を走査し、各ノードの型がGo言語の仕様に準拠しているかを確認します。このプロセス中に、OPACK という種類のノード(パッケージ識別子を表す)がセレクタなしで単独で使用されているケースが検出されると、エラーが報告されます。

変更前は、このエラーメッセージが yyerror("use of package %S not in selector", n->sym); となっていました。これは直訳すると「セレクタ内にないパッケージ %S の使用」となります。

変更後は、yyerror("use of package %S without selector", n->sym); となっています。これは直訳すると「セレクタなしのパッケージ %S の使用」となります。

この変更の技術的なポイントは以下の通りです。

  1. エラーメッセージの精度向上: Goの仕様において x.ff がセレクタであるという定義に忠実になり、エラーの原因をより正確に示しています。
  2. ユーザー理解の促進: 「not in selector」(セレクタ内にない)よりも「without selector」(セレクタなし)の方が、ユーザーが「セレクタが欠けている」という問題を直接的に理解しやすくなります。これにより、エラーのデバッグが容易になります。
  3. コンパイラの内部ロジックへの影響なし: この変更は、コンパイラの型チェックロジック自体や、生成されるコードには一切影響を与えません。単に、特定のエラー条件が検出された際に表示される文字列リテラルが変更されただけです。これは、コンパイラの安定性を損なうことなく、ユーザーエクスペリエンスを向上させるための安全な改善です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/cmd/gc/typecheck.c ファイルの1箇所のみです。

--- a/src/cmd/gc/typecheck.c
+++ b/src/cmd/gc/typecheck.c
@@ -368,7 +368,7 @@ reswitch:
  	goto ret;
 
  	case OPACK:
- 		yyerror("use of package %S not in selector", n->sym);
+ 		yyerror("use of package %S without selector", n->sym);
  		goto error;
 
  	case ODDD:

コアとなるコードの解説

上記のコードスニペットは、Goコンパイラの型チェックロジックの一部を示しています。

  • case OPACK:: これは、現在処理している抽象構文木(AST)のノードが OPACK 型、つまりパッケージ識別子を表すノードであることを示しています。
  • yyerror(...): この関数は、コンパイルエラーを報告するために使用されます。第一引数はフォーマット文字列で、%S はシンボル名(この場合はパッケージ名)に置き換えられます。第二引数 n->sym は、エラーが発生したパッケージ識別子のシンボル情報(名前など)を渡しています。
  • goto error;: エラーが報告された後、コンパイルプロセスをエラー処理ルーチンにジャンプさせます。

この変更は、yyerror 関数に渡されるエラーメッセージの文字列リテラルを、"use of package %S not in selector" から "use of package %S without selector" へと修正しているだけです。これにより、コンパイラがこの特定のエラーを検出した際に、より分かりやすいメッセージが出力されるようになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント(特に言語仕様の「セレクタ」に関するセクション)
  • Goコンパイラのソースコード(src/cmd/gc/typecheck.c
  • GoのIssueトラッカー(Issue #7133)
  • Goのコードレビューシステム (CL 50060047)
  • 一般的なコンパイラの設計とエラー報告に関する知識
  • C言語の printf フォーマット指定子に関する知識 (yyerrorの理解のため)
  • 抽象構文木 (AST) に関する一般的な知識I have read the commit data and understand the request. I will now generate the detailed technical explanation in Markdown format, following the specified chapter structure, and output it to standard output.

[インデックス 18448] ファイルの概要

このコミットは、Goコンパイラ(cmd/gc)におけるエラーメッセージの改善に関するものです。具体的には、パッケージ識別子がセレクタ式以外で使用された場合に表示されるコンパイルエラーメッセージを、より明確な表現に変更しています。

コミット

commit d30949693c62bc81046d558681292a4254d4d7c0
Author: Brendan Daniel Tracey <tracey.brendan@gmail.com>
Date:   Mon Feb 10 20:27:31 2014 -0500

    cmd/gc: change compile error to "use of package %S without selector"
    
    At present, when a package identifier is used outside of a selector expression, gc gives the error "use of package %S outside selector". However, in the selector expression x.f, the spec defines f as the selector. This change makes the error clearer.
    
    Fixes #7133.
    
    LGTM=rsc
    R=golang-codereviews, rsc
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/50060047

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/d30949693c62bc81046d558681292a4254d4d7c0

元コミット内容

現在のGoコンパイラ(gc)では、パッケージ識別子がセレクタ式(例: fmt.PrintlnPrintln の部分)の外部で使用された場合、「use of package %S outside selector」というエラーが表示されます。しかし、x.f のようなセレクタ式では、Goの仕様上 f がセレクタとして定義されています。この変更は、エラーメッセージをより分かりやすくすることを目的としています。

変更の背景

Go言語では、パッケージ内のエクスポートされたエンティティ(関数、変数、型など)にアクセスするために、パッケージ名.エンティティ名 という形式の「セレクタ式」を使用します。例えば、fmt.Println の場合、fmt はパッケージ識別子であり、.PrintlnPrintln がセレクタです。

このコミットが修正しようとしている問題は、ユーザーが誤ってパッケージ識別子単独で何かをしようとした際に発生するエラーメッセージの曖昧さです。例えば、fmt とだけ記述して、その後にセレクタを付け忘れた場合などです。

元々のエラーメッセージ「use of package %S outside selector」は、技術的には正しいものの、初心者にとっては「セレクタの外でパッケージを使っている」という表現が直感的に理解しにくい可能性がありました。特に、x.ff がセレクタであるというGoの仕様を考慮すると、「セレクタなしでパッケージを使っている」という表現の方が、ユーザーが何が不足しているのかをより明確に把握できると考えられます。

この変更は、Go言語の設計哲学の一つである「明確さ」と「使いやすさ」に沿ったものであり、コンパイラのエラーメッセージを通じて、ユーザーがGoの構文規則をより正確に理解し、問題を迅速に解決できるように支援することを目的としています。Issue #7133 で報告された問題に対応しています。

前提知識の解説

Go言語のパッケージとセレクタ

Go言語では、コードは「パッケージ」という単位で整理されます。パッケージは、関連する機能やデータ型をまとめたもので、他のパッケージからその機能を利用する際には、パッケージ名を指定してアクセスします。

  • パッケージ識別子 (Package Identifier): fmtos のように、パッケージ全体を指す名前です。通常、import 文で指定されたパッケージ名に対応します。
  • セレクタ (Selector): パッケージ内の特定の要素(関数、変数、型、メソッドなど)にアクセスするために、パッケージ識別子の後に . を付けて記述する部分です。例えば、fmt.Println における Println がセレクタです。セレクタは、構造体のフィールドやインターフェースのメソッドにアクセスする際にも使用されます(例: myStruct.field, myInterface.Method())。

Goの仕様では、x.f の形式において f がセレクタであると明確に定義されています。したがって、パッケージ識別子単独で何かをしようとすると、それは「セレクタなしでパッケージを使用している」状態と解釈されます。

Goコンパイラ (cmd/gc)

cmd/gc は、Go言語の公式コンパイラの一部であり、Goのソースコードを機械語に変換する主要な役割を担っています。コンパイルプロセス中に、構文解析、型チェック、最適化、コード生成など、様々な段階でエラーチェックを行います。このコミットで変更されているのは、その型チェック段階で発生する特定のエラーメッセージです。

yyerror 関数

yyerror は、コンパイラやパーサーの文脈でよく見られるエラー報告関数です。通常、構文解析中や型チェック中に問題が検出された際に呼び出され、指定されたエラーメッセージをユーザーに表示します。%S のようなフォーマット指定子は、C言語の printf 関数と同様に、引数として渡された値をメッセージに埋め込むために使用されます。この場合、%S はパッケージ識別子(シンボル名)に置き換えられます。

技術的詳細

このコミットは、Goコンパイラのソースコード内の src/cmd/gc/typecheck.c ファイルに対する変更です。このファイルは、Goプログラムの型チェックを行う部分を実装しています。

Goコンパイラの型チェックフェーズでは、抽象構文木(AST)を走査し、各ノードの型がGo言語の仕様に準拠しているかを確認します。このプロセス中に、OPACK という種類のノード(パッケージ識別子を表す)がセレクタなしで単独で使用されているケースが検出されると、エラーが報告されます。

変更前は、このエラーメッセージが yyerror("use of package %S not in selector", n->sym); となっていました。これは直訳すると「セレクタ内にないパッケージ %S の使用」となります。

変更後は、yyerror("use of package %S without selector", n->sym); となっています。これは直訳すると「セレクタなしのパッケージ %S の使用」となります。

この変更の技術的なポイントは以下の通りです。

  1. エラーメッセージの精度向上: Goの仕様において x.ff がセレクタであるという定義に忠実になり、エラーの原因をより正確に示しています。
  2. ユーザー理解の促進: 「not in selector」(セレクタ内にない)よりも「without selector」(セレクタなし)の方が、ユーザーが「セレクタが欠けている」という問題を直接的に理解しやすくなります。これにより、エラーのデバッグが容易になります。
  3. コンパイラの内部ロジックへの影響なし: この変更は、コンパイラの型チェックロジック自体や、生成されるコードには一切影響を与えません。単に、特定のエラー条件が検出された際に表示される文字列リテラルが変更されただけです。これは、コンパイラの安定性を損なうことなく、ユーザーエクスペリエンスを向上させるための安全な改善です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/cmd/gc/typecheck.c ファイルの1箇所のみです。

--- a/src/cmd/gc/typecheck.c
+++ b/src/cmd/gc/typecheck.c
@@ -368,7 +368,7 @@ reswitch:
  	goto ret;
 
  	case OPACK:
- 		yyerror("use of package %S not in selector", n->sym);
+ 		yyerror("use of package %S without selector", n->sym);
  		goto error;
 
  	case ODDD:

コアとなるコードの解説

上記のコードスニペットは、Goコンパイラの型チェックロジックの一部を示しています。

  • case OPACK:: これは、現在処理している抽象構文木(AST)のノードが OPACK 型、つまりパッケージ識別子を表すノードであることを示しています。
  • yyerror(...): この関数は、コンパイルエラーを報告するために使用されます。第一引数はフォーマット文字列で、%S はシンボル名(この場合はパッケージ名)に置き換えられます。第二引数 n->sym は、エラーが発生したパッケージ識別子のシンボル情報(名前など)を渡しています。
  • goto error;: エラーが報告された後、コンパイルプロセスをエラー処理ルーチンにジャンプさせます。

この変更は、yyerror 関数に渡されるエラーメッセージの文字列リテラルを、"use of package %S not in selector" から "use of package %S without selector" へと修正しているだけです。これにより、コンパイラがこの特定のエラーを検出した際に、より分かりやすいメッセージが出力されるようになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント(特に言語仕様の「セレクタ」に関するセクション)
  • Goコンパイラのソースコード(src/cmd/gc/typecheck.c
  • GoのIssueトラッカー(Issue #7133)
  • Goのコードレビューシステム (CL 50060047)
  • 一般的なコンパイラの設計とエラー報告に関する知識
  • C言語の printf フォーマット指定子に関する知識 (yyerrorの理解のため)
  • 抽象構文木 (AST) に関する一般的な知識