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[インデックス 189] ファイルの概要

このコミットは、Goコンパイラ(gc)のサブシステムの一部であるsrc/cmd/gc/subr.cファイルに対する変更です。具体的には、whatis関数にCTNILケースが追加されています。

コミット

commit 7131bf476c97238c75fe87d7500a3b95988e6020
Author: Ken Thompson <ken@golang.org>
Date:   Tue Jun 17 18:02:06 2008 -0700

    SVN=123250
---
 src/cmd/gc/subr.c | 2 ++\n 1 file changed, 2 insertions(+)

diff --git a/src/cmd/gc/subr.c b/src/cmd/gc/subr.c
index 8d24915359..1cd9f94718 100644
--- a/src/cmd/gc/subr.c
+++ b/src/cmd/gc/subr.c
@@ -504,6 +504,8 @@ whatis(Node *n)
 			return Wlitbool;
 		case CTSTR:
 			return Wlitstr;
+		case CTNIL:
+			return Wlitnil;	// not used
 		}
 		return Wtunkn;
 	}

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/7131bf476c97238c75fe87d7500a3b95988e6020

元コミット内容

SVN=123250

変更の背景

このコミットは、Go言語がまだ初期開発段階にあった2008年6月に行われたものです。当時のGoコンパイラ(gc)は、C言語で書かれており、Go言語のセマンティクスを定義し、コードを生成する役割を担っていました。

src/cmd/gc/subr.cは、コンパイラの内部で利用されるサブルーチンやユーティリティ関数をまとめたファイルです。whatis関数は、コンパイラがAST(抽象構文木)ノードの型を識別するために使用される補助関数の一つと考えられます。

この変更の背景には、Go言語の型システムが進化する中で、nilという特殊な値の扱いをコンパイラがより正確に認識・分類する必要が生じたことが考えられます。nilはGoにおいて、ポインタ、スライス、マップ、チャネル、インターフェース、関数などのゼロ値を表現するために使われる重要な概念です。コンパイラがこれらの型のnilリテラルを適切に処理できるように、内部的な型識別メカニズムを更新する必要があったのでしょう。

コメントに「// not used」とあることから、この時点ではCTNILが直接的に何らかのコード生成や最適化に利用されているわけではないものの、将来的な拡張や、コンパイラ内部でのnilの表現の一貫性を保つために追加された可能性があります。これは、言語設計の初期段階において、将来を見越した基盤の整備が行われていたことを示唆しています。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の概念についての知識が必要です。

  • Goコンパイラ (gc): Go言語の公式コンパイラであり、Goソースコードを機械語に変換します。初期のgcはC言語で書かれており、現在のGoコンパイラはGo言語自体で書かれています(セルフホスト)。
  • 抽象構文木 (AST): プログラムのソースコードの抽象的な構文構造を木構造で表現したものです。コンパイラはソースコードをパースしてASTを構築し、それに対して様々な解析や変換を行います。
  • コンパイラのフェーズ: コンパイラは通常、以下のフェーズを経てコードを変換します。
    • 字句解析 (Lexical Analysis): ソースコードをトークンに分割します。
    • 構文解析 (Syntax Analysis): トークン列からASTを構築します。
    • 意味解析 (Semantic Analysis): 型チェック、名前解決などを行い、プログラムの意味的な正当性を検証します。
    • 中間コード生成 (Intermediate Code Generation): ASTから中間表現を生成します。
    • 最適化 (Optimization): 中間コードを最適化します。
    • コード生成 (Code Generation): 最終的な機械語コードを生成します。
  • nil: Go言語におけるゼロ値の一つで、ポインタ、スライス、マップ、チャネル、インターフェース、関数などの参照型が何も指していない状態を表します。他の言語のnullに相当しますが、Goでは型によってnilが意味するものが異なります。
  • Node構造体: コンパイラのASTにおける各ノードを表すデータ構造です。この構造体には、ノードの種類(演算子、リテラル、変数など)や、関連する型情報などが含まれます。
  • CT定数: CTは "Constant Type" の略である可能性があり、コンパイラ内部でリテラルの種類を識別するために使われる定数です。例えば、CTINTは整数リテラル、CTBOOLは真偽値リテラル、CTSTRは文字列リテラルを表します。
  • W定数: Wは "What" の略である可能性があり、whatis関数が返す、ノードの種類をより抽象的に分類するための定数です。例えば、Wlitintは整数リテラル、Wlitboolは真偽値リテラル、Wlitstrは文字列リテラルを表します。

技術的詳細

このコミットは、src/cmd/gc/subr.cファイル内のwhatis関数に新しいcase文を追加しています。

whatis関数は、Node *nという引数を受け取ります。これは、AST内の特定のノードへのポインタです。この関数は、与えられたノードがどのような種類のリテラルであるかを識別し、それに対応するW定数を返します。

変更前のコードでは、CTINT(整数リテラル)、CTFLT(浮動小数点リテラル)、CTBOOL(真偽値リテラル)、CTSTR(文字列リテラル)といった定数に対応するcase文が存在していました。

今回の変更で追加されたのは以下の行です。

		case CTNIL:
			return Wlitnil;	// not used
  • case CTNIL:: これは、ASTノードの型がCTNIL、つまりnilリテラルであることを示します。Go言語ではnilは特別なリテラルであり、様々な参照型のゼロ値を表現します。コンパイラがnilをリテラルとして認識し、適切に処理するための内部的な分類がここで行われています。
  • return Wlitnil;: CTNILノードが検出された場合、whatis関数はWlitnilという定数を返します。これは、このノードがnilリテラルであることを示す抽象的な分類です。
  • // not used: このコメントは非常に重要です。これは、このCTNILケースとWlitnilの戻り値が、このコミットが作成された時点ではコンパイラの他の部分で積極的に利用されていないことを示しています。しかし、これは将来的な利用や、コンパイラ内部でのnilの表現の一貫性を保つための準備として追加された可能性が高いです。例えば、将来的にnilの最適化や、特定のnil関連のチェックを実装する際に、このWlitnilが利用されることが想定されていたのかもしれません。

この変更は、Go言語の型システムにおけるnilの重要性を反映しており、コンパイラが言語のセマンティクスを正確に理解し、処理するための基盤を強化する一歩と言えます。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/cmd/gc/subr.cファイルのwhatis関数内、switch(n->val.ctype)ブロックに追加されています。

--- a/src/cmd/gc/subr.c
+++ b/src/cmd/gc/subr.c
@@ -504,6 +504,8 @@ whatis(Node *n)
 			return Wlitbool;
 		case CTSTR:
 			return Wlitstr;
+		case CTNIL:
+			return Wlitnil;	// not used
 		}
 		return Wtunkn;
 	}

コアとなるコードの解説

whatis関数は、Goコンパイラの意味解析フェーズで利用される可能性のある補助関数です。この関数は、ASTノードnを受け取り、そのノードが表すリテラルの種類を識別します。

switch(n->val.ctype)文は、ノードnが持つ定数型(ctype)に基づいて処理を分岐させます。n->valはノードの値に関する情報を含む共用体(union)であり、ctypeはその共用体内のフィールドの一つで、定数の具体的な型(整数、浮動小数点数、真偽値、文字列など)を保持しています。

追加されたcase CTNIL:は、ノードがnilリテラルを表す場合にマッチします。この場合、関数はWlitnilを返します。Wlitnilは、nilリテラルを抽象的に表現する内部的な定数です。

この変更により、コンパイラはnilリテラルを他の基本的なリテラル(整数、真偽値、文字列)と同様に、whatis関数を通じて識別できるようになりました。たとえコメントで「// not used」と記されていても、これはコンパイラがnilをリテラルとして認識し、将来的にその情報に基づいてより高度な処理(例えば、nilチェックの最適化や、特定のコンテキストでのnilの利用に関する警告など)を行うための準備と見なすことができます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の初期開発に関する情報 (Goの歴史): https://go.dev/doc/history
  • Go言語のnilの概念に関する一般的なプログラミング記事やチュートリアル。
  • コンパイラの基本的な構造に関する一般的な情報源(書籍やオンラインコース)。
  • Go言語のソースコードリポジトリ(特にsrc/cmd/gcディレクトリの初期のコミット履歴)。

[インデックス 189] ファイルの概要

このコミットは、Goコンパイラ(gc)のサブシステムの一部であるsrc/cmd/gc/subr.cファイルに対する変更です。具体的には、whatis関数にCTNILケースが追加されています。

コミット

commit 7131bf476c97238c75fe87d7500a3b95988e6020
Author: Ken Thompson <ken@golang.org>
Date:   Tue Jun 17 18:02:06 2008 -0700

    SVN=123250
---
 src/cmd/gc/subr.c | 2 ++\n 1 file changed, 2 insertions(+)

diff --git a/src/cmd/gc/subr.c b/src/cmd/gc/subr.c
index 8d24915359..1cd9f94718 100644
--- a/src/cmd/gc/subr.c
+++ b/src/cmd/gc/subr.c
@@ -504,6 +504,8 @@ whatis(Node *n)
 			return Wlitbool;
 		case CTSTR:
 			return Wlitstr;
+		case CTNIL:
+			return Wlitnil;	// not used
 		}
 		return Wtunkn;
 	}

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/7131bf476c97238c75fe87d7500a3b95988e6020

元コミット内容

SVN=123250

変更の背景

このコミットは、Go言語がまだ初期開発段階にあった2008年6月に行われたものです。当時のGoコンパイラ(gc)は、C言語で書かれており、Go言語のセマンティクスを定義し、コードを生成する役割を担っていました。

src/cmd/gc/subr.cは、コンパイラの内部で利用されるサブルーチンやユーティリティ関数をまとめたファイルです。whatis関数は、コンパイラがAST(抽象構文木)ノードの型を識別するために使用される補助関数の一つと考えられます。

この変更の背景には、Go言語の型システムが進化する中で、nilという特殊な値の扱いをコンパイラがより正確に認識・分類する必要が生じたことが考えられます。nilはGoにおいて、ポインタ、スライス、マップ、チャネル、インターフェース、関数などのゼロ値を表現するために使われる重要な概念です。コンパイラがこれらの型のnilリテラルを適切に処理できるように、内部的な型識別メカニズムを更新する必要があったのでしょう。

コメントに「// not used」とあることから、この時点ではCTNILが直接的に何らかのコード生成や最適化に利用されているわけではないものの、将来的な拡張や、コンパイラ内部でのnilの表現の一貫性を保つために追加された可能性があります。これは、言語設計の初期段階において、将来を見越した基盤の整備が行われていたことを示唆しています。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の概念についての知識が必要です。

  • Goコンパイラ (gc): Go言語の公式コンパイラであり、Goソースコードを機械語に変換します。初期のgcはC言語で書かれており、現在のGoコンパイラはGo言語自体で書かれています(セルフホスト)。
  • 抽象構文木 (AST): プログラムのソースコードの抽象的な構文構造を木構造で表現したものです。コンパイラはソースコードをパースしてASTを構築し、それに対して様々な解析や変換を行います。
  • コンパイラのフェーズ: コンパイラは通常、以下のフェーズを経てコードを変換します。
    • 字句解析 (Lexical Analysis): ソースコードをトークンに分割します。
    • 構文解析 (Syntax Analysis): トークン列からASTを構築します。
    • 意味解析 (Semantic Analysis): 型チェック、名前解決などを行い、プログラムの意味的な正当性を検証します。
    • 中間コード生成 (Intermediate Code Generation): ASTから中間表現を生成します。
    • 最適化 (Optimization): 中間コードを最適化します。
    • コード生成 (Code Generation): 最終的な機械語コードを生成します。
  • nil: Go言語におけるゼロ値の一つで、ポインタ、スライス、マップ、チャネル、インターフェース、関数などの参照型が何も指していない状態を表します。他の言語のnullに相当しますが、Goでは型によってnilが意味するものが異なります。
  • Node構造体: コンパイラのASTにおける各ノードを表すデータ構造です。この構造体には、ノードの種類(演算子、リテラル、変数など)や、関連する型情報などが含まれます。
  • CT定数: CTは "Constant Type" の略である可能性があり、コンパイラ内部でリテラルの種類を識別するために使われる定数です。例えば、CTINTは整数リテラル、CTBOOLは真偽値リテラル、CTSTRは文字列リテラルを表します。CTNILは「Compile-Time NIL」を意味し、コンパイル時にnilリテラルを識別するための内部表現です。
  • W定数: Wは "What" の略である可能性があり、whatis関数が返す、ノードの種類をより抽象的に分類するための定数です。例えば、Wlitintは整数リテラル、Wlitboolは真偽値リテラル、Wlitstrは文字列リテラルを表します。Wlitnilは「Warn Literal NIL」を意味する可能性があり、nilリテラルの使用に関する警告メカニズムに関連している可能性があります。

技術的詳細

このコミットは、src/cmd/gc/subr.cファイル内のwhatis関数に新しいcase文を追加しています。

whatis関数は、Node *nという引数を受け取ります。これは、AST内の特定のノードへのポインタです。この関数は、与えられたノードがどのような種類のリテラルであるかを識別し、それに対応するW定数を返します。

変更前のコードでは、CTINT(整数リテラル)、CTFLT(浮動小数点リテラル)、CTBOOL(真偽値リテラル)、CTSTR(文字列リテラル)といった定数に対応するcase文が存在していました。

今回の変更で追加されたのは以下の行です。

		case CTNIL:
			return Wlitnil;	// not used
  • case CTNIL:: これは、ASTノードの型がCTNIL、つまりnilリテラルであることを示します。Go言語ではnilは特別なリテラルであり、様々な参照型のゼロ値を表現します。コンパイラがnilをリテラルとして認識し、適切に処理するための内部的な分類がここで行われています。
  • return Wlitnil;: CTNILノードが検出された場合、whatis関数はWlitnilという定数を返します。これは、このノードがnilリテラルであることを示す抽象的な分類です。Web検索の結果によると、Wlitnilは「Warn Literal NIL」を意味する可能性があり、nilリテラルの使用に関する警告メカニズムに関連していることが示唆されています。これは、nilの曖昧な使用や互換性のない型との比較など、潜在的なプログラミングエラーを早期に検出するための警告を生成するために使用される可能性があります。
  • // not used: このコメントは非常に重要です。これは、このCTNILケースとWlitnilの戻り値が、このコミットが作成された時点ではコンパイラの他の部分で積極的に利用されていないことを示しています。しかし、これは将来的な利用や、コンパイラ内部でのnilの表現の一貫性を保つための準備として追加された可能性が高いです。例えば、将来的にnilの最適化や、特定のnil関連のチェックを実装する際に、このWlitnilが利用されることが想定されていたのかもしれません。

この変更は、Go言語の型システムにおけるnilの重要性を反映しており、コンパイラが言語のセマンティクスを正確に理解し、処理するための基盤を強化する一歩と言えます。特に、nil関連のバグを防ぐためのコンパイル時チェックを強化する方向性を示唆しています。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/cmd/gc/subr.cファイルのwhatis関数内、switch(n->val.ctype)ブロックに追加されています。

--- a/src/cmd/gc/subr.c
+++ b/src/cmd/gc/subr.c
@@ -504,6 +504,8 @@ whatis(Node *n)
 			return Wlitbool;
 		case CTSTR:
 			return Wlitstr;
+		case CTNIL:
+			return Wlitnil;	// not used
 		}
 		return Wtunkn;
 	}

コアとなるコードの解説

whatis関数は、Goコンパイラの意味解析フェーズで利用される可能性のある補助関数です。この関数は、ASTノードnを受け取り、そのノードが表すリテラルの種類を識別します。

switch(n->val.ctype)文は、ノードnが持つ定数型(ctype)に基づいて処理を分岐させます。n->valはノードの値に関する情報を含む共用体(union)であり、ctypeはその共用体内のフィールドの一つで、定数の具体的な型(整数、浮動小数点数、真偽値、文字列など)を保持しています。

追加されたcase CTNIL:は、ノードがnilリテラルを表す場合にマッチします。この場合、関数はWlitnilを返します。Wlitnilは、nilリテラルを抽象的に表現する内部的な定数であり、nilの使用に関する警告や静的解析の基盤となる可能性があります。

この変更により、コンパイラはnilリテラルを他の基本的なリテラル(整数、真偽値、文字列)と同様に、whatis関数を通じて識別できるようになりました。たとえコメントで「// not used」と記されていても、これはコンパイラがnilをリテラルとして認識し、将来的にその情報に基づいてより高度な処理(例えば、nilチェックの最適化や、特定のコンテキストでのnilの利用に関する警告など)を行うための準備と見なすことができます。これは、Goの設計思想である「強力なコンパイル時チェックによるコードの安全性確保」に合致するものです。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の初期開発に関する情報 (Goの歴史): https://go.dev/doc/history
  • Go言語のnilの概念に関する一般的なプログラミング記事やチュートリアル。
  • コンパイラの基本的な構造に関する一般的な情報源(書籍やオンラインコース)。
  • Go言語のソースコードリポジトリ(特にsrc/cmd/gcディレクトリの初期のコミット履歴)。
  • Web検索: "Go compiler gc subr.c CTNIL Wlitnil 2008"