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[インデックス 19394] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式仕様書において、プログラムがいつ終了するかについての記述を明確にするものです。特に、main関数の実行が終了した際にプログラム全体が終了するタイミングについて、より正確な表現に修正されています。

コミット

  • コミットハッシュ: 7f1d62dcefc868361e15db12608a8c8261be0e10
  • Author: Robert Griesemer gri@golang.org
  • Date: Mon May 19 08:54:19 2014 -0700
  • コミットメッセージ:
    spec: clarify when a program exits
    
    Fixes #8023.
    
    LGTM=rsc
    R=r, iant, ken, rsc
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/98340043
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/7f1d62dcefc868361e15db12608a8c8261be0e10

元コミット内容

spec: clarify when a program exits

Fixes #8023.

LGTM=rsc
R=r, iant, ken, rsc
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/98340043

変更の背景

この変更は、Go言語のプログラムがいつ終了するかという点に関する曖昧さを解消するために行われました。コミットメッセージにある Fixes #8023 は、この変更が特定の課題(Issue 8023)に対応していることを示しています。Goのプログラムは、mainパッケージの初期化とmain関数の呼び出しから実行を開始します。これまでの仕様では、「main関数が戻ると、プログラムは終了する」と記述されていましたが、これはmain関数が正常にreturnする場合だけでなく、panicなどによってmain関数の呼び出しが終了する場合も含むのか、という点で解釈の余地がありました。

Goの設計思想として、main関数が終了すると、他の(main以外の)ゴルーチンが完了するのを待たずにプログラムが終了するという重要な特性があります。このコミットは、この特性をより正確かつ包括的に表現するために、仕様書の文言を修正することを目的としています。これにより、Goプログラムの終了セマンティクスに関する誤解を防ぎ、開発者がより正確な挙動を理解できるようになります。

前提知識の解説

Go言語のmain関数

Go言語において、main関数は特別な意味を持つ関数です。

  • エントリポイント: Goプログラムの実行は、mainパッケージ内のmain関数から開始されます。
  • シグネチャ: func main()というシグネチャを持ち、引数も戻り値もありません。
  • プログラムの終了: 通常、main関数の実行が完了すると、プログラム全体が終了します。

Goroutine(ゴルーチン)

Goroutineは、Go言語における軽量な並行処理の単位です。

  • 並行性: goキーワードを使って関数を呼び出すことで、新しいゴルーチンを生成し、その関数を並行して実行させることができます。
  • 独立性: ゴルーチンは独立して実行されます。main関数が終了しても、他のゴルーチンがまだ実行中である可能性があります。
  • プログラム終了時の挙動: Goの重要な特性として、main関数が終了すると、たとえ他のゴルーチンがまだ実行中であっても、プログラム全体はそれらのゴルーチンの完了を待たずに終了します。これは、C言語などにおけるスレッドの挙動とは異なる点であり、Goの並行処理モデルの理解において非常に重要です。

プログラムの終了セマンティクス

プログラムの終了セマンティクスとは、プログラムがいつ、どのようにして実行を停止するかに関する規則のことです。Go言語では、main関数の実行が完了した時点でプログラムが終了するという明確なルールがあります。このルールは、main関数が正常にreturnする場合だけでなく、panicによって異常終了する場合も含まれます。このコミットは、この「main関数の実行完了」という概念をより正確に表現しようとしています。

技術的詳細

このコミットは、Go言語の公式仕様書である doc/go_spec.html の記述を修正することで、プログラムの終了タイミングに関する明確化を図っています。

具体的な変更点は、以下の1行の文言修正です。

  • 変更前: When the function <code>main</code> returns, the program exits.
  • 変更後: When that function invocation returns, the program exits.

この変更は非常に微妙に見えますが、その意味するところは重要です。

  1. main関数が戻る (returns)」から「その関数呼び出しが戻る (that function invocation returns)」へ:

    • 変更前の「main関数が戻る」という表現は、main関数が正常にreturnステートメントを実行して終了する場合のみを指すように解釈される可能性がありました。
    • 変更後の「その関数呼び出しが戻る」という表現は、main関数が呼び出された結果として、正常にreturnする場合だけでなく、panicが発生してmain関数の実行が中断され、最終的にプログラムが終了する場合も含む、より広範な「main関数の実行の終了」を意味します。これにより、main関数の実行がどのような形で完了しても、プログラムが終了するというGoの挙動がより正確に伝わるようになりました。
  2. mainゴルーチンの扱い: 変更された文言の直後には、「It does not wait for other (non-main) goroutines to complete.」(他の(main以外の)ゴルーチンが完了するのを待たない)という記述が続いています。このコミットは、このGoの重要な特性を再確認し、main関数の終了が他のゴルーチンの状態に依存しないことを、より明確な言葉で補強しています。

この修正は、Go言語のセマンティクスに関する潜在的な誤解を解消し、仕様の厳密性を高めるためのものです。

コアとなるコードの変更箇所

変更は doc/go_spec.html ファイルに対して行われました。

--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -1,6 +1,6 @@
 <!--{
  	"Title": "The Go Programming Language Specification",
-\t"Subtitle": "Version of May 14, 2014",
+\t"Subtitle": "Version of May 19, 2014",
  	"Path": "/ref/spec"
 }-->
 
@@ -5979,7 +5979,7 @@ func main() { … }\
 <p>\n Program execution begins by initializing the main package and then\n invoking the function <code>main</code>.\n-When the function <code>main</code> returns, the program exits.\n+When that function invocation returns, the program exits.\n It does not wait for other (non-<code>main</code>) goroutines to complete.\n </p>\n \n```

## コアとなるコードの解説

上記の差分が示すように、変更はGo言語の仕様書内の特定の段落に集中しています。

1.  **日付の更新**:
    `Subtitle` のバージョン日付が "May 14, 2014" から "May 19, 2014" に更新されています。これは、仕様書の内容がこのコミットによって更新されたことを示すものです。

2.  **プログラム終了条件の明確化**:
    最も重要な変更は、`main`関数の終了とプログラム全体の終了に関する記述です。
    *   変更前: `When the function <code>main</code> returns, the program exits.`
    *   変更後: `When that function invocation returns, the program exits.`

    この修正は、`main`関数が「戻る(returns)」という言葉の厳密な解釈を超えて、`main`関数の「呼び出し(invocation)」が完了する、つまり`main`関数の実行が終了するあらゆるシナリオ(正常な`return`、`panic`による終了など)を包含するように意図されています。これにより、Goプログラムの終了セマンティクスがより包括的かつ正確に定義され、開発者が`main`関数がどのように終了しても、他のゴルーチンの完了を待たずにプログラムが終了するという挙動を明確に理解できるようになります。

## 関連リンク

*   **GitHubコミットページ**: [https://github.com/golang/go/commit/7f1d62dcefc868361e15db12608a8c8261be0e10](https://github.com/golang/go/commit/7f1d62dcefc868361e15db12608a8c8261be0e10)
*   **Go Change List (CL)**: [https://golang.org/cl/98340043](https://golang.org/cl/98340043)
    *   このCLページは、コミットのレビュープロセスと関連する議論の履歴を提供しており、`Fixes #8023` がこの変更の背景にある課題であることを確認できます。Issue 8023自体は、Goの古いまたは内部的な課題追跡システムに属している可能性があり、直接的な公開リンクは見つかりませんでした。

## 参考にした情報源リンク

*   [https://golang.org/cl/98340043](https://golang.org/cl/98340043) (Go Change List for this commit)
*   Go言語の公式ドキュメントおよび仕様書 (一般的なGoの挙動に関する知識)