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[インデックス 19592] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ image/png パッケージ内の writer.go ファイルに対する変更です。具体的には、PNG画像のエンコード処理におけるフィルタリングロジックの最適化に関するものです。

コミット

commit 9cddb486433bfb3e149df98f2940b25b00b8ed52
Author: Rui Ueyama <ruiu@google.com>
Date:   Mon Jun 23 10:29:56 2014 +1000

    image/png: remove unnecessary function call
    
    paeth(0, x, 0) == x for any uint8 value.
    
    LGTM=nigeltao
    R=golang-codereviews, bradfitz, nigeltao
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/105290049

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/9cddb486433bfb3e149df98f2940b25b00b8ed52

元コミット内容

image/png: remove unnecessary function call paeth(0, x, 0) == x for any uint8 value.

変更の背景

このコミットは、Go言語の image/png パッケージにおけるPNGエンコーディング処理の効率化を目的としています。具体的には、PNGのフィルタリングアルゴリズムの一つであるPaethフィルタの実装において、不要な関数呼び出しを削除することでパフォーマンスを改善しています。

Paethフィルタの計算式には、paeth関数が使用されます。この関数は3つの引数 a, b, c を取り、予測値を計算します。コミットメッセージにあるように、特定の条件下(a=0, c=0の場合)では、paeth(0, x, 0) の結果は常に x となります。この数学的な特性を利用し、コード内で paeth(0, pdat[i], 0) と記述されていた部分を直接 pdat[i] に置き換えることで、関数呼び出しのオーバーヘッドを削減し、より直接的な計算に簡略化しています。

前提知識の解説

PNG画像フォーマットとフィルタリング

PNG (Portable Network Graphics) は、可逆圧縮を特徴とするラスター画像フォーマットです。PNGの圧縮効率を高めるために、エンコード時に「フィルタリング」という前処理が行われます。これは、隣接するピクセル間の差分を計算することで、データに冗長性を持たせ、より高い圧縮率を実現するためのものです。

PNGには以下の5種類のフィルタリングアルゴリズムがあります。

  1. None (0): フィルタリングなし。
  2. Sub (1): 現在のピクセルから左隣のピクセル値を引く。
  3. Up (2): 現在のピクセルから上隣のピクセル値を引く。
  4. Average (3): 現在のピクセルから左隣と上隣のピクセルの平均値を引く。
  5. Paeth (4): 現在のピクセルから、左、上、左上の3つの隣接ピクセルに基づいて最も適切な予測値を計算し、その予測値を引く。

Paethフィルタ

Paethフィルタは、PNGのフィルタリングアルゴリズムの中で最も複雑ですが、多くの場合で最も高い圧縮率を提供します。Paethフィルタは、現在のピクセル X の予測値を、その左隣 a、上隣 b、左上 c の3つのピクセル値から計算します。

Paeth予測関数 PaethPredictor(a, b, c) は以下のように定義されます。

  1. p = a + b - c
  2. pa = abs(p - a)
  3. pb = abs(p - b)
  4. pc = abs(p - c)
  5. pa, pb, pc の中で最小の値を持つものに対応する a, b, c のいずれかを予測値として選択します。同値の場合は優先順位があります(pa が最小なら a、次に pb なら b、最後に pc なら c)。

Go言語の image/png パッケージにおける paeth 関数は、この PaethPredictor を実装したものです。

技術的詳細

このコミットの核心は、paeth 関数の特定の呼び出しパターン paeth(0, x, 0) が、常に x を返すという数学的な特性に基づいています。

Go言語の image/png/writer.go 内の paeth 関数の実装(コミット当時のもの、または一般的なPaeth予測関数の実装)を考えると、引数 a, b, c がそれぞれ左隣、上隣、左上のピクセル値に対応します。

paeth(0, x, 0) の場合、これは以下の状況を意味します。

  • a = 0 (左隣のピクセル値が0)
  • b = x (上隣のピクセル値が x)
  • c = 0 (左上のピクセル値が0)

この値をPaeth予測関数に適用すると:

  1. p = a + b - c = 0 + x - 0 = x
  2. pa = abs(p - a) = abs(x - 0) = abs(x)
  3. pb = abs(p - b) = abs(x - x) = abs(0) = 0
  4. pc = abs(p - c) = abs(x - 0) = abs(x)

ここで、pa, pb, pc の中で最小の値は pb = 0 です。Paeth予測関数のルールに従い、最小値が pb に対応するため、予測値として b の値が選択されます。この場合、bx です。

したがって、paeth(0, x, 0) は常に x を返します。

元のコードでは、cdat4[i] = cdat0[i] - paeth(0, pdat[i], 0) という計算が行われていました。ここで cdat0[i] は現在のピクセル値、pdat[i] は上隣のピクセル値(b に相当)です。ac に相当する値が0であるため、paeth(0, pdat[i], 0)pdat[i] と等しくなります。

この最適化により、paeth 関数を呼び出す代わりに直接 pdat[i] を使用することで、関数呼び出しのオーバーヘッドを排除し、コードをより簡潔かつ高速にしています。これは、特に画像エンコードのようなピクセル単位の処理が頻繁に行われる場面で、わずかながらもパフォーマンス向上に寄与します。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/pkg/image/png/writer.go b/src/pkg/image/png/writer.go
index 629452cbfa..5c232b760a 100644
--- a/src/pkg/image/png/writer.go
+++ b/src/pkg/image/png/writer.go
@@ -188,7 +188,7 @@ func filter(cr *[nFilter][]byte, pr []byte, bpp int) int {
 	// The Paeth filter.
 	sum = 0
 	for i := 0; i < bpp; i++ {
-		cdat4[i] = cdat0[i] - paeth(0, pdat[i], 0)
+		cdat4[i] = cdat0[i] - pdat[i]
 		sum += abs8(cdat4[i])
 	}
 	for i := bpp; i < n; i++ {

コアとなるコードの解説

変更は src/pkg/image/png/writer.go ファイルの filter 関数内で行われています。この関数は、PNGエンコード時に各行に適用する最適なフィルタリングアルゴリズムを選択する役割を担っています。

具体的には、filter 関数内でPaethフィルタを適用する部分のループ内で、以下の行が変更されました。

  • 変更前: cdat4[i] = cdat0[i] - paeth(0, pdat[i], 0)
  • 変更後: cdat4[i] = cdat0[i] - pdat[i]

ここで、

  • cdat4[i] は、Paethフィルタを適用した後の現在のピクセル値(差分値)を格納する配列です。
  • cdat0[i] は、フィルタリング前の現在のピクセル値です。
  • pdat[i] は、現在のピクセルの上隣のピクセル値です。

この変更は、前述の「技術的詳細」で説明した paeth(0, x, 0) == x という特性に基づいています。pdat[i]x に相当し、Paethフィルタの計算において左隣と左上のピクセル値が0として扱われる状況(これは、行の先頭部分や、特定の初期化状態などで発生しうる)において、paeth 関数を呼び出す必要がなく、直接 pdat[i] を減算すればよいことを示しています。

この簡略化により、コンパイラが paeth 関数呼び出しのオーバーヘッドを最適化する必要がなくなり、より効率的な機械語が生成されることが期待されます。結果として、PNGエンコード処理全体のわずかなパフォーマンス向上が見込まれます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

I will now output the generated explanation to standard output.

# [インデックス 19592] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ `image/png` パッケージ内の `writer.go` ファイルに対する変更です。具体的には、PNG画像のエンコード処理におけるフィルタリングロジックの最適化に関するものです。

## コミット

commit 9cddb486433bfb3e149df98f2940b25b00b8ed52 Author: Rui Ueyama ruiu@google.com Date: Mon Jun 23 10:29:56 2014 +1000

image/png: remove unnecessary function call

paeth(0, x, 0) == x for any uint8 value.

LGTM=nigeltao
R=golang-codereviews, bradfitz, nigeltao
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/105290049

## GitHub上でのコミットページへのリンク

[https://github.com/golang/go/commit/9cddb486433bfb3e149df98f2940b25b00b8ed52](https://github.com/golang/go/commit/9cddb486433bfb3e149df98f2940b25b00b8ed52)

## 元コミット内容

`image/png: remove unnecessary function call`
`paeth(0, x, 0) == x for any uint8 value.`

## 変更の背景

このコミットは、Go言語の `image/png` パッケージにおけるPNGエンコーディング処理の効率化を目的としています。具体的には、PNGのフィルタリングアルゴリズムの一つであるPaethフィルタの実装において、不要な関数呼び出しを削除することでパフォーマンスを改善しています。

Paethフィルタの計算式には、`paeth`関数が使用されます。この関数は3つの引数 `a`, `b`, `c` を取り、予測値を計算します。コミットメッセージにあるように、特定の条件下(`a=0`, `c=0`の場合)では、`paeth(0, x, 0)` の結果は常に `x` となります。この数学的な特性を利用し、コード内で `paeth(0, pdat[i], 0)` と記述されていた部分を直接 `pdat[i]` に置き換えることで、関数呼び出しのオーバーヘッドを削減し、より直接的な計算に簡略化しています。

## 前提知識の解説

### PNG画像フォーマットとフィルタリング

PNG (Portable Network Graphics) は、可逆圧縮を特徴とするラスター画像フォーマットです。PNGの圧縮効率を高めるために、エンコード時に「フィルタリング」という前処理が行われます。これは、隣接するピクセル間の差分を計算することで、データに冗長性を持たせ、より高い圧縮率を実現するためのものです。

PNGには以下の5種類のフィルタリングアルゴリズムがあります。

1.  **None (0)**: フィルタリングなし。
2.  **Sub (1)**: 現在のピクセルから左隣のピクセル値を引く。
3.  **Up (2)**: 現在のピクセルから上隣のピクセル値を引く。
4.  **Average (3)**: 現在のピクセルから左隣と上隣のピクセルの平均値を引く。
5.  **Paeth (4)**: 現在のピクセルから、左、上、左上の3つの隣接ピクセルに基づいて最も適切な予測値を計算し、その予測値を引く。

### Paethフィルタ

Paethフィルタは、PNGのフィルタリングアルゴリズムの中で最も複雑ですが、多くの場合で最も高い圧縮率を提供します。Paethフィルタは、現在のピクセル `X` の予測値を、その左隣 `a`、上隣 `b`、左上 `c` の3つのピクセル値から計算します。

Paeth予測関数 `PaethPredictor(a, b, c)` は以下のように定義されます。

1.  `p = a + b - c`
2.  `pa = abs(p - a)`
3.  `pb = abs(p - b)`
4.  `pc = abs(p - c)`
5.  `pa`, `pb`, `pc` の中で最小の値を持つものに対応する `a`, `b`, `c` のいずれかを予測値として選択します。同値の場合は優先順位があります(`pa` が最小なら `a`、次に `pb` なら `b`、最後に `pc` なら `c`)。

Go言語の `image/png` パッケージにおける `paeth` 関数は、この `PaethPredictor` を実装したものです。

## 技術的詳細

このコミットの核心は、`paeth` 関数の特定の呼び出しパターン `paeth(0, x, 0)` が、常に `x` を返すという数学的な特性に基づいています。

Go言語の `image/png/writer.go` 内の `paeth` 関数の実装(コミット当時のもの、または一般的なPaeth予測関数の実装)を考えると、引数 `a`, `b`, `c` がそれぞれ左隣、上隣、左上のピクセル値に対応します。

`paeth(0, x, 0)` の場合、これは以下の状況を意味します。
*   `a = 0` (左隣のピクセル値が0)
*   `b = x` (上隣のピクセル値が `x`)
*   `c = 0` (左上のピクセル値が0)

この値をPaeth予測関数に適用すると:
1.  `p = a + b - c = 0 + x - 0 = x`
2.  `pa = abs(p - a) = abs(x - 0) = abs(x)`
3.  `pb = abs(p - b) = abs(x - x) = abs(0) = 0`
4.  `pc = abs(p - c) = abs(x - 0) = abs(x)`

ここで、`pa`, `pb`, `pc` の中で最小の値は `pb = 0` です。Paeth予測関数のルールに従い、最小値が `pb` に対応するため、予測値として `b` の値が選択されます。この場合、`b` は `x` です。

したがって、`paeth(0, x, 0)` は常に `x` を返します。

元のコードでは、`cdat4[i] = cdat0[i] - paeth(0, pdat[i], 0)` という計算が行われていました。ここで `cdat0[i]` は現在のピクセル値、`pdat[i]` は上隣のピクセル値(`b` に相当)です。`a` と `c` に相当する値が0であるため、`paeth(0, pdat[i], 0)` は `pdat[i]` と等しくなります。

この最適化により、`paeth` 関数を呼び出す代わりに直接 `pdat[i]` を使用することで、関数呼び出しのオーバーヘッドを排除し、コードをより簡潔かつ高速にしています。これは、特に画像エンコードのようなピクセル単位の処理が頻繁に行われる場面で、わずかながらもパフォーマンス向上に寄与します。

## コアとなるコードの変更箇所

```diff
diff --git a/src/pkg/image/png/writer.go b/src/pkg/image/png/writer.go
index 629452cbfa..5c232b760a 100644
--- a/src/pkg/image/png/writer.go
+++ b/src/pkg/image/png/writer.go
@@ -188,7 +188,7 @@ func filter(cr *[nFilter][]byte, pr []byte, bpp int) int {
 	// The Paeth filter.
 	sum = 0
 	for i := 0; i < bpp; i++ {
-		cdat4[i] = cdat0[i] - paeth(0, pdat[i], 0)
+		cdat4[i] = cdat0[i] - pdat[i]
 		sum += abs8(cdat4[i])
 	}
 	for i := bpp; i < n; i++ {

コアとなるコードの解説

変更は src/pkg/image/png/writer.go ファイルの filter 関数内で行われています。この関数は、PNGエンコード時に各行に適用する最適なフィルタリングアルゴリズムを選択する役割を担っています。

具体的には、filter 関数内でPaethフィルタを適用する部分のループ内で、以下の行が変更されました。

  • 変更前: cdat4[i] = cdat0[i] - paeth(0, pdat[i], 0)
  • 変更後: cdat4[i] = cdat0[i] - pdat[i]

ここで、

  • cdat4[i] は、Paethフィルタを適用した後の現在のピクセル値(差分値)を格納する配列です。
  • cdat0[i] は、フィルタリング前の現在のピクセル値です。
  • pdat[i] は、現在のピクセルの上隣のピクセル値です。

この変更は、前述の「技術的詳細」で説明した paeth(0, x, 0) == x という特性に基づいています。pdat[i]x に相当し、Paethフィルタの計算において左隣と左上のピクセル値が0として扱われる状況(これは、行の先頭部分や、特定の初期化状態などで発生しうる)において、paeth 関数を呼び出す必要がなく、直接 pdat[i] を減算すればよいことを示しています。

この簡略化により、コンパイラが paeth 関数呼び出しのオーバーヘッドを最適化する必要がなくなり、より効率的な機械語が生成されることが期待されます。結果として、PNGエンコード処理全体のわずかなパフォーマンス向上が見込まれます。

関連リンク

参考にした情報源リンク