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[インデックス 19593] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のsyscallパッケージ内のsyscall_bsd.goファイルに対する変更です。syscall_bsd.goは、FreeBSD、NetBSD、OpenBSDなどのBSD系オペレーティングシステムにおけるシステムコール(OSのカーネルが提供する低レベルな機能)へのGo言語からのアクセスを定義しています。具体的には、ファイル操作や時間関連のシステムコールであるUtimesおよびFutimesに関連する部分が修正されています。

コミット

このコミットは、godocツールが生成するドキュメントにおいて、syscallパッケージ内部で使用される特殊な//sysプロトタイプ行が表示されないようにするための修正です。これにより、生成されるドキュメントの可読性が向上し、ユーザーにとって不要な内部実装の詳細が隠蔽されます。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/2ca1f7d588e67fe82f1ca375241059c61a6ded1c

元コミット内容

syscall: don't display syscall prototype lines on godoc

LGTM=dave
R=golang-codereviews, dave
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/110020050
---
 src/pkg/syscall/syscall_bsd.go | 2 ++\n 1 file changed, 2 insertions(+)\n

変更の背景

Go言語のsyscallパッケージは、オペレーティングシステムの低レベルな機能(システムコール)をGoプログラムから呼び出すためのインターフェースを提供します。このパッケージの内部では、Goの関数と実際のC言語のシステムコールをマッピングするために、//sysという特殊なコメントディレクティブが使用されています。これは、mkwinsyscallのようなコード生成ツールが、Goの関数シグネチャから対応するシステムコールのラッパーコードを自動生成するために利用するメタデータです。

しかし、godocツール(Goのソースコードからドキュメントを生成するツール)がこれらの//sysディレクティブを含むソースコードを処理する際、意図せずこれらの内部的なプロトタイプ行を生成されるドキュメントに含めてしまっていました。これは、godocがコメントブロックを解析し、その直後の関数に関連するドキュメントとして表示する通常の挙動によるものです。

結果として、godocで生成されたsyscallパッケージのドキュメントには、開発者向けの内部的な情報である//sys行が表示され、エンドユーザーにとっては混乱を招く、あるいは不要な情報となっていました。このコミットの目的は、この//sys行がgodocによってドキュメントとして表示されないようにすることです。

前提知識の解説

Goのsyscallパッケージ

syscallパッケージは、Goプログラムがオペレーティングシステムのシステムコールを直接呼び出すための低レベルなインターフェースを提供します。これにより、ファイルシステム操作、プロセス管理、ネットワーク通信など、OSカーネルが提供する基本的な機能にアクセスできます。このパッケージは、OSに依存する部分が多く、各OS(Linux, Windows, macOS, BSDなど)ごとに異なる実装を持っています。

godocツール

godocは、Go言語のソースコードから自動的にドキュメントを生成する公式ツールです。Goのソースコード内のコメント(特にエクスポートされた識別子に付随するコメント)を解析し、HTML形式などで整形されたドキュメントを生成します。開発者はgodocを使用することで、コードとドキュメントを密接に連携させ、常に最新のドキュメントを維持することができます。godocは、コメントブロックとそれに続くコード要素(関数、変数、型など)の関連性を認識し、それらを組み合わせてドキュメントを構築します。

//sysディレクティブ

//sysは、Goの標準ライブラリ、特にsyscallパッケージ内で使用される特殊なコメントディレクティブです。これは、Goの関数がどのC言語のシステムコールに対応するかを示すためのメタデータとして機能します。例えば、//sys read(fd int, p []byte) (n int, err error)のような形式で記述され、mkwinsyscallなどのツールがこの情報を用いて、Goの関数からOSのシステムコールを呼び出すためのボイラープレートコードを生成します。このディレクティブは、Goのツールチェーン内部で利用されるものであり、通常はエンドユーザー向けのドキュメントに表示されるべきではありません。

技術的詳細

godocは、Goのソースコードを解析する際に、コメントブロックとそれに続くコード要素の関連性を判断します。通常、コメントブロックの直後に続く関数や変数などは、そのコメントがドキュメントとして関連付けられます。

このコミットの変更は、//sysディレクティブの行の直後に空行を挿入するという非常にシンプルなものです。この空行が重要な役割を果たします。godocのコメント解析ロジックでは、コメントブロックとコード要素の間に空行が存在すると、そのコメントブロックは直後のコード要素のドキュメントとは見なされず、独立したコメントとして扱われるか、あるいは無視されることがあります。

具体的には、godocは通常、コメントブロックの後に続く最初の非コメント行をそのコメントの対象と見なします。しかし、コメントブロックと対象のコード行の間に空行が入ると、godocはそのコメントブロックを「孤立したコメント」と判断し、ドキュメントとして表示しない、あるいは別の方法で処理するようになります。この挙動を利用して、//sysディレクティブがUtimesFutimes関数のドキュメントの一部として表示されるのを防いでいます。

これは、godocのコメント解析における一般的な慣習であり、Goのドキュメンテーションスタイルガイドにも通じるものです。関数や型の説明コメントは、その定義の直前に空行なしで記述されることが推奨されます。これにより、godocが正しくコメントを関連付けてドキュメントを生成できます。逆に、内部的なコメントや、特定のコード要素に直接関連付けたくないコメントは、空行を挟むことでドキュメントから除外されることがあります。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/syscall/syscall_bsd.goファイルにおいて、以下の2箇所に空行が追加されました。

--- a/src/pkg/syscall/syscall_bsd.go
+++ b/src/pkg/syscall/syscall_bsd.go
@@ -498,6 +498,7 @@ func SysctlUint32(name string) (value uint32, err error) {
 }
 
 //sys	utimes(path string, timeval *[2]Timeval) (err error)\n
+\n
 func Utimes(path string, tv []Timeval) (err error) {
 	if len(tv) != 2 {
 		return EINVAL
@@ -521,6 +522,7 @@ func UtimesNano(path string, ts []Timespec) error {
 }
 
 //sys	futimes(fd int, timeval *[2]Timeval) (err error)\n
+\n
 func Futimes(fd int, tv []Timeval) (err error) {
 	if len(tv) != 2 {
 		return EINVAL

コアとなるコードの解説

変更は非常にシンプルで、Utimes関数とFutimes関数の定義の直前にある//sysコメント行の直後に、それぞれ1行の空行が挿入されています。

  • //sys utimes(path string, timeval *[2]Timeval) (err error) の直後に空行が追加。
  • //sys futimes(fd int, timeval *[2]Timeval) (err error) の直後に空行が追加。

この空行の追加により、godocはこれらの//sys行を、その直後に続くUtimesおよびFutimes関数のドキュメンテーションコメントとは見なさなくなります。結果として、godocが生成するドキュメントには、これらの内部的な//sysプロトタイプ行が表示されなくなり、ドキュメントがよりクリーンでユーザーフレンドリーになります。

この修正は、コードの機能的な振る舞いには一切影響を与えません。あくまでgodocによるドキュメント生成時の表示に関する修正です。

関連リンク

参考にした情報源リンク