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[インデックス 1969] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるstringsパッケージ内のIndex関数のドキュメントを改善し、同時にその実装をわずかに簡素化するものです。特に、Index関数が検索対象の文字列(s)内に区切り文字(sep)が見つからなかった場合に-1を返すという振る舞いを明示的にドキュメントに追加しています。また、コード内でのlen(sep)の複数回呼び出しを避けることで、効率性をわずかに向上させています。

コミット

add error case in doc for Index. simplify code slightly.

R=rsc DELTA=5 (1 added, 0 deleted, 4 changed) OCL=27148 CL=27151

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/640f3f25dcd238bfc6b4fd99b1808071cfa12888

元コミット内容

commit 640f3f25dcd238bfc6b4fd99b1808071cfa12888
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Tue Apr 7 00:32:16 2009 -0700

    add error case in doc for Index. simplify code slightly.
    
    R=rsc
    DELTA=5  (1 added, 0 deleted, 4 changed)
    OCL=27148
    CL=27151
---
 src/lib/strings.go | 9 +++++----\n 1 file changed, 5 insertions(+), 4 deletions(-)\n
diff --git a/src/lib/strings.go b/src/lib/strings.go
index 1acbed425e..06a923427a 100644
--- a/src/lib/strings.go
+++ b/src/lib/strings.go
@@ -37,14 +37,15 @@ func Count(s, sep string) int {
 	return n
 }
 
-// Index returns the index of the first instance of sep in s.\n+// Index returns the index of the first instance of sep in s, or -1 if sep is not present in s.\n func Index(s, sep string) int {
-\tif sep == "" {\n+\tn := len(sep);\n+\tif n == 0 {\n \t\treturn 0\n \t}\n \tc := sep[0];\n-\tfor i := 0; i+len(sep) <= len(s); i++ {\n-\t\tif s[i] == c && (len(sep) == 1 || s[i:i+len(sep)] == sep) {\n+\tfor i := 0; i+n <= len(s); i++ {\n+\t\tif s[i] == c && (n == 1 || s[i:i+n] == sep) {\n \t\t\treturn i\n \t\t}\n \t}\n```

## 変更の背景

このコミットの主な目的は、`strings.Index`関数の振る舞いをより明確にすることと、その実装をわずかに最適化することです。

1.  **ドキュメントの明確化**: `strings.Index`関数は、検索対象の文字列`s`内に`sep`が見つからない場合に`-1`を返すという、一般的なプログラミング言語の文字列検索関数における慣習的な「エラーケース」の振る舞いを持ちます。しかし、元のドキュメントにはこの点が明記されていませんでした。この変更により、関数の挙動がより明確になり、利用者が誤解なく関数を使用できるようになります。これはAPIの使いやすさと堅牢性を高める上で重要です。

2.  **コードの簡素化と微細な最適化**: 元のコードでは、`len(sep)`がループ条件や条件分岐内で複数回評価されていました。`len`関数は通常非常に高速ですが、ループ内で繰り返し呼び出すことは、わずかながらオーバーヘッドを生じさせる可能性があります。このコミットでは、`len(sep)`の結果を一度変数`n`に格納し、その`n`を以降の処理で再利用することで、コードをより簡潔にし、潜在的なパフォーマンスの向上(マイクロ最適化)を図っています。また、`sep == ""`という文字列比較を`n == 0`という整数比較に置き換えることで、より直接的で効率的なチェックを実現しています。

これらの変更は、Go言語の設計哲学である「シンプルさ」と「効率性」を反映したものであり、ライブラリの品質向上に貢献しています。

## 前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGo言語の基本的な概念と`strings`パッケージの知識が必要です。

1.  **Go言語の文字列 (string)**:
    *   Goの文字列は不変(immutable)なバイトのスライスです。UTF-8エンコードされたテキストを扱うことが一般的ですが、内部的にはバイト列として扱われます。
    *   `len(s)`関数は文字列`s`のバイト長を返します。これはUTF-8文字数とは異なる場合があります(例: 日本語の文字は複数バイトで構成されるため)。
    *   文字列のスライス(例: `s[i:j]`)は、元の文字列の指定された範囲のバイトをコピーして新しい文字列を作成します。

2.  **`strings`パッケージ**:
    *   Go言語の標準ライブラリの一部であり、文字列操作のための多くのユーティリティ関数を提供します。
    *   `strings.Index(s, sep string) int`: この関数は、文字列`s`内で`sep`が最初に出現するインデックスを返します。インデックスは0から始まります。もし`sep`が見つからない場合は、慣習的に`-1`を返します。

3.  **ループと条件分岐**:
    *   `for`ループ: Go言語における基本的な繰り返し構造です。`for i := 0; i < N; i++`のようなC言語スタイルのループが一般的です。
    *   `if`文: 条件に基づいてコードの実行フローを制御します。

4.  **マイクロ最適化**:
    *   プログラムの特定のごく小さな部分を最適化することで、全体的なパフォーマンスをわずかに向上させる手法です。今回のコミットにおける`len(sep)`のキャッシュは、その典型的な例です。現代のコンパイラはこのような最適化を自動で行うこともありますが、明示的に記述することで意図を明確にし、古いコンパイラや特定の状況下でのパフォーマンスを保証できます。

## 技術的詳細

このコミットは、`src/lib/strings.go`ファイル内の`Index`関数に対して行われた変更です。

**1. ドキュメントの変更:**

変更前:
```go
// Index returns the index of the first instance of sep in s.

変更後:

// Index returns the index of the first instance of sep in s, or -1 if sep is not present in s.

この変更は、Index関数がsepが見つからなかった場合に-1を返すという重要な振る舞いを明示的に追加しています。これにより、関数の仕様がより完全になり、利用者が関数の戻り値を適切に処理できるようになります。

2. コードの簡素化と最適化:

変更前:

func Index(s, sep string) int {
	if sep == "" {
		return 0
	}
	c := sep[0];
	for i := 0; i+len(sep) <= len(s); i++ {
		if s[i] == c && (len(sep) == 1 || s[i:i+len(sep)] == sep) {
			return i
		}
	}
	return -1
}

変更後:

func Index(s, sep string) int {
	n := len(sep); // sepの長さを一度計算し、変数nに格納
	if n == 0 {    // sep == "" の代わりに n == 0 をチェック
		return 0
	}
	c := sep[0];
	for i := 0; i+n <= len(s); i++ { // len(sep) の代わりに n を使用
		if s[i] == c && (n == 1 || s[i:i+n] == sep) { // len(sep) の代わりに n を使用
			return i
		}
	}
	return -1
}

このコード変更のポイントは以下の通りです。

  • len(sep)のキャッシュ: sepの長さをnという変数に一度格納し、以降の計算(ループ条件i+n <= len(s)や、条件分岐n == 1、スライス操作s[i:i+n])でnを再利用しています。これにより、len(sep)が複数回評価されるのを防ぎ、コードの可読性を向上させるとともに、わずかながら実行時の効率性を高めています。
  • 空文字列のチェックの最適化: if sep == ""という文字列比較をif n == 0という整数比較に置き換えています。これは機能的には同じですが、整数比較の方が一般的に高速であり、より直接的な意図を表現しています。

これらの変更は、Go言語のコードベース全体に見られる、パフォーマンスと可読性のバランスを重視する設計思想を反映しています。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/lib/strings.go
+++ b/src/lib/strings.go
@@ -37,14 +37,15 @@ func Count(s, sep string) int {
 	return n
 }
 
-// Index returns the index of the first instance of sep in s.
+// Index returns the index of the first instance of sep in s, or -1 if sep is not present in s.
 func Index(s, sep string) int {
-	if sep == "" {
+	n := len(sep);
+	if n == 0 {
 		return 0
 	}
 	c := sep[0];
-	for i := 0; i+len(sep) <= len(s); i++ {
-		if s[i] == c && (len(sep) == 1 || s[i:i+len(sep)] == sep) {
+	for i := 0; i+n <= len(s); i++ {
+		if s[i] == c && (n == 1 || s[i:i+n] == sep) {
 			return i
 		}
 	}

コアとなるコードの解説

上記の差分は、src/lib/strings.goファイル内のIndex関数の変更を示しています。

  1. ドキュメントコメントの変更:

    -// Index returns the index of the first instance of sep in s.
    +// Index returns the index of the first instance of sep in s, or -1 if sep is not present in s.
    

    これは、Index関数のドキュメントコメントの変更です。以前は単に「s内でsepが最初に出現するインデックスを返す」とだけ書かれていましたが、変更後は「s内でsepが最初に出現するインデックスを返すか、sepが存在しない場合は-1を返す」と追記されています。これにより、関数がsepを見つけられなかった場合の戻り値が明確になりました。

  2. sepの長さのキャッシュ:

    -	if sep == "" {
    +	n := len(sep);
    +	if n == 0 {
    

    変更前は、sepが空文字列であるかを直接比較していました。変更後は、まずsepの長さをnという新しい変数に格納しています。そして、sepが空文字列であるかのチェックを、n0であるかのチェックに置き換えています。これは、文字列比較よりも整数比較の方が効率的であるため、わずかな最適化となります。また、nを導入することで、後続のコードでlen(sep)を繰り返し呼び出す必要がなくなります。

  3. ループ条件と文字列スライスでのnの利用:

    -	for i := 0; i+len(sep) <= len(s); i++ {
    -		if s[i] == c && (len(sep) == 1 || s[i:i+len(sep)] == sep) {
    +	for i := 0; i+n <= len(s); i++ {
    +		if s[i] == c && (n == 1 || s[i:i+n] == sep) {
    

    変更前は、ループ条件i+len(sep) <= len(s)や、内部の条件分岐len(sep) == 1、文字列スライスs[i:i+len(sep)]の各所でlen(sep)が直接使用されていました。変更後は、これらすべての箇所で、事前に計算してnに格納しておいたsepの長さnを使用しています。これにより、len(sep)の計算が一度で済むようになり、コードがより簡潔で効率的になりました。

全体として、このコミットはIndex関数のドキュメントを改善し、その実装をより効率的かつ簡潔にするための、小さくも重要な変更です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • Go言語のソースコード
  • Go言語のコミット履歴
  • Go言語の文字列とスライスに関する一般的な知識
  • マイクロ最適化に関する一般的なプログラミングの知識