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[インデックス 19739] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のツールチェインに含まれるobjdumpコマンドのソースコードsrc/cmd/objdump/main.goから、古くなったコメントを削除するものです。具体的には、ARMアーキテクチャ用の逆アセンブラがGo 1.3リリースまでに実装される予定であるという記述が削除されています。これは、当該逆アセンブラが既に実装され、コメントが現状を反映していなくなったためです。

コミット

objdump: remove out-of-date comment

LGTM=iant
R=rsc, iant
CC=golang-codereviews
https://golang.org/cl/112320043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/348a20548d8676fef64a304bea2e5675e5f4af2d

元コミット内容

commit 348a20548d8676fef64a304bea2e5675e5f4af2d
Author: Matthew Dempsky <mdempsky@google.com>
Date:   Tue Jul 15 06:03:36 2014 -0700

    objdump: remove out-of-date comment
    
    LGTM=iant
    R=rsc, iant
    CC=golang-codereviews
    https://golang.org/cl/112320043
---
 src/cmd/objdump/main.go | 3 ---
 1 file changed, 3 deletions(-)

diff --git a/src/cmd/objdump/main.go b/src/cmd/objdump/main.go
index ade54366e5..137776f47a 100644
--- a/src/cmd/objdump/main.go
+++ b/src/cmd/objdump/main.go
@@ -29,9 +29,6 @@
 // Each stanza gives the disassembly for a contiguous range of addresses
 // all mapped to the same original source file and line number.
 // This mode is intended for use by pprof.
-//
-// The ARM disassembler is missing (golang.org/issue/7452) but will be added
-// before the Go 1.3 release.
 package main
 
 import (

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語のプロファイリングツールであるpprofがARMアーキテクチャのバイナリを正しく逆アセンブルできないという問題がありました。具体的には、go tool pproflistコマンドがDarwin上でARMバイナリを逆アセンブルしようとすると失敗するという報告が、GoのIssue golang.org/issue/7452として挙げられていました。

この問題の根本原因は、Goツールチェインに付属するobjdumpツールにARM逆アセンブラが欠けていたことにありました。この状況を解決するため、objdumpツールをC言語からGo言語に完全に書き直すという大きな変更がコミット0d441a0("cmd/objdump: rewrite in Go.")によって行われました。この書き直しの一環として、ARM命令セットをGoネイティブで解釈・逆アセンブルする機能が追加されました。

元のコメント「The ARM disassembler is missing (golang.org/issue/7452) but will be added before the Go 1.3 release.」は、この問題が解決される前の状況を記述していました。しかし、objdumpのGoへの書き直しとARM逆アセンブラの実装が完了したことで、このコメントは古くなり、誤解を招く可能性がありました。そのため、現状を正確に反映させるために、この古くなったコメントを削除する必要が生じました。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の概念を理解しておく必要があります。

  • Go言語のツールチェイン: Go言語は、コンパイラ、リンカ、フォーマッタ、テストツールなど、開発に必要な一連のツールを統合したツールチェインを提供します。objdumppprofもこのツールチェインの一部です。
  • objdumpコマンド: objdumpは、オブジェクトファイルや実行可能ファイルの内容を解析し、逆アセンブルされたコード(アセンブリ言語)を表示するためのツールです。デバッグやパフォーマンス分析において、プログラムが実際にどのように動作しているかを低レベルで確認する際に使用されます。
  • pprofツール: pprofはGo言語のプロファイリングツールで、CPU使用率、メモリ割り当て、ゴルーチンスタックトレースなどを可視化し、アプリケーションのパフォーマンスボトルネックを特定するのに役立ちます。pprofは、プロファイルデータから特定の関数やコードブロックの実行状況を詳細に分析するために、内部的にobjdumpのような逆アセンブル機能を利用することがあります。
  • 逆アセンブラ (Disassembler): 機械語(CPUが直接実行するバイナリコード)を、人間が読めるアセンブリ言語の命令に変換するプログラムです。これにより、コンパイルされたプログラムの内部動作を理解することができます。
  • ARMアーキテクチャ: Advanced RISC Machineの略で、スマートフォン、タブレット、組み込みシステムなど、多くのモバイルデバイスや低消費電力デバイスで広く使用されているCPUアーキテクチャです。
  • Go 1.3リリース: Go言語の特定のバージョンリリースです。Go言語は定期的に新しいバージョンをリリースし、新機能の追加、パフォーマンスの改善、バグ修正などを行っています。このコメントが書かれた時点では、Go 1.3が次の主要なリリースとして予定されており、そのリリースまでにARM逆アセンブラが追加されることが目標とされていました。
  • Go Issue Tracker (golang.org/issue/XXXX): Goプロジェクトの公式なバグ報告および機能要望の追跡システムです。開発者やユーザーはここで問題点を報告し、その進捗を追跡します。golang.org/issue/7452は、ARM逆アセンブラの欠如に関する特定の課題を指していました。

技術的詳細

このコミット自体は、コードの機能的な変更を伴うものではなく、単にコメントの削除という非常に小さな変更です。しかし、その背景にある技術的詳細を理解することが重要です。

元のコメントは、objdumpツールがARMアーキテクチャの逆アセンブルに対応していないという状況を説明していました。これは、objdumpが元々C言語で実装されており、そのC言語版のobjdumpがARM逆アセンブラの機能を持っていなかったためです。

Go 1.3リリースに向けて、GoチームはobjdumpツールをC言語からGo言語に完全に書き直すことを決定しました。この書き直しは、単に言語を置き換えるだけでなく、Goのツールチェイン全体の一貫性を高め、クロスプラットフォームでのビルドと配布を容易にすることを目的としていました。

このGo言語での再実装の過程で、ARM命令セットの逆アセンブルロジックがGoネイティブで実装されました。これには、以下の技術的側面が含まれます。

  1. 命令デコード: ARMバイナリの生バイト列を読み込み、個々のARM命令を識別するロジックの実装。ARM命令は固定長または可変長であり、そのフォーマットを正確に解析する必要があります。
  2. オペランド抽出: 命令からレジスタ、即値、メモリアドレスなどのオペランドを正確に抽出し、その意味を解釈する機能。
  3. 命令フォーマット: デコードされた命令とオペランドを、標準的なARMアセンブリ構文(例: MOV R0, #0x10)に変換して人間が読める形式で出力する機能。

これらの機能がGo言語で実装されたことにより、objdumpは外部のCコンパイラやプラットフォーム固有のCライブラリに依存することなく、ARMバイナリを逆アセンブルできるようになりました。これにより、pprofのようなツールがARMプラットフォーム上でも正しく動作し、開発者がARMアーキテクチャのGoプログラムのパフォーマンスを分析できるようになりました。

このコミットは、ARM逆アセンブラの実装が完了し、Go 1.3リリース前にその機能が利用可能になったことを示す「証拠」として、古くなったコメントを削除したものです。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/cmd/objdump/main.goファイルのみです。

--- a/src/cmd/objdump/main.go
+++ b/src/cmd/objdump/main.go
@@ -29,9 +29,6 @@
 // Each stanza gives the disassembly for a contiguous range of addresses
 // all mapped to the same original source file and line number.
 // This mode is intended for use by pprof.
-//
-// The ARM disassembler is missing (golang.org/issue/7452) but will be added
-// before the Go 1.3 release.
 package main
 
 import (

コアとなるコードの解説

削除されたコメントは以下の3行です。

// The ARM disassembler is missing (golang.org/issue/7452) but will be added
// before the Go 1.3 release.

このコメントは、objdumpツールの機能に関するもので、特にARMアーキテクチャの逆アセンブラがまだ実装されていないこと、そしてそれがGo 1.3リリースまでにgolang.org/issue/7452で追跡されているという情報を提供していました。

このコメントが削除されたのは、golang.org/issue/7452で言及されていたARM逆アセンブラが既に実装され、Go 1.3リリース前にobjdumpツールに組み込まれたためです。つまり、このコメントが記述していた「ARM逆アセンブラが欠けている」という状況はもはや真実ではなくなったため、コードベースの正確性を保つために削除されました。

この変更自体は、プログラムの動作に影響を与えるものではありません。単に、ソースコード内の情報が最新の状態に保たれるようにするためのメンテナンス作業です。しかし、この小さな変更は、Goツールチェインが継続的に改善され、新しいアーキテクチャのサポートが追加されていく開発プロセスの一端を示しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go Issue Tracker (golang.org/issue/7452) の情報
  • Goの公式ドキュメントおよび関連するGitHubリポジトリのコードベース
  • Go言語のobjdumpおよびpprofツールの一般的な知識
  • ARMアーキテクチャおよび逆アセンブルに関する一般的な知識