KDOC 209: 新しいものを生み出すためには詳しくなければならない
この文書のステータス
- 作成
- 2024-07-30 貴島
- レビュー
- 2024-08-10 貴島
概要
KDOC 207: 『Unix考古学』を読んだ。UNIXやコンピュータの歴史をいかに知らなかったかを認識した。今の状況は誰かが思い描いた1本道ではない。そのときどきの技術的制約、政治、企業の方針によって曲がりくねった積み重ねが、今の状況になっているとわかる。
UNIXやOSを構成する要素は、一気に実装されたのではない。新しいものを作るたびに問題点を認識し、各時点の最良のアプローチをもって改良し、洗練させていった。たとえば仮想記憶は、アイデアはあったもののハードウェアの進歩を待たなければならず、また既存実装に多くの修正が必要であったので、実装は後になる。
一人の天才科学者がすべてを作ったのではなく、数十年を通じて天才科学者たちがアイデアを追加したり改変して、出来上がった。理論研究の論文から得た洞察を実装して解決したケースも多い。
新しいものを生み出すためには、物事をもっとよく理解する必要がある。ポール・グレアムが何かのエッセイで言っていたことだ。よく知るたびに、完全に見えたものには歪みがあり、もっとよくできる余地があることに気づく。UNIXの偉人たちは、まさにそういうレシピで偉業をなしたように見える。
問題点を認識できるくらい詳しくなるのが新しいものを生み出すスタートラインなのだ。よく知らずに、新しいものを生み出せない。誰かがすでに考えついている可能性が高い。
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