KDOC 473: 『Excelでできる不動産投資「収益計算」のすべて』

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  • 作成
    • 2025-11-03 貴島
  • レビュー
    • 2025-11-03 貴島

概要

『Excelでできる不動産投資「収益計算」のすべて』は、不動産投資についての本である。

メモ

  • 金利の支払いは税務上の経費になるが、元本の返済は経費にならない。したがって税務上の経費が減るので税金の支払いが増えCFを圧迫する。純資産は順調に増えている(位置173)
  • 賃料から得られるCFばかりにとらわれず、いかに純資産を増加させるかに着目するのが重要(位置183)
  • 不動産投資における最大の経費は税金である。投資家が税金について熟知すべき理由は、税金を支払っても利益が出るか検証するためである。不動産業者や税理士に試算を依頼しても概算しか出てこない(位置225)
  • 物件価格に変動がない場合の1年間の 正味利益簡便計算法 (位置358)
    • 不動産投資の1年間の賞味利益 = 賃貸NOI - 金利支払い - 税金支払い
    • 物件を保有することにより得られる正味利益(純資産の増加額)は、毎年の賃貸NOIの積み上げであり、物件を保有するために必要なコストは借り入れ金利と税金である
  • 不動産投資における減価償却とは、今年の税金が安くなり、その分売却時の税金が高くなるという性質を持つ、会計上の経費である。したがって、買ってから売るまでの全体で見れば、減価償却による損益は相殺され、その有無が賞味利益に与える影響はほとんどない(位置358)
  • 正味利益の計算では、借入金利の支払いだけが経費となり、元金の返済は経費として考えない。正味利益のうち、一部はCFとして現金を得て、元金返済部分はそれと同額の土地持分を購入したと考えているためである。不動産をローンで買うことには、ローン返済を通じて土地を少しづつ自分のものにしていくという意味合いがある。銀行に借金を返せば、その分だけ土地持分が増えていくと考える(位置381)
  • 土地は売れば換金できる。換金性のあるものはすべて現金同等と考え、土地持分の取得も同じく、純資産が増加したと理解する。今すぐ得られるキャッシュフローに、売却時に現金化される土地の持分増加という「含み益」を足し合わせた額が保有期間中の正味利益と考えるべき(位置381)
  • 保有期間中の賞味利益 = 税引後賃料キャッシュフロー + (今期に増加した含み益 - 売却時に支払うべき税金)
    • 「含み益」は土地の持分という形で蓄積されていく。将来にわたって土地価格が下落しない場所を選ぶことが重要である(位置398)
  • 解散価値(NAV): 「いま不動産を売却して、売却益に対する税金を支払って投資を終了させた場合、結局いくら残るのか」
  • 金融市場では、換金価値のある資産はすべて現金換算してリアルタイムで評価するのが慣例である。所有権が法律によって保証されていてすぐに買い手が見つかるのなら、どのような資産も解散価値(純資産)をいつでも現金化できる、現金と等価の資産であることに変わりない。不動産投資において、キャッシュフローばかりに気をとられず、純資産の増加に注力すべきなのはそのため(位置438)
  • キャッシュフローだけを見ると物件を売却したとき、借入金の返済が終わった翌月から急激に利益が増えるように見えるが、実際にはそうではない。NAVの増加額は毎年ほぼ一定である。それをどのような形で受け取るか、賃料キャッシュフローとしていま現金を受け取るか、土地持分を将来現金化するか、その違いだけ。十分な純資産があれば、現金を作ることは難しくない。純資産には担保価値と換金性があるから(位置438)
  • 日本の都市部で行われている不動産投資の収益の源泉は、高い賃料収入(NOI)と低金利の借り入れの広いスプレッド(差額)である。売却時に高く売れればキャピタルゲインも得られるが、日本でキャピタルゲインありきの不動産投資を考えている人は少数派である(位置(p473)
  • 諸外国では借入金利が高く、賃料収入と借入金利のスプレッドは非常に狭い。借入した場合持てば持つほど赤字が積み重なり、それを相殺できるだけの大きな売却益が得られなければ利益は出ない。したがって海外ではキャピタルゲインに期待する投資であり、日本とは状況が異なる。世界の投資家から日本の不動産が注目されているのは相対的に高い利回りと低い借入金利による広いスプレッドが得られ、かつ価格の上昇が期待できるからである(p474)
  • 物件を購入したら売却までを見据えて保有期間中にすべきことは賃料の値上げである。賃料を値上げすれば収入が増えるという当たり前の効果があるが、それ以上に重要なのは売却価格の上昇に対する寄与が高いためである(位置557)
  • 投資の上級者は、「すべての投資は、将来キャッシュフローの割引現在価値である」という表現をする。投資とはキャッシュフローを得て資金を増やすための活動である。会計上の「含み益」(未実現益)を知る必要はあるが、結局「いつの時点で、いくらの現金を受け取れる」という「実現益」こそが投資のすべてである。すべての投資は金融商品や事業において将来発生するであろうキャッシュフローを得るためにいまいくらまで払えるかを判断することにほかならない(位置603)
  • 割引現在価値: 早期に得られるキャッシュフローには再投資する利回り分だけ余計に価値がある。最低でも年率3%の利回りが確約されている市場環境であれば、いま100もらうのと1年後に103もらうのは同じ価値といえる(位置619)
  • 日本で不動産投資をする最大の理由は、金融機関からの借入により高いROEが期待できるから(位置715)
  • 不動産投資において、不動産は融資を得るための媒介物にすぎず、重要なのは不動産そのものよりも融資である、という。融資を中心に据えた不動産投資とは、金融政策により生じた金融システムの歪みを利益に変えるハックのようなもの(位置759)
  • 銀行融資で計算すべき要素は「自己資金比率」「金利」「返済期間」だけ(位置764)
  • 現在の融資環境においては、初期投資額の大小に関わらず、5年後に売却するというシナリオであれば売却まで考慮した投資全体の利益額はほとんど変わらない。低金利の借入による不動産投資では、自己資金額にかかわらず、物件購入後に得られる利益の総額はほとんど同じである。自己資金を多く投入しても、利益の総額がほぼ一定なので、投入した自己資金は収益向上に貢献していない、といえる(位置778)
  • 自己資金を多く入れることには、金利の支払いを減らす以上の意味合いはない。少ない自己資金で物件を購入することは、価格下落リスクを吸収するためのバッファとして、本来は銀行に拘束されるべき資金を手元に残しておくことだと考えるとよい(位置791)
  • 返済期間の長短を変えることは、先に多くのキャッシュフローを得るか、売却時にまとめて「含み益」を現金化するか、その比率を変えることである。返済期間の長短によって金利の支払いが増減するが、購入から売却までの全体で見ると投資から得られる利益の総額は低金利の環境で大きく変わらない(位置855)
  • 金利の支払いは「残債に対して n %」という計算によるものなので、返済が進み残債が減少すれば、金利上昇に対する耐性が付く(位置919)
  • 不動産投資とは所有権という無形の資産に投資するものであり、それに金銭的価値がつくのは建築基準法や税制などの論理的なインフラによる保証と制限があるから(位置1024)
  • 不動産投資は物件を売却して出口を迎えるまでは、すでに現金として受け取ったキャッシュフローですら「含み益」にすぎないということを念頭におくべき。減価償却を多くとれば、売却時のキャピタルゲイン課税が高額になる(位置1245)
  • 低金利で借入ができる以上、高利回り物件を厳選して購入するよりも一般的な物件でも保有規模を拡大したほうが利益に貢献する(位置1245)
  • 「規模が大きいと危ないからはじめは小さく」と考える人が多くいるが、じっさいには規模が大きいほうが安定しており利益率も高い(位置2462)

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