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[インデックス 12514] ファイルの概要

このコミットは、Goプロジェクトのmisc/dashboardディレクトリ配下にあった、もはや使用されなくなったパッケージビルダ関連のコードを削除するものです。具体的には、Goパッケージのビルド、テスト、およびGoogle Codeへのアップロードを自動化していたと思われる機能が対象となっています。これにより、コードベースの整理と、古くなった依存関係の解消が図られています。

コミット

Author: Andrew Gerrand adg@golang.org Date: Thu Mar 8 21:54:46 2012 +1100

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/8a146e707cc54a8e71758521085c6a2853ff8081

元コミット内容

misc/dashboard: remove obsolete package builder code

R=golang-dev, dsymonds
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5790045

変更の背景

このコミットが行われた2012年3月という時期は、Go言語がまだ比較的新しい段階にあり、その開発インフラが進化していた時期にあたります。コミットメッセージにある「obsolete (廃止された、時代遅れの)」という言葉と、削除されたファイル群、特にgooglecode_upload.pyの存在から、この変更の背景には以下の要因が考えられます。

  1. Google Codeの役割の変化または廃止: 当時、Google Codeは多くのオープンソースプロジェクトにとって重要なホスティングプラットフォームであり、Goプロジェクトもその一部機能を利用していた可能性があります。しかし、Google Codeは後に廃止され、多くのプロジェクトがGitHubなどの他のプラットフォームへ移行しました。このコミットは、GoプロジェクトがGoogle Codeに依存するビルド・リリースプロセスから脱却し始めた初期の兆候である可能性があります。
  2. Goのビルド・リリースプロセスの成熟: Go言語自体の開発が進むにつれて、そのビルド、テスト、およびパッケージ配布のインフラストラクチャもより洗練され、内部的に統合されたシステムへと移行していったと考えられます。これにより、外部パッケージのビルドやGoogle Codeへのアップロードといった特定の機能が、より汎用的な新しいシステムに置き換えられたか、あるいはその必要がなくなった可能性があります。
  3. コードベースの整理と保守性の向上: 不要になったコードを削除することは、コードベースをクリーンに保ち、将来的な保守を容易にする上で非常に重要です。特に、外部サービスへの依存関係を持つコードは、そのサービスが変更または廃止された場合に問題を引き起こす可能性があるため、早期に整理される傾向にあります。

これらの要因が複合的に作用し、Goプロジェクトのダッシュボードシステムから、Google Codeへの依存を含むパッケージビルダ関連のコードが「obsolete」と判断され、削除されるに至ったと推測されます。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の概念について知っておくと役立ちます。

  • Go Dashboard (Goダッシュボード): Goプロジェクトでは、継続的インテグレーション(CI)とテスト結果を可視化するためのダッシュボードシステムを運用していました。これは、様々なプラットフォームやアーキテクチャでのGoのビルドとテストの健全性を監視するために使用されます。このコミットで削除されたコードは、このダッシュボードシステムの一部として、パッケージのビルドと結果の報告を担当していました。
  • パッケージビルダ (Package Builder): Go言語の初期には、Go本体だけでなく、外部のGoパッケージ(ライブラリやツール)も自動的にビルドし、その健全性を確認するシステムが存在したと考えられます。これは、Goエコシステム全体の安定性を確保するために重要でした。
  • Google Code: Googleが提供していたオープンソースプロジェクトホスティングサービスです。バージョン管理(Subversion、Git、Mercurial)、イシュートラッカー、Wiki、ダウンロードセクションなどを提供していました。Goプロジェクトも初期にはGoogle Codeを積極的に利用しており、特にバイナリリリースやパッケージの配布に利用されていた可能性があります。googlecode_upload.pyというファイル名から、GoのビルドシステムがGoogle Codeのダウンロードセクションに成果物をアップロードするためにこのスクリプトを使用していたことが示唆されます。
  • 継続的インテグレーション (CI): ソフトウェア開発の手法の一つで、開発者がコードの変更を頻繁にメインブランチにマージし、自動化されたビルドとテストを実行することで、早期に問題を検出します。GoダッシュボードはCIシステムの一部として機能していました。
  • Mercurial (Hg): Gitと同様の分散型バージョン管理システムです。Goプロジェクトは初期にはMercurialを使用していましたが、後にGitに移行しました。このコミットのコードスニペットにはhg pullhg tagsといったMercurialコマンドの記述が見られるため、当時のGoプロジェクトがMercurialをバージョン管理に利用していたことがわかります。

技術的詳細

削除されたコードは、主にGo言語で書かれたダッシュボードのビルダ部分と、Pythonで書かれたGoogle Codeへのアップロードスクリプトから構成されています。

  1. misc/dashboard/builder/http.go:

    • packages()関数とupdatePackage()関数が削除されています。これらはダッシュボードからパッケージリストを取得したり、パッケージのビルド結果をダッシュボードに送信したりするためのスタブ(コメントアウトされたコード)でした。コメントには「TODO(adg): un-stub this once the new package builder design is done」とあり、新しいパッケージビルダの設計が完了したらこれらのスタブを解除する予定だったことが示唆されます。しかし、最終的にはこれらの機能自体が不要になったか、別の方法で実装されることになったため、削除されました。
    • recordResult関数は残っていますが、packagesupdatePackageといったパッケージビルダ関連の呼び出しが削除されています。
  2. misc/dashboard/builder/main.go:

    • Builder構造体からcodeUsernamecodePasswordフィールドが削除されています。これらはGoogle Codeへの認証情報として使用されていたものです。
    • externalフラグとそれに関連する外部パッケージビルドモードのロジックが削除されています。これには、buildExternal()関数とその呼び出し、pkgBuildIntervalなどの関連する変数や定数が含まれます。
    • firstTag()関数とrevisionRe正規表現が削除されています。これらはMercurialリポジトリからリリースタグやリビジョン情報を取得するために使用されていました。
    • buildHash()関数内のGoogle Codeへのリリースバイナリのアップロードロジックが削除されています。これには、codePyScriptgooglecode_upload.pyを指す)の呼び出しや、tarコマンドでアーカイブを作成する部分が含まれます。
  3. misc/dashboard/builder/package.go:

    • このファイル全体が削除されています。このファイルには、外部パッケージのビルド、ログの記録、Goパッケージのコメント(ドキュメント)の抽出、そしてダッシュボードへの結果の報告に関するロジックが含まれていました。goinstallコマンド(Go 1.0以前に存在したパッケージインストールツール)の利用や、go/docgo/parserといったGoの標準ライブラリを使ったドキュメント解析のコードが含まれていました。
  4. misc/dashboard/googlecode_upload.py:

    • このPythonスクリプト全体が削除されています。これは、Google Codeプロジェクトにファイルをアップロードするための汎用的なスクリプトであり、GoのビルドシステムがリリースバイナリをGoogle Codeのダウンロードセクションに公開するために利用していました。HTTP POSTリクエストをmultipart/form-data形式で構築し、HTTP Basic認証を用いてGoogle CodeのAPIと通信する機能を持っていました。

これらの削除は、GoプロジェクトがGoogle Codeへの依存を完全に排除し、外部パッケージのビルドと配布に関するアプローチを変更したことを明確に示しています。特に、package.goの削除は、Goのパッケージ管理とビルドの仕組みが、このコミット以前の外部パッケージビルダの概念から大きく変化したことを示唆しています。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットは、主に以下の4つのファイルから大量のコードを削除しています。

  • misc/dashboard/builder/http.go: 35行削除
  • misc/dashboard/builder/main.go: 121行削除、2行追加
  • misc/dashboard/builder/package.go: ファイル全体が削除 (121行削除)
  • misc/dashboard/googlecode_upload.py: ファイル全体が削除 (248行削除)

合計で523行が削除され、2行が追加されています。追加された2行はmain.goにおけるインポートの変更(bytesの追加とerrorsの削除)と、NewBuilder関数内のキーの読み込みロジックの修正です。

コアとなるコードの解説

このコミットの「コアとなるコードの変更」は、実質的に「コアとなるコードの削除」です。削除されたコードは、Goプロジェクトの自動ビルドおよびリリースプロセスにおいて、以下の重要な役割を担っていました。

  1. 外部パッケージの継続的ビルドとテスト: misc/dashboard/builder/package.gomisc/dashboard/builder/main.goの一部は、Go本体だけでなく、外部のGoパッケージも定期的に取得し、ビルドし、テストする機能を提供していました。これは、Goエコシステム全体の健全性を監視し、Go本体の変更が既存のパッケージに与える影響を早期に検出するために重要でした。goinstallコマンドの使用や、パッケージのドキュメントコメントを抽出するロジックが含まれており、これはGoのパッケージエコシステムがまだ初期段階にあった頃の、自動化された品質保証メカニズムの一部でした。

  2. Google Codeへのリリースバイナリのアップロード: misc/dashboard/builder/main.goの一部と、完全に削除されたmisc/dashboard/googlecode_upload.pyは、Goの公式リリースバイナリをGoogle Codeのダウンロードセクションに自動的にアップロードする役割を担っていました。これは、Goの新しいバージョンがリリースされるたびに、ユーザーが簡単にバイナリを取得できるようにするための重要なステップでした。googlecode_upload.pyは、Pythonのhttplibモジュールを使用してHTTP POSTリクエストを生成し、Google CodeのファイルアップロードAPIと連携していました。

これらのコードの削除は、Goプロジェクトがこれらの機能を別の方法で実現するようになったか、あるいはこれらの機能自体がもはや必要なくなったことを意味します。特にGoogle Codeへのアップロード機能の削除は、GoのリリースプロセスがGoogle Codeから独立したことを明確に示しています。外部パッケージビルダの削除は、Go Modulesのようなより現代的なパッケージ管理システムへの移行や、Go本体のCI/CDパイプラインがより包括的になり、個別のパッケージビルドシステムが不要になったことを示唆している可能性があります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • コミット情報: /home/orange/Project/comemo/commit_data/12514.txt
  • GitHub上のコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/8a146e707cc54a8e71758521085c6a2853ff8081
  • Go言語の歴史と開発プロセスに関する一般的な知識。
  • Google Codeの機能と歴史に関する一般的な知識。
  • Pythonのhttplibモジュールとmultipart/form-dataに関する一般的なウェブ開発の知識。
  • Go言語のgo/docおよびgo/parserパッケージに関する一般的な知識。
  • Mercurialバージョン管理システムに関する一般的な知識。