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[インデックス 13489] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ encoding/binary パッケージ内の varint.go ファイルに対する変更です。具体的には、ReadVarint 関数のコメントにおける誤字(typo)を修正し、関数の実際の戻り値の型とコメントの記述を一致させています。

コミット

commit 614cb3b8dd0d6c1f0ddd631db6adb793df24655d
Author: Patrick Mylund Nielsen <patrick@patrickmn.com>
Date:   Sun Jul 22 10:26:32 2012 +1000

    encoding/binary: fix typo: ReadVarint returns an int64, not a uint64.
    
    R=golang-dev, dsymonds
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6432062

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/614cb3b8dd0d6c1f0ddd631db6adb793df24655d

元コミット内容

encoding/binary: fix typo: ReadVarint returns an int64, not a uint64.

このコミットメッセージは、encoding/binary パッケージにおいて、ReadVarint 関数が uint64 ではなく int64 を返すという事実に関するドキュメントの誤字を修正したことを示しています。

変更の背景

この変更の背景は非常にシンプルで、encoding/binary パッケージの ReadVarint 関数のドキュメンテーションコメントに誤りがあったためです。コメントでは関数が uint64 を返すと記述されていましたが、実際の関数のシグネチャと実装は int64 を返していました。このようなドキュメンテーションの不一致は、ライブラリを使用する開発者に混乱を招く可能性があるため、修正が必要とされました。コードの動作自体には影響はなく、純粋にドキュメンテーションの正確性を向上させるための修正です。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGo言語の概念とencoding/binaryパッケージに関する知識が必要です。

  1. encoding/binary パッケージ: Go言語の標準ライブラリの一部で、バイナリデータとGoのデータ構造(整数、浮動小数点数など)の間で変換を行うための機能を提供します。ネットワーク通信やファイルI/Oなどで、構造化されたバイナリデータを扱う際に頻繁に利用されます。エンディアン(バイト順序)の指定も可能です。

  2. Varint (Variable-length integer): Varintは、整数を可変長のバイト列でエンコードする方式です。小さな数値は少ないバイト数で、大きな数値はより多くのバイト数で表現されるため、平均的に効率的なストレージや転送が可能です。GoogleのProtocol Buffersなどで広く採用されています。

    • Uvarint (Unsigned Varint): 符号なし整数(非負の整数)をエンコードします。
    • Varint (Signed Varint): 符号付き整数(正負の整数)をエンコードします。符号付き整数をVarintでエンコードする際には、通常、ZigZagエンコーディングと呼ばれる手法が用いられます。これは、小さな絶対値を持つ負の数を小さな符号なし数にマッピングすることで、Uvarintと同じエンコーディングロジックを適用できるようにするものです。
  3. io.ByteReader インターフェース: io パッケージで定義されているインターフェースで、単一のバイトを読み取るための ReadByte() (byte, error) メソッドを持ちます。encoding/binary パッケージのリーダー関数は、このインターフェースを満たす任意の型(例: bytes.Buffer, bufio.Reader, os.Fileなど)からバイトを読み取ることができます。

  4. uint64int64: Go言語における整数型です。

    • uint64: 64ビットの符号なし整数型で、0から約1.8e19までの非負の整数を表現します。
    • int64: 64ビットの符号付き整数型で、約-9e18から約9e18までの正負の整数を表現します。
  5. ZigZagエンコーディング: 符号付き整数をVarintで効率的にエンコードするための手法です。小さな絶対値を持つ負の数を小さな符号なし数にマッピングすることで、Uvarintと同じエンコーディングロジックを適用できるようにします。

    • 0 -> 0
    • -1 -> 1
    • 1 -> 2
    • -2 -> 3
    • 2 -> 4 このように、正の数と負の数を交互に配置し、絶対値が小さいほど小さな符号なし数に変換されます。デコード時にはこの逆変換を行います。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/encoding/binary/varint.go ファイル内の ReadVarint 関数のドキュメンテーションコメントの修正に焦点を当てています。

ReadVarint 関数は、io.ByteReader から可変長エンコードされた符号付き整数を読み取り、それを int64 型として返します。この関数は内部的に ReadUvarint を呼び出して符号なしの可変長整数を読み取り、その後、ZigZagデコーディングロジックを適用して符号付きの int64 に変換しています。

変更前のコメントは以下のようになっていました。 // ReadVarint reads an encoded unsigned integer from r and returns it as a uint64. このコメントには2つの誤りがありました。

  1. "encoded unsigned integer" (エンコードされた符号なし整数) と記述されていますが、ReadVarint は符号付き整数をデコードするためのものです。
  2. "returns it as a uint64" (uint64として返す) と記述されていますが、実際の戻り値の型は int64 です。

このコミットは、これらの誤りを修正し、コメントを関数の実際の振る舞いに合わせています。 // ReadVarint reads an encoded unsigned integer from r and returns it as an int64. 修正後のコメントは以下のようになります。 // ReadVarint reads an encoded unsigned integer from r and returns it as an int64. まだ "encoded unsigned integer" となっていますが、これはZigZagエンコーディングによって符号付き整数が符号なし整数として表現されているため、技術的には間違いではありません。しかし、より正確には「ZigZagエンコードされた符号付き整数」と記述されるべきかもしれません。このコミットの主な目的は、戻り値の型が int64 であることを明確にすることでした。

ReadVarint の内部ロジックは以下のようになっています。

  1. ux, err := ReadUvarint(r): まず、ReadUvarint を呼び出して、ZigZagエンコードされた符号なし整数 ux を読み取ります。
  2. x := int64(ux >> 1): ux を1ビット右シフトすることで、ZigZagデコーディングの最初のステップを実行します。これにより、元の数値の絶対値が得られます。
  3. if ux&1 != 0: ux の最下位ビットが1であるかどうかをチェックします。これは、元の数値が負であったかどうかを示します。
  4. x = ^x: もし最下位ビットが1であれば(元の数値が負であれば)、x をビット反転(補数)します。これにより、正しい負の値が得られます。

このコミットは、このロジック自体には一切変更を加えておらず、単にドキュメンテーションの正確性を高めるためのものです。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/encoding/binary/varint.go
+++ b/src/pkg/encoding/binary/varint.go
@@ -123,7 +123,7 @@ func ReadUvarint(r io.ByteReader) (uint64, error) {
 	panic("unreachable")
 }
 
-// ReadVarint reads an encoded unsigned integer from r and returns it as a uint64.
+// ReadVarint reads an encoded unsigned integer from r and returns it as an int64.
 func ReadVarint(r io.ByteReader) (int64, error) {
 	ux, err := ReadUvarint(r) // ok to continue in presence of error
 	x := int64(ux >> 1)

コアとなるコードの解説

変更されたのは、ReadVarint 関数の直前にあるコメント行のみです。

  • 変更前: // ReadVarint reads an encoded unsigned integer from r and returns it as a uint64. この行は、ReadVarint 関数が符号なし整数を読み込み、uint64 として返すと誤って記述していました。

  • 変更後: // ReadVarint reads an encoded unsigned integer from r and returns it as an int64. この行は、ReadVarint 関数が int64 を返すという事実を正確に反映するように修正されました。これにより、関数のシグネチャ func ReadVarint(r io.ByteReader) (int64, error) とドキュメンテーションが一致し、開発者がこの関数を正しく理解できるようになりました。

コードの動作自体には影響はなく、純粋にドキュメンテーションの修正です。

関連リンク

参考にした情報源リンク